「散美華2」





空気の凍える霜月。吐き出す吐息が白く宙をさ迷う。
上杉との戦を経て、幸村は真田隊を率いて寂しい峠道を歩いていた。
その途中で不穏な音を聞き、幸村は足を止める。

「旦那、不味いよ。嫌なお客さんが来たようだ」
「ああ、俺にも聞こえたぞ、佐助。
 それに僅かながら気配を感じる。この感じは伊達政宗…」
「流石は旦那、ご名答。ちょっくら俺様が足止めしてくるわ」
「一人でか?ならぬ!俺も共に参る!」
「馬鹿言ってんじゃないよ!アンタは兵を本隊へ送り届けろ!俺様が食い止めるから」
「だが、佐助っ」
「着いてくるな!アンタは死んじゃいけないお人なんだよ」
「お前だって死んではならぬ!だから…」
「いい加減解れ、旦那。俺様は忍だ。道具だよ。
 替えはいくらでも利く。でもアンタは駄目だ。解るな?」

厳しい瞳に睨み据えられ、幸村はしょんぼりした顔になる。
すると佐助は優しい笑みを浮かべた。

「俺様は必ず戻る、行ってくれ旦那」

その言葉を聞くと唇を噛み締め、幸村は佐助に背を向けた。

「あいわかった。佐助、必ず戻れ!」
「了解っと。じゃあな」

幸村が隊を率いて本陣へ向かうのを確認すると、
今しがた来た道を引き返して、佐助は音の方へ走った。

少人数ではあるが、やはり蹄の音は伊達軍のものだったらしい。
伊達政宗とその右目たる男・片倉小十郎、そして七名の若い部下が揃っていた。

みな戦装束に身を包んではいるが進軍という体ではない。
弓矢や麻縄、投網を手にしており、山狩りといった風だ。

このまま身を潜めた方がいいだろうか。
そう判断するには、余りにも伊達軍は真田隊に正確に迫り過ぎている。
このスピードだと、間違いなく戦で疲れた真田隊の馬達では半刻もあれば追い付かれるだろう。

佐助がどう足止めするか思案していると、小十郎が馬を止めて刀を抜いた。

「いるんだろう、真田の忍出てきやがれ」

伊達軍を木々に紛れて観察していた佐助は眉根を寄せる。

「出てこねぇならこのままてめぇの主に追い付くぞ」

小十郎の言葉に伊達軍を見下ろしていた佐助は肩を竦めた。
さすがは伊達の懐刀といったところか。
正確な位置は掴めていないようだが、はったりではなく佐助の存在に気付いているようだ。

「しょうがないね」

佐助は苦難を取り出し、伊達軍の目掛けて投げた。
小十郎がいち早くそれを察知し、全て払い落とす。

「出てこい、猿飛。主を守るのに残ったんだろう」
「…何が目的だい。独眼竜ともあろうものが、不意打ちでもしようっての?」
「ハッ!現れやがったな猿。安心しな、何も不意打ちしようなんざ考えてね」
「ふぅん、じゃあ何が目的なわけ?」
「さあな。御託はなしだ。アンタに許されてるのは精一杯オレ達を足止めして、
 主の真田幸村を守ることだけだぜ。せいぜい気張りな」

歯に衣着せない政宗の物言いに佐助は内心苛立つが、
涼しげな顔で巨大な手裏剣を構えると彼らを見据えた。

「タダでは通さないよ。俺様も本気を出させてもらうぜ」

そう告げた瞬間、顔からは何時もの飄々とした笑みが消えていた。
言葉を合図とばかりに佐助の苛烈な攻撃が伊達軍を襲う。
それを守るように政宗と小十郎のタッグが前に立ち、佐助に刃を向けた。

「くっ……」

歯噛みし、佐助は表情を曇らせる。
流石に双竜揃い踏みともなると戦って勝つのは困難を極めた。
ましてや自分は先程の戦で体力も消耗している。
この場に彼らを留めるのさえも難しい状況だ。
それでも、何を企んでいるか知れない連中を疲れている幸村の元へ辿り着かせるのは避けたい。
せめて、幸村が真田隊を引き連れて信玄と合流するまでは持たせないと。
狩りを楽しむかの表情で襲いかかって来る政宗と、
渋い顔で政宗の余興染みた戦に付き合う小十郎を相手に、佐助は奮戦した。

煙玉や苦無を使ってその場に奥州伊達軍を留めること十数分。
佐助は政宗の太刀を浴びて膝を付いた。

(いいさ、これだけの時間を稼げば何とか旦那も本隊へ合流できる―…)

ヘラリと笑むと、佐助は木に凭れた。
舌を噛んで死のうか、首を苦無でかっ切るか。
どちらが自分に相応しいだろうかなどと思考を巡らせ、苦無での自決を選んだ。
だが、苦無を懐から取った瞬間に小十郎に回り込まれ、羽交い締めにされた。
不味いと思い、今度は舌を噛み切ろうとしたが、政宗に鞘を噛まされて阻止される。

もしかして、狙いは自分を捕える事だったのだろうか。
そう気付いた途端、佐助の背筋を冷たい汗が流れた。

自分を捕えることの目的は一つ、真田幸村をおびき出す事だ。
幸村の見過ごせない性格をよく知る政宗。
政宗から幸村へ何度も寄越された変態まがいの文。
そして数日前には、幸村を呼び出し手を出した。
そう、政宗は自分と同じ穴の狢。幸村に焦がれる愚かな男だ。
最悪の事態に佐助は悔し気に眉間に皺を寄せた。
小十郎の腕の力は非常に強く、体術に優れた佐助でも解けない。
そのまま只、麻縄で縛られるより他はなかった。
頭の良い小十郎は忍の自分と言えど逃げられない様に頑丈に、
幾重にも自分を縛ると、少し同情した様な目を向けながら
政宗の鞘の代わりに猿轡を佐助に噛ませた。
縛り上げられ、抵抗一つできなくなった佐助を政宗は冷笑を浮かべて見た。
それに対し、佐助は睨み殺さんばかりの瞳を彼に向ける。

(この俺様が掴まるなんて……とんだヘマだ。死なせてくれ―…)

そう願うが、政宗も小十郎も佐助を死なせる気など更々なさそうだ。
政宗が佐助から離れて文を鷹に結び付けていた。
その様子を見ながら何とか死ぬ算段をするが良い案はなかった。
そんな佐助の耳傍で、小十郎が低い声で静かに囁く。

「すまねぇ猿飛。だが、政宗様は欲しいものは必ず手に入れる。
 なに、殺そうってんじゃねぇ。飽きたらちゃんと返すさ。
 我慢しろ。てめぇの真田への忠義は解っている。悔しいだろうが堪えろ。
 政宗様が政務も手に付かねぇ状態なのは困るんでな」

小十郎の苦労は解る。だが、身勝手な言い分だ。
しかし、敵と味方である以上こういう状況になっても文句は言えない。
佐助はただ、祈るしかなかった。
幸村が政宗との交渉に応じない事、自分を探しに来ない事を。
それは自分の死を意味する事だが、そんな事はどうでもよかった。
あの純情な主を穢されたくなかった。
忍としての忠義じゃない。ただ、一人の男として―…



佐助の願いも虚しく、一つの馬の蹄の音が佐助の耳に聞こえていた。
軽快な疾風のような足音。間違いない。幸村の馬の駆ける音だった。
音はまっすぐ自分達の方へと近付いて来ていた。
佐助の心の中には自分の為に幸村がやってきたことへの喜びなど一切なく、
自分の不甲斐なさと幸村の優しさに対する怒り、
この先に待ちうける凄惨な時への惧れと悲憤だけが胸を真っ黒に染めていた。

「伊逹政宗殿。真田源次郎幸村、馳せ参じた!」

手紙を握り締めた幸村が、鬼気迫る顔で政宗の前に降り立った。
政宗は愉快そうな顔で幸村を見詰める。

「お疲れの所、悪かったな。ちゃんと一人で来てくれて助かるぜ」
「いえ。それより、佐助を返して下さらぬか?」
「OK,OK!だが、条件がある」
「何でも呑みまする。ただし、天下もお館様の首も差し出せぬ。
 某が差し上げられるものに限り、なんでも用意致す。それでよろしいか?」
「当然だ。天下はオレが自分の手で取る。もらうものじゃあねぇ」
「では、貴殿は何を望まれる?貴殿は某の好敵手。よもや、汚い真似はせぬと信じている」
「嬉しいねぇ。当然だ。アンタの首ならいらねぇぜ。それはオレの手で討る」
「では、何をお望みか?」
「場所を変えよう。立ち話もなんだしな。オレの城へ招待するぜ」
「解り申した。行きましょう」

大人しく政宗の後に付き添い、幸村は彼の城へ向かった。
捕えられた佐助が自分を睨むのに気付いた幸村は苦笑を浮かべる。

「真田隊はちゃんと本隊と合流した。みな無事城に辿り着ける」
“俺様が聞きたいのはそんな事じゃない”
「お前だけ置き去りで帰るなどできぬ。
 お前のおかげで皆は無事だった。俺は勝手に来た。気に病むな」
“俺様なんて、ただの道具。見捨てたらいいのに―…”
「そう言うな。俺の大切な友だ」

佐助は声など出せる状態じゃなかったが、
幸村は佐助の目を見ていれば彼が何を言わんとしているか解った。
伊達軍は幸村が一人事を言っていたようにしか聞こえてないが、
幸村と佐助はちゃんと会話していた。
それが解ると政宗は二人の絆を思い知らされた様で密かに腹を煮やした。

伊逹の城には客人として招かれた。
佐助は地下に捕えられ、小十郎が見張りとして付き
逃げる事はおろか死ぬこともできない状態が続いていた。

そんな佐助の前に、幸村が政宗に連れられてやってきた。
酒宴に呼ばれたのか白い頬を上気させ、瞳を少し潤ませた状態だった。

「よお猿。よく見とけよ。OK?」

そう言うと、政宗は佐助の目の前で幸村を押し倒した。
押し倒された幸村は赤らめていた顔を青褪めさせ、政宗を引き剥がそうとした。

「ま、政宗殿っ!何をっ!?」
「Hey!暴れるなよ、真田。可愛い部下を怪我させたくねぇだろ?」

政宗がそう言った途端、幸村はハッとして手の力を抜いた。
政宗から顔を反らすと佐助と瞳が合った。
恥じ入るような顔で、幸村は慌てて瞳を伏せた。
その顔が、佐助の胸を締め付ける。

「幸村、折角だから楽しみな。手管は抜群だぜ?」

するりと政宗の手が胸元に滑り込み、幸村の胸をまさぐった。
声を押し殺ろし、くぐもった声を幸村は漏らす。
そうやって抵抗されるほどに政宗は煽られ、
引き結んだふっくらした唇から嬌声を上げさせようと手を蠢めかす。

「ふっ……ぁっ!」
「我慢するな、オレに委ねちまいな」
「いあっ、んんっ」

一気に胸元を肌蹴させると政宗は幸村の乳首を舌で転がす。
ぞくりと背筋を快感が走り抜け、幸村は背を反らした。
その反応を楽しむように政宗は桜色の突起を口に含むと歯で噛んだり、
吸い上げたて刺激を与える。
その度に身体を震わせて、ぎゅっと目を瞑る幸村の反応を政宗は好ましく思った。

目の前で幸村を嬲られ、佐助は怒りに狂った瞳を政宗に向ける。
腕が引きちぎれてもかまわないというくらいの力で、縛り付けられた身体を動かす。
荒い麻縄に擦れた剥き出しの腕が擦れて、皮膚に血が滲んでいた。
それを見た幸村が、悲しげな表情になる。

「佐助よせっ!お、俺なら平気だ。だから、頼む―…」

涙目になる大きな瞳に縛り上げられた情けない自分の姿を映る。
佐助は反吐が出そうなのを堪えて、身体から力を抜いた。

目の前で幸村の服が脱がされ、白い肌が晒されていく。
そこに獣の様に喰らいつく独眼の男。
白い肌には鮮やかな赤い痕が次々と刻まれる。
悪夢のような光景に吐き気と眩暈を覚えながらも、
しっかり反応している自分に佐助は嫌気がさした。
醜い自分を責めるように、時折政宗の鋭い瞳が向けられた。
だが、その口元には勝ち誇った様な笑みが浮かんでいる。

「見られて興奮したのか、幸村。pureな顔に似合わず淫乱だな」

政宗が見せ付けるように、幸村の下帯びに手を入れた。
しっとりと湿ったそこに政宗が揶揄するような言葉を向けると、
幸村は羞恥に顔を赤らめる。

「あうっ、お、おやめくだされ、政宗殿っ」
「ここで止めたら辛いのはアンタだぜ。ぐっしょり濡れてんじゃねぇか」
「ひあぁぁっっ!」

竿を握り込まれて擦り上げられ、幸村は涎を枝垂らせる。
無防備に晒された喉に歯を立てながら、
政宗はグリグリと亀頭を刺激する。
電撃にも似た激しい刺激に幸村の背が弓なりになる。

「いあっ、キツッ、いやっ あぁぁっ!」
「いいぜ、もっと啼けよ。最高だぜ」
「ひぐぅっ!?うっ……あっ!!」

左手で幸村の雄を刺激しながら、政宗は幸村の肛門に指を突き入れた。
政宗の節だった長い指が無遠慮にナカを引っ掻き廻す。
拒否を示す心が身体に反映し、異物を出そうと腸内が狭まり蠕動する。
引き攣れる様な痛みに襲われて幸村は苦痛に顔を歪めた。
佐助は自分がそうされているかのように顔を歪め、再び暴れ出す。
政宗はそんな佐助に目を細め、口の端を吊り上げた。

「小十郎、猿の轡を解いてやんな」
「はっ。しかし、舌を噛み切って死ぬやもしれませぬぞ」
「No ploblem! 大丈夫だ、そんな真似させやしねぇさ。
 猿がそんな真似したら、真田幸村を五体満足では返さねえ」
「承知致しました」

溜め息を吐きながら小十郎は佐助の轡を取った。
佐助は鋭い瞳を政宗に向け、ぎりりと奥歯を噛みしめる。

「やめろ、この尺取り虫がっ!これ以上、俺様の主に手を出すと許さない!」
「Hum,いつもの取り澄ましたツラはどうした?化けの皮が剥がれてるぜ?」
「黙れ。アンタは……殺すよ」
「上等じゃねぇか。いつでも来な!ぶっ殺してやるぜ。
 だが、今はそこで指でも加えて主人が乱れる様でも拝んでな」

そう言うと同時に、政宗は指を激しく抜き差しし始めた。

「ぐううぅぅっ、あ゛っ、う゛あぁっ」

激しい痛みに、幸村は呻き声を上げる。
政宗の左手に擦り上げられる雄も痛みで少し萎えてしまっていた。

「やめろっ、やめろぉぉぉぉっっ!!」

喉が裂けんばかりに佐助が叫ぶ。その声が牢屋の静謐な空気をビリビリと揺らした。
獣のような慟哭を聞く政宗の瞳が、蒼く輝く。
煽るようにますます指の動きを速めると、幸村の額を脂汗が滴り落ちた。
柔らかな唇は噛みしめられ、薄らと血が滲んでいる。
赤を纏い、更に色づいた幸村の唇に、政宗の厚い唇が重ねられた。

「んんんっ、んうぅっ」

幸村の口からはくぐもった声が零れ落ちる。
柔らかな舌を絡め取るように政宗の舌が巻き付く。
下半身の痛みを和らげるように口腔を優しく犯され、幸村の腰が甘く疼いた。
痛みは次第に快楽を伴い始め、指がスムーズに出入りするようになった。
ずちゅずちゅと淫猥な音が響き、幸村は頬を羞恥に染めた。
政宗の指が胎内のしこりをぐりっと強く引っ掻いた。
途端、下半身に強い快感が沸き起こり、幸村の大きな瞳が見開かれた。

「あぁっ!?いあぁぁっっ」
「クククッ、イイ場所に当たったようだな、真田」
「ひぎぃっ、うっ、あぁぁっ ひぁぁっ」
「どうした?もっと声を聞かせな。その澄んだ声で囀ってみせな!」

頭を振る幸村に構わず、政宗の指がぐりぐりと突起を押し潰す。
佐助の前で他の男に乱されるのが嫌で、幸村は必死に歯を食いしばった。
だが、敏感な部分を執拗に攻められ、声を殺しきれずに女々しい声が零れる。
もっと強く、固いもので突き上げられたいという醜悪な欲望が擡げ、
頭がぼんやりとし始めていた。
それでも目の前に捕えられた佐助がいると思うと快楽に溺れることは出来なかった。

「ひぅっ、だ、てどの……、も、お止め、くだされ」
「Ah?まだオレが良くなってねぇだろうが。やめねぇぜ?
 だがそろそろマジで指だけじゃ足りなくなってきたよな。いいぜ、やるよ」

政宗は自らの着物の帯を解くと、褌から自分の猛った雄を取り出した。
身長は佐助よりも小柄だが、摩羅の太さは佐助を凌ぐもので、
凶悪な黒いその雄に、幸村は恐怖した。

「伊逹、殿……、何をする気でござるか―…?」

顔を青褪めさせ、震える幸村にジリジリと政宗が迫る。
短い前髪を掴むと幸村を地面にねじ伏せ、後ろから圧し掛かった。
佐助とは違う、肉厚のある重み。
身長は自分より数センチ大きいだけである政宗の体格はがっちりとしていて、
後ろから圧し掛かられてしまえば抵抗は困難だった。
力強い腕に腰を掴まれると幸村の恐怖は更に増す。
菊座に固く熱い亀頭が押し宛てられると、幸村は叫びを上げた。
佐助の前で他の男に犯されるのは、この上ない屈辱だった。

「ご、後生でござるっ、おやめ下され、伊逹殿っ!!」
「いいね〜。嫌がるのを無理やりってのも嫌いじゃあねぇ。
 それにいつも強いアンタの泣き顔、それだけでゾクゾクするぜ」
「いやだ、いやだっ!ああぁっ、うあぁぁっぁぁぁっっ!!!」

泣き声になる幸村の事など知らないとばかりに、
政宗は無情にも自分の一物を幸村の中にめり込ませた。
解れてはいたが、緊張で少し閉ざされた入り口はメリメリと嫌な音を立て、
皮膚が裂けて血が滲んだ。
だが、政宗は構わず自分の楔を幸村のナカへ打ち込むと、
尻たぶに勢いよく自分の腰をうちつけた。
固くて太い政宗の肉棒が幸村の襞を激しく擦り、奥を突き上げ幸村はビクビクと痙攣した。

「ひっ、あっ あぁっ、うぁ」
「つっ、いいねぇ。最高の締まり具合だ。オレの知る中では一番の名器だぜ」
「あぁっ、さ、すけぇっ。み、るなっ、たの…む」
「Ah-Ha?他の男の名を呼ぶたぁ余裕だな。もっと激しいのがお好みか?」
「あああぁぁっ、あぐっ、ひぁぁっ」

ジュブジュブと結合部が音を立て、パンパンと肉が打たれる音が響いた。
音に合わせ、幸村の口からも言葉にならない淫靡な音が漏れる。

「ああぁぁっ」
「イけよ、真田幸村ぁっ、我慢なんざすんじゃねぇ」
「ひぃぁぁぁっ あうぁぁぁぁっ!!」

幸村は大きく仰け反ると、勢いよく精液をぶちまけた。
ぐったりと身体から力が抜けても政宗は幸村を離さず、
すぐに腰を激しく振って幸村を責め立てる。
拷問にも似た激しい快楽に抵抗する術も無く、
幸村は何度も精を吐き出させられていた。
また、幸村の尻穴からは政宗の放った白濁液がゴブリと零れていた。
獣じみた男は、自分が射精しても飽く事もなく、何度も交尾を続けていた。


それを見せ付かられる佐助の瞳は血色に染まりつつあった。
ぎりぎりと噛みしめた唇の端からは血が流れている。

「旦那っ……くっ、そ―…」

なすすべなく、自分の大切な人が犯される様を見ているしか出来なかった。
憎しみが視界を染め上げる。
愉悦と悲しみに歪む幸村の顔。それを満足げに犯す憎い、敵将の顔。
憐れむ様な瞳をむける敵将の右目。
全てが醜悪で、何もかもがただの悪夢だったらと佐助は願った。


翌朝、白濁液に塗れ、身体中に情交の痕を残された状態で幸村は解放された。
佐助も麻縄から解かれ、ぐったりとした幸村の身体を抱き寄せる。

この場で幸村以外の全ての人間を殺したくなった。
だが、ここで政宗に飛び掛かっても幸村の命を危険に晒すだけだった。
憎しみを心に止め、佐助は幸村を連れて黙って立ち去る他なかった。

「満足か?独眼竜。アンタのちゃちな征服欲は満たされた?
 可哀相だね。こんな形でしか好きな人に触れられないなんて」
「Ha!負け惜しみか?目の前で主を取って喰われた
 忍の遠吠えなんて、オレの耳には届かねぇ。可哀相なのはテメェだろうが。
 好きな人を守るどころか守られ、目の前で傷付けられた。ご愁傷様だぜ」

政宗の言葉に返す言葉がなかった。
好敵手と認めた相手に下劣な、こんな酷い仕打ちをした男に
責められる謂われなどなかったが、
自分の失態が重く胸に圧し掛かって何も言えなかった。

「いつか、ぶっ殺すから。せいぜい首、洗ってなよ」

そういうと、佐助は幸村を抱締めて夜の帳が下りた闇の世界へ消えた。
不気味な鴉の声が響く闇の道を佐助は無言で歩いた。
腕の中に眠る愛しい、大切な人。
肌蹴た着物の隙間から覗く赤い痕が目を灼く。
散った薔薇の花弁のような紅。
燃える様なその色を、佐助は初めて憎いと感じた。





--あとがき----------

三角関係を狙ったつもりが、政宗が鬼畜なだけの話しになったという(笑)