−迷える羊−






平穏な初春の昼下がり、真選組の屯所内には激動が走った。
政権を覆す程の脅威たる大物浪士、高杉晋助がお縄となったからだ。

拷問が行われる屯所の離れの一角。
麻縄に両手を縛り上げられ、梁から爪先がつくかつかないかの所で
縛られた高杉を、土方やその他数名の隊士が囲んだ。

「まさか、テメーのような大物が捕まるとはな。高杉」

土方が鋭い瞳で高杉を射抜く。顔には鬼の形相が浮かべられていた。
身体の自由を奪われた状態でこの眼差しに見詰められると、
どんなに屈強な浪士ですら怯えてしまう。浪士だけでなく、
同席して居る隊士ですらビビってしまうほどの苛烈な視線だった。
だが、高杉は涼しげな顔で不敵に笑んでいる。

「アンタが鬼の副長か。噂に違わないいいツラ構えじゃねえか」
「あぁん?馬鹿にしてんのかテメー!
 囚われの身で笑顔でオレの見聞とはいい度胸じゃねぇか」
「そう怒るなよ。くくっ」

妖艶な笑みを浮かべて、高杉は土方を見た。
色っぽいその姿に、隊士たちは思わず目を奪われる。

「なあ、オレ、高杉晋助ってもっと大柄でイカツイ男想像してたけどよ、
 こんな華奢な別嬪とはな。なんつーか、意外だよなぁ」
「あ、俺もそう思った」

ヒソヒソ隊士たちが高杉の容姿について話し合っているのが聞こえて、
土方はギロリと隊士を睨み付ける。
隊士は肩を震わせて、慌てて口を噤んだ。
部下達を戒めると、土方はまた高杉に向かい合った。
高杉は鋭い土方の視線を浴びながら、相変わらず口許に笑みを浮かべていた。


ことは一時間程前に遡る。

高杉の軍勢は幕府に大きく根付いた天人と交戦をしていた。
相手は二メートル越えの大柄部族で、中々に苦戦を強いられていた。
時を同じくして、真選組の追跡から逃げていた桂がその現場に現れた。

偶然にもこんな嫌なタイミングで出くわすとはと、高杉は内心舌打ちをする。
桂も苦々しい表情を浮かべて高杉を見た。
暫く考えた後、桂は刀を構えた。そして、高杉一派と戦っていた天人に斬りかかる。

「勘違いするなよ、高杉。俺は一刻も早く此処を通り抜けたいんだ。それだけだ」
などと言い訳をしながらも、桂は殺されそうになっていた高杉の部下を助けてくれた。
高杉は「酔狂だねぇ。回り道しろや」とクツクツ笑いながらも、
一時の共闘だと自分に言い聞かせて、桂と背中を合わせた。

全ての敵が動かなくなる頃には、二人は体力気力ともにボロボロだった。
真選組にやられてすでに手負いだった桂は更に傷を負い、
高杉は軽傷で済んでいたが、右腕と足首にそれなりに深い傷を負っていた。
高杉の部下の中には、肩を借りねば動けない者も多くいた。
武市、万斉、また子などの主要な戦力となる部下は一人もいない。
無理もない事だった。
刀を収め、二人はようやく息を吐く。
だが休息も束の間の事、黒い制服の集団が駈けつけた。

「真選組だ、てめぇら、大人しくお縄につけっ!」

近藤、土方、沖田を筆頭とし、山崎や原田なども揃い踏みだ。
ズラリとゴキブリを思わせる黒づくめの集団が押し迫って来る。

「ざまぁねえな。ヅラ」
「貴様こそ、足の傷はけっこう深いのだろう?」
「はっ、どうってことねぇよ。てめぇに比べればな」
「フン。俺とてどうという事は無い。貴様、今日は腕利きの部下はいないのか?
 破廉恥な格好をした女と、あのサングラスの男と、ロリコンはどうした?」
「……来島に万斉、武市のことか?さあな。どうしたんだろうな」

桂の質問には答えず、高杉は肩で笑った。
それから、桂の前に立っていった。

「ここは俺が一人で食いとめる。行け、ヅラ」
「なっ、にを……高杉っ!?」
「てめぇに貸しは作りたくねぇんでな。ここで返させてもらうぜ」
「馬鹿な、一人で捕まる気か?」
「……くくっ、さぁな」

そう言って笑った高杉の顔に狂気は滲んでいなかった。
昔の面影の高杉に、桂は何も言えなくなった。
「すまん」と告げると、桂は高杉の仲間を先導して逃げ出した。
一人残った高杉は奮闘したが、最後にはとうとう囲まれて、今に至る。


「覚悟してろよ、高杉。オレの拷問は厳しいぜ」
「そりゃあ、おっかねぇな。ま、お手柔らかに頼むぜ」

どこまでも人を食った態度で高杉が笑った。
土方も土方の部下も、高杉の余裕さに苛立ちを募らせる。

「さて、聞きたい事は山ほどあるがまずはこれだ。
 高杉、テメーの仲間は何処に居る?吐かねえと、痛い目に遭うぜ」
「チンピラの台詞だな。くくっ、いいぜ。俺をその気にさせてみろよ」
「よし、やれ!」

土方が命じると、部下のごつい男が高杉に近付く。
派手な蝶柄の着物の襟に手を掛けると、乱暴に左右に開いて
高杉の上半身を露出させた。

「へへっ、白ぇな。それに細ぇ腰。折れそうだぜ」

舌舐めずりをしながら、男は高杉の身体を見詰める。
土方も色っぽいその身体に密かに生唾を飲んだ。
美しい緑の瞳。艶やかな唇。女の様な美しい顔立ち。
本当に凶悪なテロリストとは思えない。

「じゃあまず手始めに、オラッ」

土方の部下は手に持った細い鞭で高杉の華奢な背中を撃った。
白い肌にうっすらと赤い筋が浮かび上がる。
だが、高杉は呻き声一つ上げず相変わらずニヤリと不気味に嗤っている。
男はムキになって二発、三発と鞭を振う。
乾いた音が部屋に響くが、やはり高杉は声を上げなかった。

「な、なんだよ、コイツ、化け物かよ―…」
「貸せ、オレがやる」

土方は太い鞭を取り出すと、容赦なく高杉の背中を打ちつけた。
びくりと一瞬だけ背中が撓るが、やはり高杉は声を上げなかった。

「オレに打たれて声を上げなかったのはテメーが初めてだぜ、高杉」

土方は少し顔を顰めながらまた鞭を振った。
身体を打つ痛々しい音が響き、皮膚が裂けて血が飛び散った。
パタリ、パタリと白い肌を真紅の液体が流れ落ちて床を濡らす。
傷の上を重ねて打つと、少しだけ高杉は吐息のような声を上げた。
続けてもう一度、土方は傷の上にムチを当てる。

「言えよ、テメーのアジトを。そうしたら、楽になるぜ」
「くくくっ、俺ぁてめぇらのいいなりには、ならねぇさ」
「痛ぇだろ?やめてくれって言いやがれ!」
「ふっ、痛いのはてめぇだろ?鬼の副長を名乗っていても、
 どうやら心根は優しい性格らしいな。苦しいって顔に書いてあるぜ」
「なっ……!?」

土方は心を読まれた様で一瞬ギクリとした。
高杉は敵だし、思想も何もない、ただ破壊を愉しむ獣だと思っていた。
だが、本人に初めて接っしてみて、そうでない事に気付いた。
高杉は、仲間や桂を逃がす為に自ら囮となった。
根は腐っていないのかもしれない。そんなふうに思った。
それに、高杉の目は不思議と濁ってはいない。
どこか真っ直ぐな光を湛え、悲しげな揺らぎを覗かせている。
その瞳に、魅かれている自分がいた。
だが、これは仕事だ。高杉に甘さをみせるわけにはいかない。

土方はぐっと奥歯を噛みしめて、平静を保った。
鞭を捨てると、爪を剥ぐための先端が尖った鉄を持って来させた。
梁から吊るしていたロープを解き、高杉を天井から地面に乱暴に落とす。
地面にうつ伏せに崩れた高杉を部下の男が蹴って仰向けにした。
鳩尾に硬い靴の爪先がぶつかり、高杉は苦しげに咽る。
だが、すぐにまた妖艶な笑みを浮かべた。

「そう余裕なツラしてられんのも今の内だぜ、高杉さんよぉ」

部下の男は野蛮な表情を浮かべると、縛られた高杉の手を取った。
爪と肉の間に、尖った鉄の先端をぐっと差し込む。

「へへへっ、綺麗な爪してんな。女みてぇだ。ちっと勿体ねえけどな」

ニヤニヤしながら、男は高杉の爪の間に入れた鉄を梃子の要領で動かした。
メキリと嫌な音がして、爪が指から剥がれて浮かぶ。
それを一気に男はペンチで引き抜いた。

「ぅっ」

常人ならば絶叫する残酷な拷問だったが、高杉は呻いただけだった。
「仲間の居場所を吐け」と命じるが、やはり高杉は口を閉ざしていた。
次いで二枚、三枚と左手の爪を剥ぐが、一向に喋る気配は無い。

口を割る気配がないまま、時間が流れた。
殴る、蹴るなども暴行をしても、水に漬けて窒息させても高杉は何も言わない。
拷問する方が疲れを見せて、土方以外のメンバーは総員入れ換わったほどだ。



肉体に与えられる痛みをやりすごしながら、高杉は別の事を考えていた。

高杉が囮として真選組に捕まったのには二つの理由があった。
一つは、自分がこうして幕府の犬に捕まる事で、
別動隊として暗躍している万斉やまた子が動きやすくなるという理由。
そしてもう一つは、桂や部下を逃がす為だ。
それに少し、賭けがしたかった。

逃げ切った桂は恐らく、銀時の所に行っただろうと、高杉は踏んでいた。
自分が捕まったと知った銀時は、自分を助けに来るだろうか。
まだ自分を少しは想っていてくれて助けにやってくるか、
それとも危険を犯してまで助けに来る気はないのか試したかった。
女々しく馬鹿ばかしい賭け事だったが、自分の身を以てして賭けるならば、
このくらい阿呆な賭けが妥当だと思う。

痛みも、苦しみももうとっくの昔に味わいつくした。
師である吉田松陽を目の前で失ってから、友も仲間も持っている全てを
失ったあの時から、苦痛という感情は自分の中から薄れてしまった。

数時間にわたるに苦痛を味わう拷問を耐える頃には、相手が疲弊して居た。
一人、雄々しい顔で変わらずにいたのは土方だけ。

男前な顔立ち。きびきびした所作。
あの男とは正反対の筈なのに、真っ直ぐな藍色の瞳が彼を思い出させる。
銀時、と高杉は口の中で呟いた。

「休憩だ」と土方が仲間に言った。
高杉は再び梁から手だけで吊るされた状態にされ、彼と二人きりになる。
少年時代のようには軽くない体重が手首全てに圧し掛かり、
擦れた手首がひりひりとしていた。
だが、手首なんかよりも全身が痛みに浸蝕されて熱を持っている。
土方と二人だけなことに気が緩んだのか、高杉は苦しげな吐息を零した。

「流石のテメーでも、それだけ痛めつけられるとこたえるか?高杉」
「ククッ、俺ぁどっかのバケモンと違って痛覚はあるんでね」
「だったらとっと喋っちまえよ。テメーみたいな極悪人が
仲間が大事とか、言うんじゃねえよ。身体はって仲間なんて守るんじゃねえ」
「安心しろ。俺が凶悪のろくでなしってのは間違っちゃねぇよ。
 それを痛めつけて、嬲ってぶっ殺したところで、てめぇの手は汚れたりしねえよ」
「……そうかよ」

土方はチッと舌打ちをすると腰を上げて部屋を出た。
一人残された高杉は休憩にでも行ったのだろうかと思っていると、
土方はすぐに戻ってきた。その手には救急箱が握られている。
何をする気だろうか。とぼんやりした瞳で眺めていると、
消毒薬で湿らせた布を傷口にそっと宛てがってきた。

「ッツ……!」

ひやりとした薬が傷口に触れて高杉は思わずピクリと身体を跳ねさせた。
驚いた土方が慌てて布を傷から退ける。

「わ、悪ぃ。傷口に沁みたか?」
「……いや」
「そ、そうか……」

ホッとしたような顔で土方は手当を再開する。
他の隊士の手前包帯など一目見て解るような手当ては施さなかったが、
裂けた背中を消毒し、腹や足や腕に出来た打僕を冷やしてくれた。
相変わらず仏頂面をしていたが、手付きは酷く優しい。
不意に銀時の武骨な手を思い出して、高杉はふっと笑う。
それを嘲笑と勘違いしたのか、からかいと思ったのか土方は顔を赤くした。

「ち、違うからな!こ、これはただ、テメーを死なせねー為の処置だ。
 手当てなんかじゃねーからな!死なれちゃ、拷問になんねーんだよ!」

慌てて取り繕う所なんかが銀時と似ている。
天の邪鬼な性格、意地っ張りな態度。クスクスと高杉は笑った。

「てめぇ、アイツに似てんな……」
「アイツ?誰だよ?」
「いや、なんでもねぇ。忘れろ」


一人で笑う高杉に土方は首を捻る。
誰に似ているというのか、見当もつかなかった。
高杉の交友関係も仲間も殆ど知らないのだから、無理もない。

「なあ、高杉。言っちまえよ。仲間の居場所を。楽になれる」

高杉の脱げかけた着物を着付け直しながら、土方は呟いた。
優しい手がそっと高杉の頬に触れた時、いきなり拷問部屋のドアが乱暴に開いた。
入ってきたのは薄い琥珀色の髪に緑の瞳、眼鏡を掛けた伊藤鴨太郎だ。
部下数名を引き連れている。
嫌な奴が来たものだと眉を顰めたのは土方だけでなく、高杉も同様だった。

「土方君、何を生温い事をしているんだい」

嫌味に嗤うと鴨太郎はずいっと高杉に近寄っていった。
部下の男もロープを手に高杉に近付いてくる。
高杉の鳩尾に硬い拳を男が叩き込んだ。
気絶しかけたところを床に落とされ、高杉は着物を剥ぎ取られて褌だけにされる。
後ろ手に廻させられて、上半身に縄を掛けられていく。
胸を強調するように縛り付けられて、さっきまでと同じように
足が付くギリギリの位置で吊るされた。
だが、さっきまでと違って右の太腿にもロープを巻かれて、
片足だけ上げた不格好な状態を取らされる。

「ふふん、良い格好だよ高杉君」

厭味ったらしく笑う鴨太郎を高杉はギロリと睨みつけた。
その頬を軽く張ると、鴨太郎は高杉の褌をするりと解いた。
下半身まで丸出しの状態にされると高杉は羞恥心を覚えた。
だがそれを顔に出すことなく、余裕の表情のまま鴨太郎を見る。
逆に土方が焦った顔をして伊藤に詰め寄った。

「おい、伊藤!何のつもりだ」
「僕も拷問に参加するんだよ、土方君。君のやり方じゃ彼は口を割らない。
 暴力や痛みに屈しそうにないからね、ここからは僕がやろう。君は見ていたまえ」

鴨太郎は高杉の顎を掴んで無理やり口を開けさせると、
小瓶に入った怪しげな薄ピンクの液体を口の中に流し込んだ。
嫌な予感がして、高杉は必死にそれを飲み込むまいとしたが、
口と鼻を掌で塞がれて、顎をくいっと上に向けられると息苦しさと
慣性の法則に従って液体は喉を流れて胃に落ちた。
その直後に、全身に火が付いた様に身体が熱くなる。

「ック、ァッ!?」
「流石は即効性だ。もう効いた様だねその媚薬。高かったんだよ」
「び、やく……だと?」
「ああ。高杉君は痛みじゃ喋ってくれないからね。凌辱させてもらうよ」

鴨太郎の手がするりと縄が巻き付いた胸の突起を撫でる。
それだけの事で腰がゾクゾクして、高杉はびくりと腰を跳ねさせた。
唇からは色っぽい吐息が零れる。
その表情や、露わになった美しい身体にドキリとして、土方が顔を赤らめた。

「ちょっと待て、伊藤!」
「邪魔をしないでくれたまえ、土方君。彼に情けなど不要だ」
「だ、だがっ!」
「邪魔をする気なら出て行きたまえ。嫌なら大人しく見ているんだね」

冷たくそう言い放つと、伊藤は部下の男と共に高杉を囲んだ。
男の手がおもむろに高杉の雄へ伸びる。
薬で既に少し勃ち気味のそれを乱暴に握ると、勢いよく扱いた。

「くはぁっ、……んぐぅ っぁ」

声などあげて堪るかと、高杉は必死に歯を喰いしばった。
唇を噛んで血が滲んでも、けっして口を開こうとしない。
だが、下半身は薬の影響もあって従順に与えられる快楽を受けて蜜を垂らした。

「淫乱そうな尻してんじゃねえか、鬼兵隊のトップも、尻振ってとったのか?」
「なんとか言ってみろよ、高杉」
「ふぐ……くっ」
「我慢してねえでもっと乱れてみろよ」

男が掌で高杉の亀頭をグリグリと刺激した。
強い快感に、高杉は喉を反らしてビクビクと震える。

「ううぅぅっ、 ぐっ ぁっ」

性器がブルリと震えて、勢いよく白濁液を吹き上げた。
床を汚したそれを指先で拭いとると、鴨太郎は無理やり高杉の口に
精液で汚れた指を二本突っ込んで舌をぐにぐにと揉むように刺激した。

「ふぅぅっ、 おえっ ぐふっ」

精液の苦みと喉の奥に容赦なく突っ込まれた指にえづく高杉を
鴨太郎は嘲笑する様な瞳で見下だす。
射精でぐったりした高杉の尻の中に、男が容赦なく指を突きいれた。
濡らさずに突っ込まれた指の痛みに、高杉の眉根がよる。
だが、痛みと違和感だけだった指は薬の所為かすぐに快楽を孕み、
内壁を擦られる度に高杉はビクビクと反応した。
声を必死に噛み殺す高杉を喘がそうと、躍起になって男はナカを責めた。
その指が固いしこりを掠めると、不意に高杉の唇から「あっ」と喘ぎが漏れた。

「ココがイイのか?女みたいな喘ぎがでたぞ、オラッ」
「あぁっ、 ぐぅ やめ、ろっ!」
「前からトロトロ蜜垂れ流してんぞ、ここがいいんだろ!素直に言ってみろよ!」
「あひっ、 ぃあぁっ」

グリグリと前立腺を指で弄られると、下半身がキュンとなった。
抗いきれない快楽にまた射精感が込み上げ、高杉は精液を巻き散らかす。
それを見て、男達は下品な笑い声を上げて、
「前だけでイク、くそビッチが!」や「ケツマンコ野郎」など口汚く罵った。
羞恥心で死にたくなったが、薬の所為だと高杉は必死に堪えた。
悔しそうな顔をしては、相手を喜ばす一方だからだ。
凛とした表情でギロリと相手を睨むと、男は喉を引き攣らせて少し怯えた。

「ほう、まだそんな顔ができるんだね。虐められ足りないかい?高杉君」

笑いながら鴨太郎は玩具を持って来た。
ローターやバイブやら怪しげな物の数々に、高杉は思わず眉間に皺を寄せる。
鴨太郎はその内の一つを土方に寄越すと、嫌な笑みを浮かべた。

「ほら、土方君もぼーっとしてないで参加したらどうだい?」
「なっ……」
「高杉晋助が美貌だったんで惚れて出来ないのかい?
 ふふ、鬼の副長が敵のボスに惚れるなど、お笑い草だよ」
「ふざけんじゃねえ、誰が惚れたって?」

土方はギロリと鴨太郎を睨み付けると、アナルパールを手にとった。
ローションでそれを濡らすと、高杉の尻穴にずるりとそれを入れ込む。
数珠繋ぎになった玉が内壁を押し広げながら
体内に入ってくる感覚に高杉はぶるりと震えた。

「はっ……ぁぅっ」

ビクンと白い尻が震えた。土方はその姿に理性を失う。
奥までアナルパールを入れ込むと、一気にそれを引き抜いた。

「あぁぁっ、 うあっ ひぃっ、でるっ!」

勢いよく内壁を擦りながら玉が脾肉を外へ引っ張りだす勢いで出ていき、
高杉は堪らず涎を枝垂らせて声を上げた。
痙攣してよがる高杉に、土方はゆっくりでなく勢いよくパールを入れた。
前立腺と腸壁が擦り上げられて、高杉は内腿を震わせながらイきかけた。
だが、伊藤が性器の根元を握り込み、それを阻害する。

「ひぐっ ぐぁっ いあ」
「フフ、簡単にはイかせないよ。しばらくお預けだ」

伊藤は悪魔の様な笑みを浮かべると、高杉の尿道にプラグを突き刺した。
痛みと妙な快感に高杉はヒクリと喉を震わせる。
射精を阻止され、ガクガクと全身が震えた。

「痛っ、やめろっ、 抜けっ!」
「初めて弱音を口にしたね、高杉君。もっと責めたまえ、土方君」
「ああ、解ってるよ。オラ、吐いちまえよ高杉!
 じゃねえとイかせてやらねえぞ。壊れるまで責めるぜ」
「いあぁぁっ、 やめぇっ あひぃっ」

容赦なくパールを抜き差しされて、高杉は頭が真っ白になるのを感じた。
激しい射精感に襲われても、イクことは許されない。
気が狂いそうなほどの責め苦に、瞳に生理的な涙が滲んだ。
生理的とは言え、泣き顔など見られたくないと必死に高杉は涙を堪える。
だが、アナルをパールで責められ、性器にはローターを宛てられて
無茶苦茶な快楽を与えられると、涙が零れた。
口はだらしなく開き、嬌声が零れてしまう。

「アンアン啼いてよがってねーでとっとと吐けよ、高杉!」

優しかった土方が一変し、乱暴に高杉を怒鳴る。
アナルパールを一気に引き抜くと、つぎは太いシリコンのバイブを取り出した。

「今度はこれをぶっこんでやるよ」

土方が高杉の目の前にイボイボがついたパープルのバイブを晒す。
薄気味悪い色のバイブはスイッチを入れると激しく振動してうねった。
人間では不可能なその動きに高杉はぞわりと鳥肌をたたせる。
スイッチを切ると、土方は高杉の尻の穴にバイブの先端を押し上げた。
柔らかいシリコンが肛門を刺激し、高杉は震える。

「や、めろ……っ」
「なら、お前らのアジトを教えてくれよ」

不意に優しい声になった土方を高杉は伺うように振り返る。
少し眉根を寄せた苦々しい表情と、興奮が入り混じった複雑な顔をしていた。
鼻を鳴らすと、高杉は「とっととやれよ、ブタ野郎共」と強気な声を出す。
高杉の言葉に土方はカッと逆上したような顔をして、
ぐっと奥までバイブを突っ込んだ。
既に濡れそぼった高杉のナカは、容易にバイブを飲み込んだ。

「スイッチ、入れるからな」

態と宣言すると、土方は無情にもカチリとスイッチをオンにした。
強弱が五段階あって中間の3のメモリで電源が入ったにも関わらず、
激しい震動に加えてウネリながらバイブが襲いかかって来る。

「っ! あぁぁっ、くぅ ひぅぅっ!」
「まだ3でそのザマか、高杉。5にしたら死んじまうんじゃねえか」
「土方君、焦らしてないでさっさと最強にしてあげたまえ」
「そうだな、じゃあスイッチ上げるぜ」
「いやだっ、やめろっ……あ゛あ゛あぁぁぁぁっっ!」

ウィンウィンと激しい音を立て、バイブが胎内でくねりながら暴れまわった。
前立腺をぐりぐりと細かい突起やバイブの先端が激しく刺激し、
高杉は全身をビクンビクンと大きく痙攣させながら絶叫する。
ロープが激しく軋み、縛られた腕や吊られた太腿には血が滲んでいた。

「あ゛あ゛あ゛ぁぁっ!やめっ えぐれるぅっぁ」
「いい声だ、ほら、そろそろ前も限界だう?イカせて下さいと言いたまえ」
「ひぐぅっ あぐぅぁぁ や゛ぁぁっ」
「イキたきゃ吐けよ、仲間の場所を!高杉!」

土方に責められるが、高杉は喘ぐばかりで口を割らなかった。
快楽に融けきった表情だったが、全く喋る気配は無い。
伊藤は肩を竦めて「強情だね」と呟いた。

「バイブは終わりにしよう。誰か、高杉君に突っ込みたまえ」
「伊藤隊長、オレにやらせて下さい。こんな上物なら男も悪くない」
「ほう、じゃあ君に……」
「いや、俺がやる」

我先にと立候補した伊藤の部下を押し退けて、土方はズボンのベルトを外した。
高杉からバイブを引き抜くと、土方は既に猛ったペニスを取り出して
高杉の入り口に宛がった。一気に貫くと、高杉の背中がビクリと撓る。

「ああぁぁっ、熱いぃっ」
「く……はっ、スゲー締め付けだな」

細い腰を掴み、土方はパンパンと尻たぶに腰を打ちつけた。
硬い先端に己のナカを押し上げられる度、高杉はバイブでは得られない
肉の感触と熱さに激しい喘ぎ声を漏らす。
薬と与えられ続けた快楽の影響で理性を失った高杉は、従順に喘いだ。

「あっ あぁっ ああぁぁっ」
「くぅ、 やべぇ、もってかれそうだ」

土方は夢中で高杉を突き上げていた。
拷問しているなどということは忘れ、女とのセックスでは得られなかった
極上の快楽に身を委ねる。

「ひうぅ あっ ぁっ イクゥッ いあぁっ」

プラグの横からポタリポタリと精液を垂らしながら、高杉は尻を揺らして震えた。
誘われるまま、土方も腰を振って快感を求める。
前立腺を激しく突き続けていると、高杉は一際大きく痙攣した。

「は、ずせっ、イキたいっ、イキたいぃっ!」
「あっ、ああ。パンパンになってやがる、そろそろ外してやるよ」
「あはぁぁっ あぁぁっ あっ うぁぁぁっ」

プラグを引き抜いて突き上げると、涎を垂らして高杉は目を剥いた。
排尿するように勢いよくボタボタと精液を吐き出して、そのままがくりと気を失う。
気絶した後も、全身はビクンビクンと痙攣し続けていた。

「フン、暫く使い物にならないね。まあ、時間はある。拷問は明日に回そう。
 起きる前に逆さ吊りにでもしておくといい。夜は寝かせないように
 じゃああとは任せたよ、ホモ方……いや、失敬。土方君」

冷たい声で言い放ち蔑んだ目を向けると、鴨太郎は部下を引き連れて出て行った。



昼過ぎに拷問を始めてから既に六時間以上が経過して、もう日はとっぷり暮れていた。
漸く痙攣が止まった高杉の身体はぐったりとして動かない。
ロープを切って落ちてきた高杉の身体を土方は優しく抱きとめた。
手首を足首だけを拘束した状態で、自分の上着の上に高杉の身体を優しく横たえる。
湯を汲んできて身体を綺麗に清める間も、高杉は起きなかった。
華奢な身体を優しく抱締めると、高杉が寝言を呟く。

「ぎ……んと、き」

聞き覚えのあるその名前に土方はハッとした。
坂田銀時。万事屋だ。
高杉が「アイツに似ている」と呟いたアイツは銀時のことだったのだ。

「似てねえよ、馬鹿やろう」

不機嫌に呟くと、土方は高杉をさらに強く抱締め、密かにキスをした。
これではまるで嫉妬して居るみたいだと、土方は溜息を吐く。
さっき、高杉を自分の手で汚したのだって似たような理由だった。
鬼の副長と呼ばれた自分が最大の敵である高杉を虐げる手を緩めては、
伊藤にあらぬ容疑を掛けられて、立ち位置を崩されると言うのもあったが、
それ以上に、あんな奴らに触らせるくらいなら、自分の手で、と思ったのも事実だ。

「馬鹿だな、オレも。なに惚れちまってんだよ」

誰もいない部屋に情けない声が響く。土方は溜息を吐いた。
明日になったら、もっと酷い仕打ちがなされるだろう。
ふと、近藤の言葉を思い出す。
「高杉は、そんなに悪い奴には思えない」と。
確かに、高杉の目は腐ってはいなかった。時折気が触れたような表情をしているが、
心の底から腐った目では無い。
幕府を恨む気持ちはなんとなくわかる。以前率いていた鬼兵隊は、皆殺しになった。
もしかすると、そこのことへの復讐でもしているのだろうかと思う。
だとすれば、幕府と攘夷浪士、どっちが悪でどっちが正しいかなど解りはしない。

高杉の傍についたまま、夜が更けていく。
高杉はずっと眠ったままだった。夕食用にコンビニのおにぎりを用意したが
起きる気配はないから無駄になりそうだ。

そんな時、屯所内が俄かにざわめいた。
誰かが叫ぶ、「侵入者が現れたっ!」と。
バタバタと屯所内に足音が響くが、今のところ叫び声は聞こえていない。
だが、警戒を怠ってはならない状況だと、土方は刀を握る。
その時、拷問部屋の扉がふっと開いた。
月明かりに照らされて薄闇に立っていたのは、白い鬼だった。

「なっ……てめぇ、は」

いつもと違う服で、いつもと違う表情をしていたが、それは銀時だった。
冷たい赤い瞳がじっとこちらを見ている。
数秒睨み合った後、土方は高杉を彼に差し出した。

「探しもんはこれだろーが」
「……どういうつもりだ、土方」
「別に。テメーに暴れられちゃあただじゃ済まねえ。
 それにどの道、明日くらいにはコイツの仲間に襲撃されるだろうよ。
 被害は少ないに越した事はねーと判断したまでだ、さっさと行け」
「責任問題に問われても知らねーからな」
「心配いらねーよ。オレだけの責任じゃねえよ」

銀時は受け取った高杉をぎゅっと抱締めると、闇の中へ消えていった。
その姿を見送ると、土方は煙草に火をつけ、紫煙をくゆらせた。
細い糸のような煙が月明かりに登って消えていった。




「う……、ぎ、ん、とき」

胸の前に抱えた高杉が呻き声を上げて、目を覚ます。
軽くその額にキスすると、銀時はやや不機嫌そうな表情を浮かべた。

「ばぁか、何ヅラなんざ助けて捕まってんだよ」
「ククッ、たまにはそういう調子の悪い時もあんだよ、銀時」
「何だよそれ、生理かコノヤロー」
「んなわけあるかよ、アホ天パめ」

愉快そうに笑う高杉を強く抱締め、銀時は頬を摺り寄せる。

「心配かけんな、ハゲんだろうが」
「心配すんな。そのモジャ頭が禿げるこたぁねえよ」
「ふん、可愛くない奴。大丈夫か?土方に、酷い事されなかったか?」
「いいや?丁寧に扱ってもらったぜ。女の様にな」

ニヤリと高杉が笑うと、銀時はムッとした表情を浮かべた。

「この尻軽野郎め。アイツに惚れたら殺すかんな」
「さあな、いい男だったぜ。なかなか」
「テメー、俺を怒らせたら後が怖いかんな。
 もう怪我が治ったら絶対この借り返しに来いよ、
 その淫乱な身体でたっぷりとお礼してもらうからな、約束だぞ」
「ククッ、そりゃまた随分高くついちまったな。ま、いい。約束だ」

高杉は銀時と指切りを交わすと、安心したように意識を手放した。
心地良い揺れの中、銀時の腕の土方の腕の温かい感触が重なった。
そういえば、土方と銀時は同じような体型をしてるのだと気付き、
眠りながら高杉は密かに笑みを零した。






--あとがき----------

ケイ様、リクエストありがとうございましたvv
拷問シーンをあれこれ考えてたらかなりエロ&エグくなっていましました(汗)
土方さんは銀さんと違ってドSではないので、話を盛り上げるのに、
鴨太郎やモブにも登場して貰いました。(笑)
時間軸としては紅桜よりは後で、真選組動乱よりちょっと前なイメージです。
鴨太郎が出てきた時には土方さんは妖刀にやられてたのですが、
その辺はさらっとスルーして下さい。
設定としては、鴨太郎は高杉と手を組んでますが、高杉が嫌いなのと、
一応盟友なので拷問死しない為に見張りついでに拷問に参戦してます。
もっと総悟や近藤さんを出したかったのですが、
エロを優先した故に彼らのシーンは割愛となりました(汗)
いろいろ足りてない感があるかもしれないのですが、
ケイ様に少しでも愉しんでいただければ幸いですっ!