荒れ果てた大地、硝煙と血の匂い。 猛った身体に、凍えそうな心を抱いて高杉は戦場を重い足取りで離れた。 陣営に帰るにはあまりにみっともない顔だった。 身体も血と土で泥まみれだ。 帰る途中で見つけた湖に足を向ける。 そこには、先客がいた。 銀色に輝く髪に、真っ白の羽織。銀時だった。 白夜叉とはよく言ったものだ。 戦場を駈ける姿はまさしく夜叉そのものだと高杉も思う。 姿が見当たらないと思ったら、こんな所で油を売っていたのか。 高杉はゆっくりと近付いて、声をかけようとした。 だが、不意に見えた銀時の横顔にギクリとして言葉を飲み込む。 普段の気だるげな表情とかけ離れた、獣の様な顔。 頬に飛んでいた返り血をベロリと嘗めとる赤々とした舌。 戦場を離れて帰る途中だというのに、まだ戦場に居るかのような表情。 高杉が声を掛けあぐねていると、気配を察知した銀時が 勢いよく振り返った。 獲物を見るような視線に晒されて、高杉は背筋が冷たくなるのを感じた。 「なんだ、高杉か―…。なにしてんだ、こんな所で」 「……ぎ、んとき」 「どうした?鬼でも見たか?」 ククッと歪んだ笑いを銀時が浮かべる。 そうとう参っているようだ。高杉はきゅっと唇を噛んだ。 「銀時……」 銀時に近付くと、高杉はじっと彼を見上げた。 紅い瞳が高杉の姿を映し出す。 無言で銀時は高杉の腕を掴んで、地面に押し倒した。 陣羽織を脱がせてノースリーブのインナー姿にすると、 細い首筋に噛み付いて乱暴に吸い上げた。 「っ……、ぁっ」 噛まれた痛みと皮膚を吸い上げられる甘い痺れに高杉は ピクリと剥き出しの肩を震わせた。 銀時はインナーの中に手を滑り込ませると、胸を弄った。 揉みしだくように動かしたり、乳首を転がすように手のひらを動かすと、 高杉の唇から甘ったるい吐息が零れる。 「ま、て。銀時、こんな所で……」 「いいだろ?どうせ誰もきやしねえよ」 「でも、……んっ」 黙れとでも言いたげに銀時は高杉の唇を己の唇で塞いだ。 小さな舌を絡め取って吸い上げ、自分の唾液を流し込む。 細い喉が上下して、従順にそれを飲み込むのを見ると、 胸がすく様な思いだった。 「んはぁ……うぅっ、ぎ、んっ、いい加減に……」 「うるせえ、ちっと黙ってろよ」 銀時は高杉のズボンの紐を解くと、乱暴にズボンを脱がせた。 下着も引っぺがすと、既に熱を持ちねっとりと濡れた高杉の性器が露わになる。 「なんだ、オマエも興奮してんじゃねーか」 「っつ、違う、そんなんじゃねぇ」 「だったらなんでチンコがこんなダラダラ涎垂れ流して 勃起してんだよ。興奮してたなによりの証拠だろーがコノヤロー」 卑下する様な瞳に見られて、高杉は羞恥心で足を閉じた。 だが、銀時は高杉の足を割って開かせ、身体を滑り込ませてくる。 高杉のよりずっとデカい性器を取り出すと、高杉の性器に擦りつけた。 「あぁっ、く……んっ、ぁ」 「すげぇ、ズチュズチュして気持ちイイわ。なぁ、高杉」 「や、めろ。ヤる気なんてねぇよ」 「嫌だね、俺の熱、鎮めてくれよ」 銀時が組み敷いた高杉をジッと見下ろした。 その瞳は相変わらず凶暴さを孕んでいたが何処が縋るようだった。 ああ、銀時もギリギリなんだな。 そう思ったら抵抗する気が無くなり、高杉は大人しく身体を委ねた。 銀時に竿を扱かれ、擦り合いを強要されて高杉は呆気なく精液を吐き出した。 銀時の指がそれを絡め取ると、肛門から無遠慮にナカに侵入して来る。 「ふっ……くぅっ あぐっ」 「大丈夫だって、すぐによくするからさ」 「っぁ、んんっ」 卑猥な水音を響かせながら、銀時の指が胎内を掻き混ぜる。 初めは圧迫感だけだったのが次第に快楽を伴い始めて、 射精したばかりの高杉の雄は再び起立してびくびくと震えた。 「こんくらいでいいだろ」 銀時は指を引き抜くと、高杉を乱暴にうつ伏せにした。 ぬるりとした硬い先端が後孔に押し当てられて、高杉は震えた。 犬や猫の交尾の様に後ろから銀時が高杉を貫く。 メリメリと中の肉襞を押し広げながら侵入して来る熱くて固い銀時の性器に、 頭の中が真っ白になっていく。 「アアッ、 熱ぃ、うぐぅ、はぁっ はっ」 息苦しさに肩で息をしながら、高杉は必死に身体から力を抜いた。 抵抗なんてしたら、自分が痛い思いをするのは解っていた。 こういう時の銀時は普段と違って労わりを知らず、 自分が熱を吐き出すことしか考えていないので、無理にでも挿入してくる。 力を入れたら身体のナカがズタズタに裂けだけでいい事なんてない。 「高杉、オマエのナカすげぇな。ねっとり絡み付いてきやがる」 「ぬ、かせ。てめぇこそ、どんだけ滾らせてるんだよ、デカすぎて……」 「なに?ぶっこまれただけでイッちまうか?いいぜ、好きなだけイけよ」 銀時は高杉の細い腰を掴むと、パンパンと肉がぶつかる音を響かせながら 自分の腰を激しく振った。 銀時の熱い楔がナカに出たり入ったりを繰り返す度に、 甘ったるい痺れるような快感が背中を駆け抜けて脳を麻痺させる。 「あぁぁっ、ぎんっ、ひぅ、アァァッ!」 「すげぇイイ声。もっと鳴けよ、喚けよ」 「アアアァッ でるっ、出ちまうっ!」 激しく突き上げられて高杉は吐精した。 草にボタボタと白濁液が零れて地面を汚す。 射精して虚脱感に襲われる間もなく、銀時に性感帯を責め立てられて 高杉はまた、声を上げて身を捩った。 「くぅ、はっ 高杉っ」 不意に甘さの混じった声で銀時に名前を呼ばれる。 肩越しに振り返ると、銀時は自分の背中に縋りながら硬く目を閉じていた。 幼子の様な顔に、高杉は胸が痛んだ。 押さえ付けられて、動物のように犯されても腹は立たない。 こうしないと、受け入れないと銀時が壊れてしまう気がしていた。 戦争の後には、その狂気を、熱を吐き出す場所が必要なんだ。 戦で守ってやれない分、こんな時ぐらい銀時を甘やかすのもいい。 銀時の性器が入ったまま、高杉は身体を捻る。 ぐりっとナカが掻きまわされて、その快感に高杉は呻き声を上げた。 突然体位を変えた高杉に、銀時は驚いた顔をする。 間抜けなその顔を見ていると、ホッとした。 首筋に手を廻して銀時を抱締めるように掻き抱きながら、 高杉もまた、全てを忘れて銀時に貫かれる快楽に溺れていった。 獣じみたセックスを終えると、二人は何事もなかったように 湖で身体を洗って陣地へと帰った。 「遅かったではないか、高杉、銀時」 腕を組んで憤慨した顔をした桂が、二人を迎えた。 銀時は「お母さんかよ」と文句を言いながら桂の横を擦り抜ける。 桂は「お母さんじゃない、桂だ」と言い返しながらも、 銀時を引き止めたりはしなかった。 高杉も銀時に倣って桂の横を抜けて部屋に行こうとした。 だが、肩を掴まれて桂に引きとめられる。 「なんだよ、ヅラ。俺だけお咎めありか?」 「いや、別に咎めと言う訳ではない」 「じゃあ、なんだ?」 「高杉、顔色が冴えない。それにどうした?その傷は」 桂の指先が高杉の首筋辺りを指差す。 銃創や切り傷とは異質の傷跡。歯型と鬱血痕。 しまったと高杉は内心舌打ちする。 銀時は所構わず痕を残すような男だから、 自分がちゃんと注意しなくてはいけなかった。 咄嗟に首を隠すと、高杉は瞳を伏せた。桂の顔色が曇る。 「高杉……、お前……」 「なんでもねぇ、放っておいてくれ」 高杉は逃げるように去ろうとした。その時、桂の手が高杉の腕を掴む。 「離せよ」と振り解こうとした瞬間、桂の腕の中に抱き込まれた。 華奢だが自分より背が高く男らしい身体付きの桂に 抱締められて、高杉は不覚にもドキリとした。 抵抗する事を忘れてぼんやりする高杉を、桂が強く抱締めた。 「高杉、何か辛い事があるのなら俺に言ってはくれぬか? 俺では頼りにならぬか?お前一人くらい、守ってやれる。 だから、頼りにしてくれ。俺がお前の支えになってやる」 「か、つら―…」 慣れ親しんだ匂いと温もり。身体から力が抜けてゆく。 このまま、桂に凭れてしまいたい。抱締められていたい。 そんな風に思っている自分に気付いて、高杉はハッとする。 慌てて桂の体温を引き剥がすと、高杉は自分の部屋へ走り込んだ。 まだ桂の腕の温もりが残っている。 胸がズキズキと痛んだ。一瞬でも、あのまま、桂に寄りかかろうとした 自分が許せない。 戦を終えて血の匂いが消えない内から外で動物のように絡み合う。 あんな狂った行為はろくでなしの銀時と自分で充分だ。 桂にも坂本にも似合わない。 二人はせいぜい遊女で発散する小奇麗な絡み合いがお似合いだ。 獣の様な交尾に巻き込むなんて考えられない。 戦明け、銀時に抱かれる理由は二つ。 張り詰めて押し潰され、白夜叉になってしまいそうな銀時を繋ぎ止める為。 そして、発狂しそうな自分を押さえる為もあった。 既に部下が敷いてくれていた布団に高杉は飛び込んだ。 そのまま瞳を閉じて眠った。 夢を見る。何度も、何度も悪夢のような夢を―… 毎日、誰かが死ぬ。 松陽だって、いつまで生かしてもらえているか解らない。 今日も部下が死んだ。自分などの盾になって死んだ。 その苦しみが、悪夢を見せる。 “高杉さん。アンタが生きていてよかった” 夢枕に、死んで逝った鬼兵隊の隊員が立つ。 愛おしげな瞳で自分を見詰める。 最後の別れを告げて、満足そうな顔で去っていく。 行かないでくれ。 そう願っても、離れて行く手を掴む事は一度たりともできなかった。 「う……うぅっ」 布団に入りもせずにうつ伏せに寝転がり、高杉が呻いていた。 坂本辰馬はそれを不思議そうに見下ろす。 夕飯時になっても現れないから心配して見に来てみると、 高杉は早くも布団に倒れ込んでいた。 よっぽど戦で疲れたのだろう。高杉は銀時と同じく 人一倍よく動いて天人を切り倒しているから無理もない。 起きるまで待っていてやろうと、枕元に座って高杉を見ていた。 最初は静かな寝息を立てていた高杉だったが、 次第に表情に苦悶が滲み始め、しまいには唸り出す始末だ。 「ううむ、こりゃ起こした方がよさそうじゃのう」 ムクムクの頭をくしゃりとかくと、辰馬は高杉の肩に触れた。 優しく揺り動かして彼を起こそうとする。 その時、突然高杉の瞳が見開いて腕をぎゅっと掴まれた。 「逝くなっ!」 叫びながら高杉は勢いよく起き上った。 艶やかな黒髪を乱し、荒い息を吐く高杉の手に、 辰馬はそっと大きな手を重ねる。 「どうしたんじゃ、高杉。なんぞ、恐ろしい夢でも見たんか?」 「あ……、た、つま」 驚愕したように瞳を見開いていた高杉は、ハッとした顔になる。 それからバツが悪そうに辰馬から視線を逸らした。 握っていた辰馬の手を離し、辰馬の手を振り払うと そっぽを向いたまま「悪い」と短く呟いた。 「高杉、メシの時間ぜよ。一緒に行かんか?」 「……いや、俺はいい」 「ほうか。腹は、空いとらんか?」 「ああ。空いてねえ」 辰馬に背を向けて、高杉は再びごろりと横になった。 拒絶する様な背中に辰馬はボリボリと頭を掻く。 「高杉」 優しい声で彼の名前を呼ぶと、不意に辰馬は彼を抱締めた。 いきなり体温に包まれた高杉は驚いたのか、びくりと震えた。 抵抗するように高杉が身じろぐが、辰馬は構わずぎゅっと彼を抱締めた。 「おんしは優しい男じゃき、悲しいんじゃろう?」 「俺は、優しくなんてねぇよ……」 「いや、優しい。だから、そんなにも苦しむ。 でもおんしは、自分には厳しい。ちくっと自分にも優しくなるぜよ。 仲間が減れば悲しい。泣いてもええ。堪えんと人前で泣いて誰かに頼れ」 「う……クッ……」 キュッと高杉は唇を噛みしめる。 雪崩るように高杉の華奢な身体が辰馬の胸の中に落ちた。 細い肩が小刻みに震えている。 辰馬は高杉の頬に手を添えると、その唇を塞いだ。 高杉の筋肉質だが細長い腕が辰馬の首に絡み付く。 辰馬から唇を離して、高杉が言った。 「抱けよ、辰馬。無茶苦茶にしてくれ―…」 「ああ。わしに預けるぜよ、高杉。おんしの荷、背負ってやる」 高杉の着物を脱がせると、辰馬は奥まった秘所に唾液で濡らした指を 一本ゆっくりと埋め込んだ。 「う……ッ」 「すまん、痛かったか?」 「だい、じょうぶだ。いいから、早く慣らせよ」 「おう、解ったぜよ」 苦笑を浮かべながら、辰馬は眉根を寄せる高杉のナカを解すように指を動かす。 しこりをクの字に引っ掻くと、高杉は足の指を丸めて 身体を張り詰めさせた。 「ふっ、くぅ……あっ」 「おお、濡れてきたな。どうじゃ?気持ちイイか?」 「アッ……、う、はぁ。も、いい。挿れろ」 辰馬の手を掴んで指を抜かせると、 高杉は胡坐を掻いている辰馬の太腿に座って青い瞳を見上げた。 辰馬は高杉の腰を掴んで抱き上げると、 天を向いた自分の中心へとゆっくりと高杉を降ろす。 高杉は座位で辰馬の雄をゆっくりと飲み込む。 大きくて太い辰馬に圧し開かれる感覚に、高杉はぶるりと震えた。 「んっ、あぐ、ああぁっ」 「く、大丈夫か?キツくないがか?」 歯を食いしばりながら、高杉は首をふるふると横に振った。 辰馬の肉棒を全て飲み込むと、自ら腰をゆり動かした。 「くはっ、ンンッ、アッ」 「動かすぜよ、高杉」 「う……んぁ はっ アァ」 辰馬は高杉の腰を持ち上げてゆっくり自身を引き抜くと、 今度は勢いよく腰を落とさせるのを繰り返した。 その度にジュブジュブと猥雑な音が響く。 激しく腸壁が擦り上げられる度、脳天を貫くような快感に犯される。 辰馬に突き上げられながら、高杉は辰馬の肩に顔を埋めた。 額に浮かんだ汗がポタポタと滑り落ちて布団を濡らした。 抜き差しする辰馬の動きに合わせて、高杉は自ら淫らに腰を振った。 意識が飛びそうな程の快楽の波に沈んでいく。 「アアアァァァッ、うあぁぁぁっ」 高杉の唇から、嬌声とも叫びともつかない咆哮が零れた。 涎を垂らしながら叫ぶ高杉から、辰馬の肩口にぽたりぽたりと雫が零れる。 それが汗なのか涙なのか、高杉の顔が見えない辰馬には判断できなかった。 どっちだっていい。 何もかも忘れて、高杉が行為に溺れられるように辰馬は 激しく腰を打ちつけ続けた。 一際大きく痙攣すると、高杉は呻き声を上げてイッた。 ぐったりと倒れ込んでくる高杉の身体を抱き止めながら、 辰馬も布団へと雪崩た。 辰馬は汗ばんでしっとりした高杉の身体を抱き締める。 気絶して眠ってしまった彼に寄り添い、辰馬もまた眠りに就いた。 高杉は夕食の場に現れなかった。 それどころか、彼を呼びに行った辰馬も戻ってこない。 「まったく、手のかかる奴らだ」 食事を終えて茶を飲んでいた桂は溜息を吐きながら立ち上がった。 片付けを自分の部下に頼むと、桂は高杉の部屋に赴いた。 部屋の前に辰と、衣擦れの音や荒い吐息が聞こえてくる。 なんだか嫌な予感がして、桂は気配を絶って襖に耳を押し宛てた。 すると、色っぽいが喘ぎ声が聞こえた。 まさか、そんな筈はない。 一瞬過ぎった考えを打ち消しつつ、桂はそっと襖を開けて中を覗いた。 乱れた布団の上、座位で絡み合う男の肉体が闇に浮かぶ。 乱れる黒髪、はらりと散る汗、苦しげに寄せられた眉根。 そこには、今まで見たことのない高杉がいた。 辰馬に跨り、自ら淫らに腰を振って喘ぐ一匹の獣の様な姿に、 桂はぎょっとした。 あのストイックな高杉があんな風に乱れるなんて。 自分の知らない顔を晒す高杉が憎くもあり、恋しくもあった。 見ていたいようなこれ以上見たくない様な……。 自分でもどちらかわからないまま、結局行為が終わるまで桂は それを見詰めていた。 咆哮にも似た叫び声を上げて、高杉はフツリと糸が切れた操り人形の ように辰馬の腕の中に倒れ込んだ。 それを受け止める辰馬はいつもの能天気ぶりが嘘のように真剣で、 男らしい顔つきだった。 愛おしげに高杉を抱き寄せて、その首筋に口付けている。 そっと倒れ込んだ高杉を辰馬が布団に横たえて添い寝していた。 仰向けに寝かされた高杉の頬には、涙の痕がうっすらと残っていた。 辰馬に気付かれないようにそっと襖を閉めると、 桂は足音を忍ばせてその場を去った。 辰馬と高杉の情事を目撃した翌日、 二人は普段と全く変わった様子などなく、普通に過ごしていた。 辰馬が時折高杉に構い、高杉が鬱陶しそうにそれをスルーする。 恋人同士のような甘い雰囲気はない。 だとしたら、昨日の晩のあれは一体何だったのだろうと桂は首を捻る。 「どうした?ヅラ。変な顔して」 不審げに高杉と辰馬を見詰める桂に、銀時が眠たげな顔で尋ねた。 「ああ、銀時か。いや、坂本と高杉は恋仲なのかと思ってな」 「はあ?オマエ、とうとう頭までやられちまったか? 辰馬と高杉って、どんな組み合わせだよ。ヤロー同士じゃねえか。 それによ、高杉が辰馬なんか好きなわけねえじゃん。 いっつも辰馬に腹立ててるし、デカイのとチビじゃ釣り合わねえよ」 「いや、男女仲ならデカいのとチビでちょうどいいだろ」 「あ、まーそうか。でも、高杉と辰馬が付き合ってるなんて話、 聞いた事ねえよ。もし本当に付き合ってるなら、高杉はまあ隠そうと するだろうけど、辰馬だったらぜったい“ワシの嫁じゃ”とか 隊員にニコニコしながら触れまわりそうだし、イチャイチャするだろうが」 「言われてみれば、そうだな。坂本ならば自己主張しそうだ」 「だろ。で、なんでそんな風に思っちゃったワケ?」 「いや、それは……」 銀時の紅い瞳がじっと探るように桂を見詰めた。 その瞳が冷たく思えて、桂はぎょっとした。 まるで銀時が敵を見る目で自分を見ている気がしたからだ。 「いや、そういう夢を見てな。現実とごっちゃになった」 「ふーん、そ。そりゃまたとんでもねえ悪夢見たな、ヅラ」 「ああ、本当にだな。ウンウン、早く忘れよう。ハハハ」 不自然に会話を切り上げると、桂は刀の手入れを始めた。 手入れをしながら、桂は高杉のことを考えていた。 辰馬と恋人同士でないのは、坂本と一番仲がいい 銀時が言うからには確かだろう。 だとしたら、高杉はどうして辰馬に抱かれていたのだろう。 あの場面を思い出す度に、胸が熱くなった。 白刃に映る自分の顔があまりに情けなくて、溜息が出る。 刀の手入れもそこそこに、桂は立ち上がってその場を離れて行った。 高杉に辰馬とのことを聞こうか聞かないでおこうか。 あれこれ考えた結果、桂は聞く事にした。 高杉は昼飯を食べて部屋に戻って休んでいると鬼兵隊の三郎に聞いて、 桂は高杉の部屋に向かった。 また、辰馬との睦み合いに遭遇したらと思うと気が滅入る。 何となく足音を忍ばせて、高杉の部屋の前に立った。 昨夜の様に、襖にそっと耳を押し当ててみる。 すると、啜り泣く様な音が漏れてきた。 耳を済ませて聞いていると、「先生」と呟く声が聞こえてくる。 静かに襖を開けてみると、高杉が教本に縋って歯を喰いしばってるのが見えた。 震える肩。涙は落ちてはいなかったが、泣いているような姿だった。 「っ、誰だっ!」 僅かな視線に気付いたのか、高杉がハッとしたようにこちらを振り返った。 高杉の瞳は桂の姿を映し出すと、バツが悪そうに伏せられる。 「なんだ、ヅラか。何の用だ。出ていけ」 「何用か聞いて即行出て行けとはどういう理屈だ、高杉」 「うるせえ。てめの説教を聞くつもりも、会話するつもりもないんだよ」 「そう言うな、俺には話したい事があるんだ」 威嚇する猫の様な瞳を向ける高杉に溜息を吐くと、 桂は無断で部屋の中に入って高杉の前に座った。 「何だよ、桂」 「いや、久しぶりにお前とゆっくり話したいと思ってな、高杉」 「ふん」 「それは、先生の教本か。懐かしいな」 「別に、暇だったからなんとなく眺めていただけだ」 「そうか……」 桂と高杉の間に奇妙な沈黙が流れる。 早く出て行けと言いたげに高杉が顔を背ける。 桂は溜息を吐いてから立ち上がると、背後から高杉を抱締めた。 腕の中で、高杉の身体がびくりと震える。 「は、なせ……よ、桂」 「離さん。お前とちゃんと話をするまではな」 「話をするって、なんのだよ?」 「高杉、お前、夕食も取らずに昨晩何をしていた?」 「別に、何も……戦で疲れて寝ていた」 「本当にそうか?」 「本当だ」 「嘘を吐くな、坂本といただろう」 高杉の肩がピクリと反応した。 高杉は前を向いたまま、睨むように視線だけで桂を見た。 「坂本と、何をしていたんだ?」 「はっ、白々しい。見たんだろ、ヅラ。だったら聞く事ねえだろ。 言わせたいなら言ってやる。奴と寝た。満足か?」 自棄になったように、あるいは嘲笑するように高杉が吐き捨てる。 言葉ではっきり聞くと、胸が一層痛かった。 嫉妬でギリギリと胃を締め付けられ、今すぐに高杉を押し倒して 犯したい衝動に駆られるが、桂はぐっとそれを堪える。 「どうして、坂本と寝た?」 「別に、理由はねえ。溜まったから」 「その相手は、俺では駄目だったのか?」 ゆっくりと桂が尋ねると、高杉が驚いた様に振り返った。 珍しく驚愕したように見開いた瞳がじっと桂を映す。 桂は高杉の頬に手を添えると、覗き込むように暗緑色の瞳を見詰めた。 「高杉、俺なら松陽先生とのことも分かち合える。 この前も言ったが、辛いなら俺に話してくれぬか、高杉。 俺はお前の苦しみを分かち合いたいのだ。 お前が他の男に抱かれるのを見るのは御免こうむりたい。俺にしろ」 肩を掴んで、そっと畳に高杉を押し倒した。 唇を重ねると、柔らかな唇を食んで舌で高杉の唇の割れ目をつつく。 「ンッ……か、つ……ら……」 抵抗するように閉じていた唇が開くと、桂は中に舌を差しいれた。 高杉の腰帯を解いて胸を愛撫すると、 熱い吐息を漏らして高杉はびくびくと悶えた。 「ふっ……ぅ」 ねっとりと舌を絡め合いながら、滑らかな肌を弄るように手を動かす。 自分よりも細い高杉の腰を撫で上げると、 高杉は腰を反らせてぎゅっと瞳を閉じた。 「大丈夫だ、俺はこう見えても慣れているからな。痛くはせん」 唇を離して甘く囁くと、高杉は珍しく頬を赤く染めた。 可愛らしい表情に、桂は笑みを零す。 真白い褌に手をかけ、そっと外そうとすると高杉の手がそれを制した。 「ばか、やめ、ろ。お前とは……」 「寝たくないとはいうなよ、言ってもやめるつもりはない」 「な、んで……だよ?」 「何故って、高杉、お前が好きだからだろう。 好きな者と肌を合わせたいのは自然な摂理だ。妙な事ではあるまい」 「は、お前が、俺を好き―…?」 幼かった頃のようにきょとんとする高杉の額に口付けると、 桂は褌を抜き去って高杉の中心に触れた。 「くっ、ぅあ」 緩く高杉の竿を擦り上げると高杉は畳に爪を立て、震えた。 とぷりと先端から透明な蜜を滴らせ、高杉は喘ぎ声を漏らす。 桂は自分も着物を肌蹴て褌を脱ぐと、 既に少し硬くなった自分の雄を高杉の雄に擦りつけながら、 さらに手のひらで高杉のソレを刺激した。 「アァッ、だめ、だ。そんなんされたら…っ ァッ!」 激しく痙攣して、高杉はコプリと精子を吐き出した。 それを指で掬いあげると、桂は高杉の菊座をゆるゆると刺激した。 赤くなったソコが桂の指にひくりと反応する。 強請られている気がして、桂は思わず笑みを零した。 傷付けないように慎重に指を埋め込み、蠢かす。 「ンンッ うぁっ はっ はぁ」 「熱いな、お前の中は。どうだ?痛くは無いか?」 「い、ちいち聞くな、ウザいっ」 「ウザくない。お前に傷など負わせたくないからな」 「ふっ うぁ、だい、じょうぶだ」 「そうか、よかった」 指をもう一本さし入れると、桂は抜き差しを繰り返した。 指に吸いつくように肉壁が蠕動し、湿った音を立てる。 充分に湿ったのを確認すると、桂は指を引き抜いて高杉の足を大きく開いた。 濡れた亀頭を宛がうと、ゆっくりと高杉の中に腰を静めた。 「ぁっ! ううっ ふうぅ」 ゆっくり侵入していくと、高杉は切なげに眉根を寄せた。 その顔の美しさに、思わず桂は見惚れる。 「ウッ たか、すぎ。キツキツだな、お前の中は」 「ばっ、か。当たり前だろっ、ケツなんだから狭いに決まってる」 「そうだな。熟女のアソコとはやはり一味違う。若いのもいいな」 「なっ、その真面目そうなツラして、お前どんだけ遊んでんだ」 「嫉妬か、嬉しいぞ高杉。お前が望むなら、二度と女は抱かぬ」 「っ!!ばか、死ねヅラっ、誰が望むか、あぁっ」 恥かしくて顔を隠そうとする高杉の手を優しく掴み、 桂はぎゅっと指と指を絡めた。 汗ばんだ肌と肌を合わせながら激しく腰を振って快楽を求める。 初めは戸惑うようだった高杉の細い指が絡みつき、握ってくる。 「あァッ か、つら、イアァッ」 「たかすぎ、くっ、うぅ たかすぎ」 互いの名前を呼び合いながら、桂と高杉は共に果てた。 ナカに精液を注ぎ込むと、桂はゆっくりと高杉から雄を引き抜いた。 疲れ切った高杉の身体を抱き寄せて、ナカに出した精液を掻きだしてやる。 眠たそうな高杉を抱き寄せて背中を擦ると、 幼い顔をして高杉は眠ってしまった。 日差しが傾き、オレンジ色の光が障子越しに部屋を照らす。 高杉はゆっくりと目を覚ました。 自分を抱き込んだまま眠る桂を見ると、高杉は苦々しい顔をする。 桂はこんな関係になるまいと思っていたのに、情けない。 一番古くからの馴染みとまで関係をもった自分を呪いたい気分だった。 腕の中からはい出そうとしたが、 ぐっすり眠る桂を起こすのも忍びなく高杉はそのままでいた。 白い障子が夕陽に紅く染め上げられていく。 もうじき、光は消えて夜の闇が訪れるだろう。 「たく、俺も銀時と変わりゃしねぇな……」 銀時に辰馬、そして桂。 二日で三人と肉体関係を持つとは本当にとんだアバズレだ。 全ては戦の熱が引き起こしたことだ。 自分を好きだなどとのたまった桂も、戦明けに獣のように交わった銀時も、 荷物を預けろと優しく抱いてきた辰馬も、そして、弱さを晒す自分も。 みんな、みんな熱病に犯されているのだ。 血の様な赤い夕陽を、暗緑色の瞳が恨めしげに眺めていた。 --あとがき---------- アオ様、リクエストありがとうございました。 完成が遅くなってしまってすみません(汗) 銀高もいいけど、坂高、桂高も最高ですよね♪ もっと坂本と桂と銀さんが絡んでいるシーンも書ければよかったのですが、 力不足で、高杉と絡んでいるシーンが殆どになってしまいました。 桂高って少ないけどいいCPですよね、一番古い馴染み同士ですし。 桂は銀さんと比べると女っぽいですが、高杉と比べると意外とムサい気がします。 楽しんで読んで頂ければ幸いです♪ リクエスト、本当にありがとうございましたvv |