ほんの僅かな間に、確立していた居場所を失った。 ぬけるような蒼穹の元、坂田銀時は覚束ない足取りで町を歩いていた。 見慣れた町。見慣れた人々。 だが、今ここにいる自分は町にとってもそこで生活する彼らにとっても、 見慣れぬ異邦人と化していた。 この町で自分が築いてきた全ては坂田金時という一人の男に奪われた。 男、いや、実際には坂田銀時をモデルに創られた理想の万事屋、 アンドロイドだ。 「銀時様……」 「クゥン」 神楽も新八も、お妙も月詠も全て自分を忘れてしまった。 そんな中、まだ坂田銀時を覚えているのは金時と同じアンドロイドの タマと、動物の定春だけだ。 悲しげな声で擦り寄ってくる定春のモフモフの頭を撫でながら、 銀時は静かに微笑んだ。 「心配すんな。俺は大丈夫だ」 「大丈夫とは、何がでしょうか?銀時様。アナタ、まさか―…」 殆どない手荷物を風呂敷に纏めて江戸から離れつつある銀時に、 タマは懸念の浮かんだ表情を向けた。 無表情だが不安げに見えるのは、今の自分の心情がそうさせるのだろうか。 銀時はじっとタマの顔を見る。やはり、彼女は辛そうな顔をしていた。 「銀時様。逃げるな、などとは言いません。ですが、私も連れて行ってください」 決意を込めた声でそう告げられて、銀時は苦笑を浮かべた。 始めは新八たちに記憶を取り戻させて、金時を追い出し、 自分の居場所を取り戻すことばかり考えていた。 だが、自分がいなくてもちゃんと綺麗に回っていく世の中を見て、思った。 このまま黙って江戸を去るのが、新八たちにとって一番いいのかもしれない。 金時は悪い奴じゃない。ストレートヘアだし、給料もちゃんと支払う。 仕事だってきちんとするし、誰にでも親切で頼れる男だ。 だったら自分は退いて、金時に全てを譲るのがいいのかもしれない。 タマだって、何も知らないふりをして金時達とお登勢と居た方がいい。 そう思ったが、タマは縋る様なそして強い瞳でこちらを見ている。 置いていく方が酷な気がする程、思い詰めた表情だった。 「安心しろ。オマエが望むならちゃんと連れて行くから」 そう声を掛けると、タマと定春は嬉しそうな表情を浮かべた。 一人と一体と一匹。奇妙な連れの三人は見知らぬ場所になってしまった 江戸を彷徨うように歩いた。 何処に行くか、まだ明確な目的地は決まっていない。 別れを告げるように、見知った風景を練り歩いていた。 川にかかる大きな橋にさしかかった時、前からよく知る男が歩いてきた。 派手な女物の着物の裾をはためかせて歩く男――高杉晋助だ。 どうしてこんな時に限ってこの男に会うのだろうか。 銀時は苦々しい思いでこちらに一歩、また一歩と近付く男を見る。 幼馴染だった桂も自分と金時の記憶が入れ違っていた。 だから、高杉が自分を覚えてなくても不思議ではない。 だが、彼にまで忘れられたのかと思うと胸が苦しかった。 互いに反発し、それでも強く惹かれ合う。 彼だけは決して何があっても自分を忘れたりしない。 そう思いたいが、案外彼もあっさり自分を忘れてしまう気がする。 昔ならともかく、今となっては高杉にとって自分は歯牙にもかけない どうでもいいような存在なのかもしれない。 そう思うと怖くて、銀時は俯いて歩いた。 ゆっくりと銀時と高杉の距離が縮まる。 擦れ違う寸前で、ピタリと高杉は足を止めて銀時を見た。 「よお、銀時じゃねぇか」 にっと唇の端を吊り上げて、高杉が言った。 銀時の驚いた瞳が彼を見詰める。すると彼は愉快そうに笑った。 「どうした?銀時。クク、嫌な奴に会ったとでも思っているか? それとも、お前の名前を呼んだ俺に驚いているのか?なあ、銀時」 「オマエ、なんで俺のこと覚えて……。そもそも、事情知ってんのかよ」 「まあな。ヅラにまで忘れられちまって。フッ、透明人間にでもなった気分か? それとも、浦島太郎か?ずいぶんと情けねえツラしてやがる」 天の邪鬼な性格で素直に嬉しそうにできなかったが、 高杉が自分の名前を呼んでくれたことが泣くそうなくらい嬉しかった。 それを気付かれるのが嫌で、銀時は態とムッとした顔をする。 「うるせー、バカ。つーかさ、なんで俺の事覚えてるわけ? もしかして、江戸に居なかったから催眠波を浴びなかったとか?」 「俺はここ最近ずっと江戸に居たぜ」 「マジかよ。じゃあ、なんで―…」 赤い瞳がじっと高杉の暗緑色の瞳を見詰める。 さあなとでも言いたげに肩を竦めて見る高杉に、銀時はポツリと言った。 「もしかして、オマエあれか?動物だったのか? 黒い獣がどうとか言ってたもんな。確かに黒猫っぽいわ。オマエ」 「……どうやら、切り殺されたいらしいな」 凄味を聞かせた声と顔で、高杉が銀時を睨む。 腰に下げた愛刀をスラリと抜き、銀時に白刃を向けた。 「ウソですっ、ごめんなさい」と慌てて謝る銀時にフンと鼻を鳴らすと、 高杉は刀を再び鞘に納めて銀時の後ろに居るタマと定春を見遣った。 「そいつらと、一緒に江戸を去るのか?それとも鬼を倒す桃太郎でも気取るか? お供はカラクリの雉にバカでかい犬。猿が足りねえな。 あの鬼を倒すにゃあ、ちょいと役不足じゃねえか?銀時」 「……倒す気はねぇよ。俺が居なくても、上手く回ってる」 ふっと銀時が静かに微笑んだ。伏せた瞳が寂しげに揺れる。 その表情に、高杉は包帯の下で僅かに眉根を寄せた。 「少し、話さねえか?銀時」 高杉がちらりと繁華街の妖しげな一角を見る。 その視線に気付いた銀時がぎょっとした表情を浮かべた。 「おいおいおい、昼間っから盛っちゃう? まあ、オマエ相手なら銀さんはいつでもギン銀さんだけどね」 「興奮したツラしてんじゃねぇよ。他意はねえ。静かに話せるなら何処でもいい」 「いや、ぜひあの辺のホテルでお願いします」 「ふん。まあ、いいぜ」 銀時はタマと定春に「少しコイツと話して来る」と告げると、 高杉と並んで繁華街の宿場通りへと消えていった。 高杉の希望で、ラブホでは無く出会茶屋に二人は入った。 奥の座敷に入ると、枕を二つ並べた布団が一組敷いてある。 銀時は早速布団に寝転がると、高杉に来いよと手招きをした。 高杉はつれなく冷淡に嗤うと、キセルを取り出して吸い始める。 「なんだよ。誘ったのはテメェだろうが。 部下をつまみ食いしまくりのど淫乱のクセにカマトトぶんなよ、高杉」 「ふざけるな。部下に手ぇださねぇよ。それに誰が淫乱だ」 「そんな露出狂の服着てんだから、男誘いまくりに 見えてもしょうがねぇだろ。それに、手ぇだしてんだろ。あのグラサンに」 「万斉のことか。まあ、アイツはちょいとな。それ以外は何もしてねえ」 高杉は唇を尖らせて、ゆっくりと紫煙を吐き出した。 気だるそうな瞳で銀時を見ると、高杉はぽつりと呟くように尋ねる。 「で、どうするんだ?銀時。町を出て行くのか?行くあては?」 「さぁな。わかんねーよ。とりあえずブラブラ、かな」 「……だったら、俺の所にくるか?銀時」 高杉はまっすぐに銀時を見詰めた。 ゆっくり立ち上がると、銀時の方に歩いて行って首に腕を絡める。 「高杉……?」 「なあ、銀時。悲しそうなツラすんなよ。俺は忘れちゃねぇよ」 歌うように甘い言葉を紡ぐ高杉の細い腰を抱き寄せ、 銀時はしなやかなその身体を組み敷いた。 顔を近付けてくる銀時に自ら口付けると、高杉は厚ぼったい 銀時の唇を食んだ。応じるように銀時も高杉の柔らかい唇を啄ばむ。 着物を脱ぎ捨てて素肌を重ね合うと、早急に二人は求め合った。 銀時は高杉の花芯を手のひらで包み込むと、やわやわ扱き上げた。 高杉の中心からは蜜がとろりと零れ落ちる。 それを手に絡めて少し速度を上げて擦ると、甘い声を漏らしながら 高杉はビクビクと身体を震わせた。 指に唾液を絡めると、急くように銀時が後孔に突きいれてくる。 慣れた高杉のソコは銀時の指を飲み込むと、 求めるように熱い秘肉を絡みつかせるように蠢いた。 「う……っ、アッ」 「えっろ。高杉、オマエんなかぐちゃぐちゃじゃねぇか」 「う、るせ。前戯はいいから、とっととてめぇのを挿れろっ」 「なに、その可愛げないおねだり。まあ、強請ってくれるだけマシだけど」 指を動かす度に快楽に反応して、 震える細長い足が銀時の瞳に酷く扇情的に映った。 口では悪態をつきながらも、熱に浮かされたような濡れた瞳も、 時折、喘ぎ声を上げる唇も、全てが欲情を煽る。 銀時は上着だけでなくズボンも全て脱ぎ棄てると、 高杉の入口に自分の雄を宛がった。 期待にピクリと高杉が震える。 ズブリと内壁を拡張するように硬くて熱い先端が侵入すると、 高杉は背中を仰け反らせて、身悶えた。 「あぁっ、ぎ、んときっ」 「んっ、つっ、あちぃ、蕩けそう」 「あぅ……んっ アッ」 「動くぜ、高杉」 銀時は白い太腿を大きく割開かせると、背中を掻き抱きながら 激しく腰を動かした。 銀時が腰を動かす度に頭を痺れさせるような強い快楽が 身体を駆け抜けて、高杉は涎を零しながらあられもない姿で喘ぐ。 「ヒァッ あぁっ、いぃ」 「すげぇ締まり。ほんと、オマエ最高だわ」 甘えるように高杉が手を伸ばして来る。 首にしなやかな腕が巻きつき、桜色の唇が近付いてくる。 銀時はさらに激しく腰を動かしながら、高杉の唇を貪った。 漏れる吐息と唾液を全て奪うように舌を絡め取り、激しいキスを交わす。 「んんんっ、 んぅっ っぅ」 くぐもった声を呼ばす高杉から唇を離すと、銀糸が二人の唇を繋いだ。 それを嘗めとると、銀時は求めるように高杉の名前を呼ぶ。 「高杉……たか、すぎっ」 「あっ ぎん…と、き」 恋人に名前を呼ばれる事の幸せを、銀時は改めて実感した。 名前を呼ばれる度に嬉しくなって、燃え上がるように身体が熱くなる。 その昂りをぶつけるように、激しく高杉を貫く。 快楽に溺れた顔で高杉が銀時の名を何度も呼ぶ。 銀時も応えるように高杉のことを何度も呼んだ。 「あぁぁっ、イクゥッ アアアアァァッッ」 「うっ、はぁっ、 はっ、たかすぎっ!」 銀時の熱い精液がコプコプと胎内に注ぎ込まれた。 勢いよく腸壁に叩きつけられる精液にビクビクと高杉は悶える。 その熱さに身を捩らせながら、高杉もまた白濁液を自分の腹にぶちまけた。 二人同時果てると、高杉と銀時は布団に縺れるように倒れ込んだ。 銀時の逞しい二の腕に頭を預けながら、高杉が満たされた顔をする。 「銀時。お前は金なんざに負けやしねぇよ。 たとえ他の誰がお前を忘れても、俺は覚えていてやるよ、銀時。 お前みてぇにセックスが上手い奴はそうはいねぇしな。アレの具合もいい」 「……何それ、アッチのことばっかじゃん」 むくれる銀時に、高杉はケタケタと笑い声を漏らす。 昔に戻ったような、子供の様に無邪気な高杉の笑顔に銀時も笑った。 時間も敵味方も現状も忘れて、二人はゆったりと睦み合う。 長い長い穏やかな夢の中に居るような時間。 このまま、ずっとこうしていたい。 銀時は密かにそう思った。 神楽と新八のことも、歌舞伎町のことも心配いらない。 それならば、自分を甘やかして愛しい人と一緒にいるのもいいんじゃないだろうか。 高杉も、そう思ってくれていたら嬉しいのだが、 恐らく彼はそんなぬるま湯に浸かるような時間は望まないだろう。 サラサラの黒髪を指で弄びながら、銀時は悲しげな瞳をする。 すると、高杉は銀時にむかって手を伸ばしてきた。 天パのふわふわした頭をクシャリと撫でると、高杉は優しい笑みを浮かべる。 「本当に何処にも行く場所がねえならば、 俺がてめぇの帰る場所になってやらぁ。別に倒幕しなくていい。 ただ、ゆっくりとくつろいでりゃいいさ。鬼兵隊の連中は お前と金時の記憶がすり替わってるから、攻撃される心配もねえよ」 「高杉。それ、遠回しなプロポーズですか?コノヤロー」 「ククッ。さあ、な。慈善事業だ。天パの捨て猫拾ってやろうって所か」 「……なにそれ。ひでぇな。でも、ありがとな、高杉」 ぎゅっと高杉の身体を抱締めると、銀時は肩口に顔を埋めた。 ふわりと甘い香りが仄かに漂う。 その匂いを肺いっぱい吸い込んでから、銀時は高杉を手放した。 「タマと定春のことも考えねえといけねぇし、 もうちょっと金時の様子を探ってから婿入りするかどうか考えるわ」 「婿入りは図々しいだろ。ま、好きにしな。せいぜい足掻いてこい、銀時」 銀時の頬に接吻すると、高杉は立ち上がって着物を纏った。 連絡先を書いた紙を銀時に渡すと、 高杉はひらひらと手を振って銀時の元を去った。 店を出て暫く歩いたところで、高杉はピタリと足を止めた。 嫌な気配を感じ取って振り返えると、鼻がぶつかりそうな程近い距離に 銀時によく似た顔の金髪の男が立っていた。 しまった。 そう思った時には、腹に衝撃を感じてくらりとした。 高杉の身体がゆっくりと崩れ落ちるのを抱き止めたのは金時だった。 「坂田銀時の存在が消えてないなんて、興味深いな。高杉晋助」 「て、めぇは……っ」 「大丈夫だ。すぐに金に塗り替えてやるよ。 美しく可憐なその容姿には、銀よりも金の方が似合うさ。なあ」 意識が遠のくのに抗えずに、高杉はそのまま意識を手放した。 金時は口の端を吊り上げてにやりと笑うと、高杉を抱き上げて 町の雑踏へと姿を消した。 「う……っ」 瞼が痙攣して、暗緑色の瞳がゆっくりと姿を現した。 高杉が目を開けると見知らない天井が飛びこんで来た。 身体を起こそうとして、漸く違和感に気付く。 両手首に手錠がかけられ、ベッドの柵に片方づつ繋がれていて、 自由を奪われた状態だった。 真新しい滑らかな絹のシーツが背中で擦れる。 柔らかいシーツ越しには柔らかい羽毛布団の感触がする。 何が起こっているのか解らず驚いた顔をする高杉に足音が近付く。 ベッドサイドに立ったのは、坂田金時だった。 「よお、高杉。目、覚めたか?」 「金時。俺は、いったいどうして、こんな状態なんだ?」 「そりゃあ、恋人の俺とSMプレイ中だからだろ?どうだ?気分は」 「ふざけんな。相変わらず、ドSな性格しやがって……」 変態天パ。そう言い掛けて、高杉はハッとした。 知らない。金時などという男と恋人関係になった覚えなんて無い。 自分の恋人は、坂田銀時ただ一人だ。こんな男、知らない。 高杉は鋭い瞳で金時を睨みつけた。 「てめぇと恋人になった覚えはねえよ。俺は銀時のモノだ」 「……ありゃりゃ。可笑しいな、催眠波が効いてねえのか?」 「そんなチャチなモンであの馬鹿の記憶が消えるかよ。 俺の心の奥に焼きついて、アイツの姿も名前も消えやしねえよ」 クツクツと笑う高杉に、人の良さそうな笑みを浮かべていた金時が、 殺人鬼の様な冷酷な表情を浮かべた。 高杉に向かって武骨な手が伸びてきて、細い喉をぐっと締めた。 「……ぐっ ぅ……っ」 「気に入らねえよ。俺の事を、刻みつけろ」 「何度やっても無駄だ。俺は、俺だけは銀時の事を忘れはしねえ」 高杉がそう言ったのと同時に、金時が高杉の頬を張った。 パァンと乾いた音が部屋に響き、高杉の唇から血が流れる。 「もう一回、ぶっ壊れるくらい強力な催眠派を浴びせてやるよ。 その前に、たっぷりとお仕置きでもしようかね。なあ、高杉」 ニヤリと金時は笑うと、高杉の着物を乱暴に引き裂いた。 下肢に纏う下帯も破ると、金時は高杉を全裸にする。 露わになった白い肢体を金時が上から下まで舐め回すように眺める。 高杉は不快感の滲む表情で彼を睨んでいた。 「まあ、そう睨むなよ。俺はアイツよりスペックが高いぜ。 仕事も、人間性も、もちろん、あっちのテクもな。試させてやるよ」 「ひぐっ……うっ……ぁ!」 濡れてもいない肛門にいきなり指を二本突きいれられ、 引き攣れるような痛みと圧迫感に高杉の顔が歪む。 銀時と殆ど変らない形をした指が腸壁を引っ掻くように動いた。 僅かな痛みと妙な疼きが込み上げてきて、高杉の身体がびくつく。 「や……めろっ、俺に触るな」 金時から逃れようと、高杉は拘束された手を動かした。 ガチャガチャと耳障りな金属音とベッドの柵が軋む音が響く。 だが、手錠は外れることなく高杉を縛り付けたままだ。 金属で擦れて手首からは血が滲んでシーツを汚した。 「じゃじゃ馬だな。大人しく喘いでいろよ」 「ひぁっ、 く、んっ!」 グリッと金時の指がしこりを引っ掻くと高杉の腰が大きく跳ねる。 感じた顔をする高杉に金時はニッと笑うと集中的にソコを責めた。 「うぅっ あひぃ ……ぐっ……っ」 銀時以外の男に簡単に声などあげたくない。 突きぬけるような快感を堪えて、高杉は唇を噛みしめた。 見下ろす金時の双眸が冷たく光る。 「出せよ、声。気持ちイイんだろ?」 「だ、……れが。てめぇの触られると、虫唾が走るんだよ」 「ふ〜ん。そんなとこ言っちまうのかい。つれないねぇ」 金時は左手で握り拳を作ると、高杉の頬を殴った。 「泣けよ。泣くまで止めないぜ。許しを請えよ」 「クククッ、誰がてめぇなんぞに許しを得たいんだよ」 「そんなにアイツが好きか?汚らしい銀色の髪に陰毛みてぇな天パ。 アイツより、ずっと俺のがハンサムで男前だろう。それに優しいぜ、俺は」 「優しい、ねぇ。上っ面だけ優しくしても、なあ」 「……言えよ。銀時より金時がいいってよぉ」 指を抜き差ししながら、金時は何度も高杉の顔や身体を殴った。 殴られても高杉は決して金時の望む言葉を口にしないし、 泣く事も呻き声をあげることさえもせず、薄気味悪い笑みを浮かべ続けた。 舌打ちをすると、金時は高杉を殴るのを止めた。 殴っていた拳についた血を舐めると、金時はニヤリと笑う。 「高杉はさぁ。虐待されるのが好きなんだな」 金時は高杉のナカに埋め込んでいた指の本数を四本に増やした。 親指以外を肛門に突きいれられた高杉は、痛みに顔を歪める。 「ヒゥッ いっ あぁ、がぁっ」 「流石に痛いか?でも、お前なら大丈夫だって、なぁ」 「ぐぁっ……うぅっ」 四本の指がバラバラに胎内を掻き混ぜる。 痛みとえもいわれぬ快感に襲われて、高杉は喉を晒して仰け反った。 シーツの上でさらりさらりと滑らかな黒髪が揺れる。 気を抜くと失神しそうな程の快感と痛みに襲われた。 歯を喰いしばって身体を固くし、高杉は必死に感覚に耐える。 高杉のナカも硬く委縮して、金時の指が蠢くのを阻んだ。 高杉の身体に拒まれているにも関わらず、 金時は手ごと高杉の中に埋めようとした。 流石の高杉もそれには青褪めた顔をして、足をジタバタさせる。 「てめぇ、俺を殺す気か?んなもん入るわけねぇだろ」 「大丈夫だって。肛門って実は開発すれば女のアソコよりも 拡張できるんだぜ。それこそ、頭一個はいるらしい。だから腕くらい入る」 「なっ、や、め……ぐあ゛あ゛あぁっ」 圧し開くように金時の手がずっぽりと胎内に侵入してきた。 無理に手を飲み込んだ入り口は裂けて、血が伝い落ちた。 痛みにさっきまでゆるく勃ち上がっていた雄も萎え始めている。 金時は萎えた高杉の肉棒をゆるゆると擦って快感を与えながら、 高杉の中に拳を全て埋め込んだ。 「感じたこともねえような快感、教え込んでやるよ」 「ひぃ あ゛あ゛ぁぁっ、 イアアアアッ!!」 手首まで突っ込んだ腕を、金時が激しく抜き入れし始めた。 ズチュズチュと卑猥な水音を響かせながら腸壁を擦り上げると、 高杉が狂ったような喘ぎ声を上げながら身を捩った。 全身を激しく痙攣させながら悶える高杉に、金時は舌なめずりをする。 「無茶しちまったと思ったが、存外悦んでるじゃねぇか。 その顔、堪らねえ。最高だな。やっぱり、お前は俺の物にしたい」 金時は手を抜き差ししながら前立腺を突き上げた。 狂いそうな程の快楽に高杉の口からは涎が溢れ、目は虚ろに見開いている。 「いあ゛っ、イグゥっ、イクゥゥゥゥッッ!」 萎えていた雄ははち切れそうな程に勃起して、ブルリと震えた。 射精する寸前に、金時が高杉の根もとを強く掴む。 「ぎぁっ、痛っ ぐぁぁっ」 「あ〜ゴメン、痛かった?でも我慢しろよ」 高杉の根もとを紐できつく縛り上げ、金時は射精するのを許さなかった。 苦しさと快楽に高杉の瞳から生理的な涙が零れる。 それを舌で舐めとると、金時は手を引き抜いて、自分の雄を高杉に宛がった。 すでに解れ切った高杉のナカに、金時はいっきにそれを押しいれた。 「ひぐぁぁぁっ、いあぁぁっ」 「すっげ〜。お前のナカ、キュンキュン締めつけくる。 いいねぇ、交尾。すげぇ気持ちイイ。ほら、高杉もいいだろう?」 「くぅぅっ、あぐぅぅぅっ」 唇を噛みながら、高杉は否と頭を横に振った。 高杉の身体を無理に折り曲げて、深く自分の雄を突きいれながら 金時は高杉に「俺が好きだと言え」と命じて見るが、高杉は声を噛み殺し、 答えてはくれなかった。 気に喰わないと、金時は激しく腰を落ちつけながら 太くて固い雄で高杉の中を無茶苦茶に蹂躙した。 イキたいのにペニスを戒められていてイケない高杉は、 果てしなく続く快楽地獄に悶えながら、堪え切れずに嬌声を上げる。 「あひぃっ ぅぁっ、 しぬっ、あぁっ!」 「すごいアヘ面。写真に残しておきたいくらいだぜ」 「も、やめろっ うぅぁぁぁっ、いき、たいっ!」 「イキたいなら、俺が好きだと言え。銀時など忘れろ」 高杉の顔を掴むと、金時は強い催眠派を放った。 白い閃光が辺りを包む。それが消えると、金時は高杉に 甘く優しい声で問い掛けた。「高杉。お前の恋人は誰だ?」と。 虚ろな瞳をしていた暗緑の瞳に、鋭い光が宿る。 「てめぇなど、知らねえ。坂田銀時だ」 「そうかい。お前の記憶が壊れないっていうなら、お前自身を壊す」 「ア゛ッ イグァァァァッ」 既にギチギチに詰まった高杉の穴に、金時は指を突きいれて前立腺を刺激する。 そうしながらも激しく腰を動かして、高杉の最奥を亀頭で貫き続けた。 頭が真っ白になる程の快楽に高杉は爪先を震わせ、 叫びっぱなしの口から涎を垂らしながらよがった。 射精を許されない竿はパンパンに膨張し、苦しげに蜜を零している。 「いあぁぁぁっ、ぎん、ときぃ、ぎんときぃぃぃぃっっっ!」 絶叫しながら高杉が大切な名前を呼んだ時、扉が開いた。 扉の所に立っていたのは、銀髪の男。坂田銀時だ。 「金時……てめぇ、なに、してやがる」 「チッ、嫌なタイミングで来るなよ。まだイケてないっつーの」 「ふざけんじゃねぇぇっっっ!!!」 怒号を響かせると、銀時は高杉に跨る金時に走り寄り顔面を殴りつけた。 高杉のナカから金時のイチモツを無理やり引き抜くと、 馬乗りになって木刀で何度も金時をボコボコに打ち据えた。 壊れても壊れても自己再生をする金時だが、 銀時の猛攻に流石に再生が追い付かずに、歪な形を成していた。 「高杉ぃっ!」 銀時は高杉を繋ぐ手錠をブチ壊すと、ぐったりした身体を抱き寄せる。 「ひでぇな、クソッ、なんでこんな……っ」 「ぎ、んとき」 ホッとしたように高杉は笑うと、銀時の胸に顔を埋めた。 高杉を抱き上げると、銀時はまだ治りきっていない金時に夜叉の目を向ける。 「坂田金時、やっぱりてめぇは許さねえ。 俺がぶっ壊してやるから、せいぜい首を洗って待っていろや」 底冷えする様な冷たい声で告げると、 銀時は高杉を抱いてその場を後にした。 シーツで包んだ全裸の高杉を隠すように抱き抱え、 銀時は一番近くにあったラブホテルに入った。 「大丈夫か?高杉」 優しく高杉の身体をベッドに横たえると、 少し腫れた頬や唇、額にキスの雨を降らせる。 手首に出来た痛ましい擦れた傷痕、太腿を伝う血、腫れた頬。 傷付いた高杉に胸が苦しくなった。 「俺の事を覚えていた所為で、こんな目に遭わせたのか?」 高杉の頬を優しく包みながら、銀時が泣き出しそうな声で尋ねる。 高杉は口許を緩めると、添えられた銀時の手に頬を擦り寄せた。 「馬鹿言ってんじゃねえよ、銀時。それより、介抱してくれよ」 「ん?」 「アイツに無茶やらかされて身体が悲鳴を上げてやがる。 お前が消毒してくれよ。疼いて仕方がねえんだ。なあ、銀時」 誘うような濡れた瞳に、銀時は生唾を飲み込んだ。 奪うように口付けると、高杉とベッドへ雪崩れ込む。 金時が触れられた場所を消毒するように丹念に撫で上げながら、 銀時は自分の印を白い肌に刻んでいった。 いつもなら悦の滲んだ顔をする高杉は、どこか苦し気だった。 ふと高杉の中心を目にすると、根元がきつく縛られていた。 苦しそうな高杉の顔をみて、ああ、と合点がいく。 「可哀相に、パンパンになってんじゃねぇか」 怒張しきって蜜を零しながら震える高杉の竿に、銀時がちゅっと口付ける。 高杉はピクリと肩を揺らしながら、銀時を軽く睨んだ。 「解ってんならさっさと解け、苦しい」 「あいよ、今楽にしてやっから」 シュルリと解いてやると、高杉は「あぁ」と色っぽい声を上げて、 勢いよく精液を撒き散らかした。射精が終わっても、 まだだらしなく白濁液をボタボタ先端から垂れ流す高杉の雄を手に取り、 精液ごと優しく銀時が舐め上げる。 「もぅ、そっちは……いい。来いよ、銀時」 誘うように高杉が足を開く。 紅く熟れたソコに銀時はすぐに自分の性器を嵌め込んだ。 「高杉、愛してる。オマエが俺を覚えていてくれて、 死ぬほど嬉しい。金時だけは、俺が赦さねえ、俺の高杉を こんな酷ぇ目に遭わせやがって……。ぜったいぶっ壊してやる」 「んはっ、 あっ、銀時」 「高杉、ああっ、たかすぎっ!」 互いの名前を呼び合いながら、銀時と高杉は同時に果てた。 「今度こそ、全てを取り戻して来る」 「ああ、行って来い。銀時」 腑抜けた面から立ち直り、激しい怒りを宿した瞳で銀時は部屋を出た。 その背中を安心したように、だが僅かに寂しげに高杉は見送った。 --あとがき---------- ケイ様、リクエストありがとうございましたっvv 高杉は催眠波を浴びてもぜったい銀さんを忘れないと思います。 金さんも銀さんと同じくどSそうなので、 思い通りにならない高杉を虐めて悦んでます(笑) でも、銀さんの方が真性のドSなので、銀さんに慣れている高杉には、 金さんのSではぬるいと思います☆ 金さんと高杉のシーンの配分が少なくて済みません(汗) 楽しんで頂ければ幸いです。 |