−淫蕩地獄−






時々夢に見る。あの頃の事を。
血と硝煙の匂い、埃に塗れ、熱気と死に覆われた戦場。
その中を駆ける白い夜叉のことを―…

たかすぎ。
誰かが名前を呼んでいる。銀時、俺を呼んでいるのはお前なのか?


「ぎ、さん……たかすぎさん、高杉さんってば」
「ん……、ぎん…とき―…」
「高杉さん、起きて下さい!」

まだ幼く高い声にハッと高杉は瞳を開けた。
眼鏡を掛けた少年が心配そうに自分の顔を覗き込んでいる。
彼は誰だっただろうか。仲間は、もっとごつい男ばかりだった。
記憶が混乱している。ああ、違う、彼は今の仲間の新八だと思い出す。
ぼんやりしていると、新八が更に顔を近付けてきた。

「高杉さん、大丈夫ですか?もしかして二日酔いですか?」
「ん、ああ、いや。昨日は飲んでねぇよ。悪ぃ、寝惚けただけだ」

軽く新八の頭を撫でると高杉は布団から這いだして洗面所に向かった。
顔を洗って部屋に戻ると神楽が朝食を目の前にお預け状態だった。

「あ、晋助おはよう。早く座るネ。アタシ、お腹すいたアル」
「わざわざ俺が起きんのを待っていたのか?先食ってていいんだぞ」
「ダメよ。晋助は寂しがり屋だから、一人でメシ喰えないね」

母親みたいな口調で言われて高杉は苦笑を浮かべた。
あまり食に興味はない。だから、放っておくと食事を取り忘れる事がよくある。
そんな自分を神楽は心配して居るのだろう。
別に腹は空いていなかったが、神楽と一緒に高杉も食事を摂った。

「ごちそーさん。悪いな、新八。朝飯作らせちまって」
「いえ、僕もまだでしたから。それより、高杉さん大丈夫ですか?」
「何がだ?」
「今朝、すごく魘されていましたよ。嫌な夢でも?」
「いいや。何でもねぇさ」

新八の肩を叩くと、高杉は新聞を手にソファに座りこんだ。
久しぶりに見た攘夷戦争時代の夢が脳裏に蘇る。
過去の記憶に必ずついてまわる、銀髪に紅の瞳の幼なじみを想う。

「銀時……」

誰にも聞こえないように高杉はごく小さな声で呟いた。

あの時、自分達の所為で先生が死んで、
銀時を憎みそうになって、それで銀時から離れた。
離れた、というよりはみんな互いの辛い顔を見たくなくて、
互いを憎みあいたくなどなくて、互いに離れて行ったという方が正しい。

高杉自身も世の中すべてを恨み、国家も天人も全て皆殺しにして
みんなで地獄に落ちてやると息まいた時期もあったが、
残った鬼兵隊の者達に支えられ、彼らが自分を生きながらえさせてくれた。

初めこそは自分一人おめおめと生き残った事を恨んだりしたが、
桂にも説得されて、やがて彼らが救ってくれた命を無駄に終わらせまいと、
思うようになった。そして始めたのが万事屋だ。
弱い人の味方になるなどと綺麗事は言わないが、世の中にはびこる
天人や幕府の悪事を少しでも滅する助けになればと始めた何でも屋だ。
いつの間にか新八と神楽という仲間が増え、今は三人と一匹で営んでいる。

依頼は様々だが、高杉は好んで危ない仕事をよく受けていた。
もちろん、そういう仕事に新八や神楽は連れて行かない。
彼らにはペット探しや浮気調査などの簡単な仕事だけを共にする。
自分が危険な仕事を受けている事は隠している。
今日も、天人が持ち込んだ麻薬の売人の捜査の依頼が入っている。

「ちょっくら出掛けてくるぜ」

新聞を畳み、高杉は腰に刀を下げて玄関へ向かった。
ブーツを履いていると、新八が足音を忍ばせて近付いてくる。

「どうした?」
「高杉さん、どこへ行くんですか?」
「別に。野暮用だよ」
「嘘だ。危ない仕事、引き受けているんでしょう?知ってるんですよ。
 神楽ちゃんも僕も、高杉さんが心配なんです。連れて行ってくれませんか?」
「……すまねぇな。絶対に戻るから」
「僕たちじゃ、足手まといですか?」
「いや。今回は一人の方が動きやすいんだ。今度は連れて行く」
「約束、ですよ」
「ああ」

ポンと新八の頭を撫でると、高杉は万事屋をあとにした。



陽の光を浴びて白刃が煌めく。
戦から離れてもなお、侍として刀を振っている事に我ながら呆れつつ、
危険な麻薬を売りさばく天人を斬り伏せる。

「何者だ、貴様は!」
「俺ぁタダの万事屋さ。てめぇらみてーなブタ共の掃除も仕事のうちでね」
「下等な人間如きが我々春雨に歯向かうとは、ぶっ殺してやる!」
「はっ、やれるものならやってみな」

春雨、宇宙最大の犯罪シンジケート。
相手にとって不足なしだ。高杉はニヤリと笑う。
振り降ろされる大刀をひらりと躱し、相手の腕を切り落とす。
背後から別に敵が槍で貫こうとするのを左腕で牽制すると、
回し蹴りで相手を薙ぎ倒し、袈裟がけに切り裂く。
辺りに血の匂いが充満する。血が沸騰する。昔に引き戻された様な感覚。
あの懐かしい声が「高杉」と自分の名前を呼ぶ気がした。

一瞬、気が削がれる。その隙を突いて敵が銃弾を放つ。

「ぼーっとすんじゃねぇ!」

怒号と共に、自分の前に広い背中が広がる。
銀時。いや、違う。黒い制服、真選組の制服だ。
目の前に立っていたのは土方だった。

「バカ野郎、一人でこんな危ねぇとこに突っ込みやがって!」
「ふっ、こんな連中俺一人で充分だぜ」

背中あわせに立つと、眼前の敵を殲滅していく。
昔と同じ光景。たが、背中を守ってくれるのは銀時じゃない。
それを一瞬淋しいと思った女々しい自分に自嘲が零れる。
感傷を打ち消すように、高杉は無心で敵を斬り伏せていった。


暫くして、真選組のパトカーが到着して、事態は収拾に向かう。
高杉は一足先に現場を離れた。一人で欄干に凭れてキセルを咥える。
自分で火を着けるより先に、隣に来た土方が火を入れてくれた。

「気がきくな、土方」
「まあな。大丈夫か?高杉。怪我とかしてねぇか?」
「怪我?この俺があんな雑魚相手にそんなヘマするかよ」
「だろうな。でも、心配なんだよ」

土方の藍色の瞳がじっと自分を見詰めてくる。
吸いこまれそうな藍。熱を孕んだ瞳だった。

「オマエのお陰で、幕府側じゃ手の出し辛ぇ連中を捕える事ができている。
 その事には感謝してる。だけどな、高杉。あんま危険な事ばっかすんなよ」
「別にしてねーよ」
「本当か?近頃、鬼兵隊が復活したらしい。
 かつて、ある一人のカリスマが率いていた部隊だ。
 以前とは別の男が率いている。白夜叉、奴が今度の総督だ」
「鬼兵隊、白夜叉……」

其の名に心が揺らぐ。失われた左目がズキリと痛んだ気がした。
着物の胸辺りを高杉はぎゅっと握りしめる。

「奴ら、何やら不穏な動きをしてるらしい。頼むから、首つっこむなよ」
「余計な御世話だ。俺の心配なんざ必要ねぇよ」

曖昧に、少し困ったように笑って土方に背を向ける。
土方に動揺を悟られたくなかった。
「待てよ、高杉」土方の腕が自分の手首を掴む。
後ろに引っ張られ、いきなり胸の中に抱締められる。
銀時と同じ背に似た体形。思わず縋りつきたくなるのを必死で堪えた。

「高杉、俺はオマエのことが心配なんだよ。だから、無茶すんな」
「わかったよ」

納得させる為に彼の言葉に頷くと、高杉はするりと腕の中から逃げた。
不敵に笑って「じゃあな」と告げると足早にその場を去る。
遠くで祭り囃が聞こえていた。ああ、そうだ。今日は江戸の祭りだ。
喧嘩と祭りは江戸の華。昔から祭り好きで、よく銀時と屋台巡りをしていた。
懐かしい気分だった。それにさっき不意に抱締められた時の動揺が合わさり、
妙な気分だった。銀時に会える、何故だかそんな気がした。




夜、祭りが本格的に始まる。

暗闇に提灯の明かりが無数に灯り、屋台や人の数も増えて賑やかだった。
連れてきた新八や神楽と別行動をとり、高杉は一人で
ふらりふらりと人混みを彷徨うように徘徊する。
空を火の花が彩る。その輝きを見上げていると後ろに不穏な気配を感じた。

「やっぱり祭りと言えば花火だな」

よく知った声に弾かれて振り返ると、後ろには銀髪の男が立っていた。
ずっと会いたかった男が其処にいる。
会いたくても、物理的にも心情的にも会えなかった男が。
喜んでいいのか驚いていいのか、苦々しく思えばいいのか解らず高杉は戸惑った。

「ぎん、とき……」
「久しぶりだな、高杉。少し見ねぇうちに昔よりさらに別嬪になった。
 すっかり色っぽくなっちまって。背も伸びたし、体格も少しだけ良くなった?
 あ、でも相変わらず俺よりチビだし、華奢な身体付きしてんな、オマエ」

そう言って笑う銀時に昔の様なぶっきらぼうさはなく、
かといって、昔みたいに優しく真っ直ぐな笑みもない。
ただ、歪な笑みが浮かべられていた。

「な、んで。お前が居るんだ」
「最近京都から江戸に上京して来たんだよ。祭りがあるって聞いて、
 ちょっくら挨拶に来た。もしかしたらオメーがいるかもって期待もしてた。
 したら、案の定オメーに会えたってワケだ」
「挨拶、だと?」

怪訝な瞳を高杉が向けると、銀時の紅が鋭く光った。
同時に、祭り会場の櫓辺りで大きな爆音がした。

「なっ!?銀時、てめぇ……っ」
「言ったろ?挨拶しにきたって。これはまだほんの挨拶だぜ」
「攘夷派のテロか。……新八、神楽っ!」

置いて来てしまった二人が心配になり、高杉は爆心地へ走っていこうとした。
だが、銀時が腕を掴んでそれを阻んでくる。

「離せよ!」
「嫌だね。高杉、俺はオマエを連れに来たんだ」
「なっ、に……」
「あんな事があって別れちまったが、俺はオマエと居たい。
 なあ、オマエだって松陽を奪った幕府を壊したいだろ?来いよ、俺と」
「俺は……」

伸ばされた銀時の手を取って連れ去られてもいい。
そんな衝動が込み上げる。自分も幕府が未だに憎いと思う。
銀時の気持ちも解る。だけど、出来なかった。
新八や神楽の顔が過る。自分を助けて死んでいった部下の顔が浮かぶ。
伸ばし掛けた手を引っ込め、高杉はぎゅっと拳を握る。

「むり、だ。俺はもう、攘夷志士じゃない」

呟くように高杉が言うと、銀時の瞳の色が変わった。
「残念だよ、高杉」とゾッとする程、冷たい声で銀時が呟く。
途端、銀時がいきなり間合いを詰めてきた。
咄嗟のことに対応しきれず、銀時の拳を避ける事ができなかった。
だが、鳩尾への直撃はなんとか避けた。

「ゲホッ、ぎ、ん……」
「流石は高杉。俺の不意打ちを避けるたぁ、大したもんだよ。でもな……」
「っ!?がっ……!」

銀時じゃない誰かの手刀が首に叩き込まれた。
高杉は朦朧としながらも後ろを振り返る。黒いサングラスに黒いコートを纏った
闇を体現したような男が無表情で背後に立っていた。

強烈な一撃に高杉は意識を手放した。前のめりに倒れる高杉を銀時が抱き止める。
ちゅっと高杉の項にキスを落とすと、銀時は黒いコートの男を見た。

「万斉、撤退するぞ。今日はここまでにしとこーや」
「了解した。所で白夜叉、その男、かつての鬼兵隊の総督、高杉晋助であろう?」
「ん?ああ、そうだぜ」
「どうするつもりだ?」
「どうって、連れて帰るんだよ。だから態々テメーに気絶させたんだろーが」

万斉は怪訝な顔で銀時を見る。そしてチラリと高杉に視線をやった。
片目を失っているのは残念だが、隻眼でも十分すぎる程強く凛とした眼差し。
綺麗な男だと、万斉は思う。

「……万斉。こいつに手ぇ出したらぶっ殺すぞ」

不穏な万斉に視線に気付いた銀時が、殺人鬼の様な瞳を彼に向ける。
万斉は無表情のまま「手など出しはせぬ」と答えると闇に去っていった。
フンと鼻を鳴らすと、銀時は高杉を抱いて混乱する祭り会場から消えた。



瞼の裏に残る、初めて見た銀時の泣き顔。
“ごめんな、高杉。守れなくてごめんな”そう呟いた銀時に表情は無かった。
喪失に苛まれた紅の瞳が痛かった。
違う、守れなかったのは、俺のほうだ。
辛くて、苦しくて、どうしてもこれ以上銀時と居る事ができなかった。

「う……っ」

長い睫毛が震えて暗緑色の瞳が姿を現す。
見知らぬ天井。確か、誰かに後ろから殴られて気絶させられたんだ。
さっきまで見ていた過去の忌まわしい記憶を振り払い、
高杉は状況を把握しようと辺りを見回す。

「よう、お目覚めか?気分は?」
「銀時、ここはどこだ!」
「俺の隠れ家だよ。大丈夫、俺以外誰もいねえから」
「……帰る」
「だめだ、帰さねえ」

銀時に手首を掴まれて布団に押し倒された。
乱暴に唇を奪われる。

「ふぅっ……ンンッ、んう」

長い舌が唇を割って侵入し、猥雑な水音を響かせながら口腔を犯す。
久しぶりの感触に頭がクラクラして、下半身が甘く疼いた。
抵抗する事を忘れそうになるが、自分を叱咤して高杉は身体に力を込める。
無理やりキスしてくる銀時を押し返すと、唇の端から垂れた唾液を乱暴に拳で拭った。

「馬鹿、やめろっつってんだよ!」
「つれねーな、高杉。久しぶりに会えたのに、愉しもうぜ」
「ふざけんな、新八や神楽に心配かけるワケにはいかねぇんだ、帰る」
「そんなにあのガキ共が大事か?俺よりも……」

ぎらりと鋭い光が銀時の瞳に宿る。
高杉は背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。
この状況は不味い。反射的に逃げようとしたが、銀時にうつ伏せに倒されて、
枕に顔を埋めさせられる。窒息しかけて頭が朦朧とした。

高杉の動きが鈍った隙に銀時は背中を膝で押さえて、
乱暴に白い着物を剥ぎ取り、インナーの黒いジャージも脱がせた。
用意してあった縄で高杉の腕を後ろ手に縛り上げる。
肌の上を滑らかな縄が滑り、上半身に蛇の様に巻き付いて行く。
縄が触れる感触すらもどかしい快感として身体を蝕んだ。
上半身を縛り上げると、銀時は肩を掴んで高杉を自分の方に向けた。
桜色の乳首は赤く色付き、勃ちあがっている。
指の腹でやわやわと撫でると、高杉がびくりと腰を揺らして短く喘いだ。

「くっ……ぅ、ぁっ」
「相変わらず色っぽいな、高杉は。色気増したんじゃね?」
「ふざけ、んなっ」

気丈に銀時を睨み付けると、銀時は楽しそうに笑った。

「高杉。オマエのそういう強気なとこも好みで、俺を煽るだけだぜ?」
「うるせぇ、てめぇ、俺をどうする気だ?」
「どうする気だなんて、言わなくても解んだろ?」

くっきりと浮かび上がる綺麗な鎖骨を嘗め、
細く白い首筋に舌を這わせる。
かり、と首を甘噛みするとぴくりと高杉は肩を跳ねさせた。

「もう一回調教しなおしてやるよ、高杉」

唇の端を持ち上げ銀時が微笑む。
顔を青褪めさせる高杉の胸を鷲掴みにすると、
強弱をつけて揉みしだいた。
手のひらで乳首を転がすように触れると、「んっ」と高杉が
くぐもった声を上げる。

「っは、ぎん、ときっ。解け、俺に触るなっ」
「随分と冷たいじゃねぇか。久しぶり何だし、
 ちょっとは可愛く甘えてみせろよ。愉しまなきゃ損だぜ?」
「冗談、じゃねぇ、やる気なんてねぇんだよ、俺ぁ」
「そんな事言って、もう準備はオッケーて感じになっちまってんぜ?」

悪魔の様な笑みを浮かべると、銀時がズボンの上から
太腿で高杉の股間を擦った。
既に固くなったそこをグリグリと刺激すると、高杉は背中を弓なりにして
「あっ」と色っぽい声で喘ぐ。

「窮屈だろ、脱がしてやるよ」

ベルトを外し、ズボンを下着ごとずり降ろす。
既にゆるりと鎌首を擡げた高杉の性器は、先走りで卑しく光っていた。

乳首を歯で挟んだり、舌先で捏ねくり回したりしながら
銀時は高杉の性器をもどかしいくらいやんわりと擦り上げる。

「ンンっ、あぁっ だめ、だ……っ!」
「嘘付け。もっと欲しいって身体が言ってんぞ」
「ヒアッ! いあっ……アッ」

少し強い刺激を与えると高杉は悲鳴に近い声を上げた。
亀頭を手のひらでぐりぐりと弄ると、涎を垂らして腰をビクビクと震わせる
高杉に、銀時は自分自身を熱くした。
高杉の口の中に指を突っ込んで唾液を絡め取る。

「ふっ……んぅ、うぐ……っ、ふぁっ」

舌を指で弄りまわし、口蓋を指の腹でなぞると高杉は綺麗な顔を顰めた。
苦しそうだが、何処か恍惚とした表情を浮かべている。
じゅうぶんに湿らせた指を引き抜くと、後ろの窄みを指でつっと撫でる。
高杉は喉をヒクつかせて、腰を揺らした。

「やめろ、ぎんときっ!」

慌てたように足を振り上げて蹴りを入れてくる。
相変わらず行儀の悪い猫だ。

「危ねぇな、高杉。ったく、行儀の悪い足だな」

縄を手繰り寄せると、嫌がってジタバタと暴れる高杉を押さえこみ、
無理やり足を開脚させた状態で縛り上げる。
昔より若干肉付きのよくなった太腿に縄が絡みつき、肉を締め上げる。
両足とも縛ると、高杉はいよいよ抵抗する術を失くした。
恥かしそうに唇を噛みしめる顔が溜まらなくそそる。

「いい眺めだな、鏡で見てみるか?」
「っつ、見る訳ねぇだろ。この変態野郎!」
「褒め言葉としてとっておくぜ。それじゃあ、そろそろ本番いくぜ」
「ちょっ、まっ……アァッ!」

節だった長い指が高杉の菊座に突きたてられる。
ずぷりと湿った指が胎内に侵入して来る感覚に高杉は目を見開いた。
久しぶりに後ろに咥え込んだ違和感に身体がなれず、
指一本だと言うのに苦しい気がした。
それだけじゃない、ねっとりと下半身から快感が這いあがって来る。
銀時に抱かれていた頃を思い出して、身体が勝手に熱くなっていく。

「高杉、もしかして俺以外の男にやらせてなかったの?」
「……っ!たりめーだ、俺はホモでもバイでもねぇんだよ」
「俺だけが特別って意味?すげぇ嬉しいよ、高杉。
 俺も男抱いたのは高杉だけだよ。久しぶりだとキツいからゆっくり慣らすよ」

銀時が笑いながら、指をもう一本増やす。
銀時の指の腹が内壁を引っ掻くと、射精感が込み上げる程の快感に蝕まれた。
このままじゃ流されて、本当に抱かれてしまう。
漏れそうになる嬌声を、高杉は奥歯を噛みしめて必死に堪えた。

「あぅ、ふぅ……やめろ、銀時っ!」
「痩せ我慢すんなよ、身体は欲しいって言ってるぜ」
「ふぁっ…ヒアァァッ、いあっ!」

指が素早く出入りして、前立腺を何度も激しく突く。
手足の自由を奪われた高杉には喘ぐことしか快感を逃す術が無かった。
静かな部屋にジュプジュプと指が出入りする水音と、
高杉の喘ぎ声が響き渡った。

「だめだっ、いく、イクッ うぁぁぁっ」
「すげぇエロい顔。でも、イかせてはやんねーよ」
「ひうっ!?あ、ぎんときぃっ!」

射精しそうになった瞬間、根元を紐で戒められる。
指の動きも急に緩慢になり、いけない弱い快感をネチネチと与えられた。
絶頂寸前で止められた挙句、焦らすような責め苦を受けて
頭が変になりそうだった。高杉の口からは涎が垂れ、だらしなく喘ぎ続ける。
前立腺を突き上げて激しい快感を与えられたと思えば、
次にはぎりぎり掠めるくらいの位置を擦り上げられる。
拷問の様なやり口で触れられて、高杉の目から強い意志が無くなっていく。

「そろそろ降参する?高杉。ほら、言ってみ?俺のチンコが欲しいってよ」
「う……あぁっ!とっとと、やれ、ばかっ」

乱暴な口を聞くと、銀時の手が高杉の張り詰めた性器をぎゅっと握った。
溜まらず悲鳴を上げる高杉を、冷酷な双眸が見下ろす。

「そんな頼み方じゃ、もっと手酷く扱うぜ?ね、可愛くおねだりしてみせなよ」
「くっ、お前のを、挿れてくれ」
「そんなんじゃダメ。俺の何をどこに挿れてほしいの?」
「うぅ……、お前の棒を、俺の穴に突っ込んでくれっ……」

耳まで赤くして、銀時を睨みながら高杉が自棄になったように叫ぶ。
銀時はくくっと笑うと高杉の唇にキスをした。

「まあ合格。おらよ、ご褒美をくれてやらぁ」
「アッ!?うあぁぁっ!!」

銀時の熱い肉の塊が一気に高杉のナカを貫いた。
余りの快感に一瞬意識が飛びかける。
銀時は高杉の腰をぐっと掴むと、激しく自分の腰を打ちつけた。
ゴリゴリとナカを擦り上げられて、高杉は髪を振り乱してよがった。

「いあぁっ あっ あぁっ、ぎんときぃっ」
「くっ、は。オマエん中、ぎゅうぎゅう喰いついてきてすげぇイイぜ」
「うぁっ ンッ あぅっ ああっ しぬっ……ぁあっ」
「俺なしじゃ生きられねぇ身体にしてやるよ」

イキたいのにイケず、快感を与えられ続けて目から生理的な涙が零れた。
気持ち良すぎて死ぬんじゃないかと思う程なのに、
銀時は構わず激しくピストン運動を繰り返し責め立ててくる。

「も、むりだっ、解け、ぎんときっ いかせ、ろっ」
「だいぶ脳みそ痺れてきてんなァ。いいぜ、
 俺と一緒にくるっつーなら、チンコの紐解いてイカせてやるよ」
「っつ……」

一緒に行く。唇から零れそうになった言葉を高杉は必死に呑み込んだ。
銀時のことは今でも大事に思っている。
だけど、ここで行くと頷けば、神楽や新八はどうなる。
二人の笑顔が脳裏を過って、高杉は少し正気を取り戻した。

ゆるりと首を振り、「一緒には行けねぇ」と高杉が呟く。
刹那、銀時の顔が歪んだ。

「そう、もう俺のことは愛してねーわけだ」
「……」
「土方っていう男に惚れちまったか?よりによって幕府の犬に」
「はぁ?な、んでそこで土方がでてこんだよ」
「昼間、アイツに簡単に抱締められてたろ?許さねーよ」

冷たい声でそう言うと、銀時は高杉の根もとを戒める紐を解いた。
予想外の行動に驚く高杉に、銀時が激しく腰を打ちつける。

「ひぁぁぁっっ、あっ いくぅっ アアァァッ!」
「くはっ」

高杉の性器がぶるりと震え、激しく精液を吹き上げてイッた。
それとほぼ同時に、銀時も高杉の中に精液を勢いよく撒き散らす。
射精でぐったりと仰向けに倒れる高杉を、銀時は俯きにひっくり返す。

「ぎ、んとき?」

驚いた顔で肩越しに自分を見る高杉の後頭部を布団に押し付け、
銀時はまだ萎えていない自身を再び高杉の中に突きいれた。

「アアァァッッ!」
「誰が一回で終わらせるっていったよ?まだまだイカせてやるよ」
「う、そだろ?も、ムリだっ……アァッ」
「大丈夫だって、高杉の、またおっ勃ってるぜ」

後ろからさっきよりも深く抉られて、高杉は激しく喘ぐ。
身体の奥底が甘く疼き、貫かれる快感が全身を犯していく。
我慢できずにまたイッてしまった高杉を、容赦なく銀時がつく。

「やめろ、もういやだぁっ、死ぬッ、ムリだ ぁぁっ」
「知るかよ。オマエが堕ちてくるまでやめねーよ。絶頂地獄、最高だろ?」
「あはぁぁつ、 うあぁっ ぁっ いあぁぁっっ!」

地獄。甘く苦しい地獄だ。朦朧とする意識の中で高杉はぼんやりとそう思った。
何度も何度もイカされ、快楽で頭が真っ白になっていく。
喉が枯れるまで叫び、高杉は意識を手放した。



部屋のドアがノックされ、返事を待たずしてドアが開く。
ドアに立っていたのは、万斉だった。
手足を縛り上げられ、後ろから銀時に貫かれている高杉を
憐れむ様な目で万斉は一瞥した。

「白夜叉。そろそろ時間でござる」
「ん?あぁ、もうそんな時間か。チッ、しょうがねぇな」

既に意識を失って倒れている高杉のナカから自身を引き抜くと、
銀時は高杉の額の髪を掻き上げてチュッと軽くキスを落とす。

「今回は、逃がしてやるよ。高杉。今度は、必ず首を縦に振らせる」

そう宣言すると、銀時は高杉の縄を解いて布団を掛けた。
体液まみれの身体にそのまま真白い着物を纏い、銀時は万斉と共に出て行った。

完全に二人の気配が無くなった後、高杉はゆっくり身体を起こした。
銀時との性交中に失神して、起きたのはついさっき、
万斉と言う男の気配を感じた時だった。

縛られっぱなしだった脚や腕が痺れている。
起き上がるのが酷く億劫だったが、ベタベタの身体を早く綺麗にしたかった。
それに、神楽や新八も心配だ。

「銀時のヤツ、無茶苦茶しやがって―…」

余すとこなく食い尽された身体が火照り、甘く疼く。
まだ彼の腕の感触が残る身体を自分で抱締めると、
包帯の下で左目の古傷がズキリと痛んだ。








--あとがき----------

ケイ様、リクエストありがとうございましたっvv
万事屋晋ちゃん、すごく萌える設定ですよねっ♪
小説を書きながら一人でウハウハしてました(笑)
鬼兵隊トップの白夜叉な銀さんはすごく鬼畜そうですよね。
一方万事屋の高杉はちょっと丸くなったイメージです。
新八や神楽出すか迷ったのですが、折角万事屋な高杉なので
それっぽいシーンも書きたいと思って書きました。
土方は密かに高杉に恋心がある設定です☆
楽しんで頂ければ幸いです。