桜の花がひらひらと舞い散る。 澄んだ青空を淡いピンク色が彩る。 入学式を終えた万斉はブラブラと校庭を歩いていた。 青いシャツにサングラス。およそ新入生とは思えない井出達だ。 周りの生徒は新品の学ランを面白みもなくきっちりと着こなしていた。 誰も彼もが一様の表情を浮かべ、一様の服装をしている。 退屈な学校生活になりそうだ。と、万斉は溜息を吐く。 べつにつっぱっているわけではないが、 自分が気に入らない奴らとは付き合う気なんてない。 そんなスタンスと、マイペースな性格も相俟って万斉は常に一匹狼だった。 だが、それでいい。退屈も面倒も御免だった。 ぐるりと校舎を見て回ると、万斉はようやく教室へ向かった。 すでに、他に残っている生徒は居ない。 当然だ。入学式が終わったらみんな速やかに教室へ向かったのだから。 ホームルームはもう始まっているだろう。 教室に向かわずこんなとこにいるのは自分くらいのものだ。 シンとした校庭をゆっくりとした足取りで歩いた。 誰もいない。そう思い込んでいたが、校門の近くの大きな桜の下、 一人佇む人影を見つけた。 黒いサラサラの髪、ボタンを閉めずに来た学ランから 覗くシャツはダークレッド。 背は低いが、足がスラリと長くスタイル抜群の男だった。 自分の気配に気付き、男がゆっくりと振り返る。 その鮮烈な眼差しに射抜かれて、万斉は動く事も声を出す事もできなかった。 艶々とした唇。美しい暗緑色の瞳。通った鼻梁。 女性かと思うくらい繊細で端正な美貌から目が離せずに居た。 「酔狂な男がここにも一人、か」 万斉が無言で見詰めていると、 黒髪の男は可笑しそうに喉の奥でクツクツと笑い声を上げた。 透き通った耳触りのよい綺麗な声。 よく見ると、男の左目は白い眼帯に覆われていた。 「ああ、退屈だったのでな。ぬしは、何故教室に行かんのだ?」 「別に。ただ、桜が呼ぶから。綺麗だろう?一年で僅かな期間しか咲かねぇが、 その儚さもまた美しい。学校はクソつまらねぇが、ここの桜は立派だな」 「ふむ、風流を好むか。ぬし、名前は?」 「名前ねぇ。そういうてめぇは誰だ?」 「これは失礼。拙者、河上万斉と申す。して、ぬしは?」 「高杉晋助だ」 名前を名乗ると、晋助は踵を返してスタスタと去ってしまった。 万斉は暫くぼんやりと遠ざかる後ろ姿を眺めていた。 その姿が完全に見えなくなってから、万斉も桜の元を離れた。 「おせーぞ。新入早々に遅刻してんじゃねーよ。とっとと席に着け」 万斉が教室に戻ると、気だるそうな声に文句を言われた。 万斉は答えずに、教師が示した自分の席に着く。 担任は銀髪天然パーマの、坂田銀時というだるそうな顔をした男だ。 一年から三年までクラスも担任も持ち上がり式となっているから、 この先ずっと彼との付き合いが続く。 その中にさっき会った高杉晋助の姿を探すが、無かった。 がっかりした。だが、よく見ると席が一つ空いている。 もしかして、あの席に座るのは彼かもしれない。期待が胸を過った。 その予想は見事に当たっていた。 自分に遅れる事5分、高杉晋助は教室の前のドアを堂々と開けはなった。 「遅れてきた奴がどうどう正面から入場か?高杉」 銀時が声を掛けると、晋助はふっと妖艶に微笑んだ。 一言も発せず、空いていた一番後ろの席へ座る。 銀時は銀髪頭をがりがり掻いたが、何も言わずにホームルームを再会した。 その日から、万斉は常に晋助と共に行動するようになった。 晋助は自分を拒否する事も、喜んで迎える事もせず、 ただ静かに自分を受け入れていた。 いつの間にか、人が集まった。武市、来島、岡田。 いずれも周囲から何らかのズレを抱いた危険人物とも言える者が、 自ら喜んで晋助の下に着いた。 無条件に人が惹かれる光の様な存在だった。 外面の美しさだけではない。内面から奏でられる危うくも美しく寂しげな旋律。 それが、自分を、他の者を魅了してやまないのだろう。 晋助に惚れるまで時間はかからなかった。 時間がかからない、というよりは既に出逢った時から、一目見て惚れていた。 その気持ちに気付いたのが今になってから、というだけの話だ。 学校が終わり、帰宅部の晋助は鞄を持って立ち上がった。 帰ろうとする晋助の手を掴み、万斉はそれを引き止める。 「待て、晋助。少し拙者に付き合ってはくれぬか?」 「ああ、構わねぇよ。で、何をする気だ?」 「音楽準備室に行こう」 背中に背負っていたギターを掲げて見せると、晋助は笑った。 二人きりで音楽準備室へと入る。 適当にギターを引っ張り出してチューニングすると、晋助に差し出した。 それを受け取った晋助の前に腰掛けて、じっと彼が音を鳴らすのを待った。 晋助は一度瞳を閉じてから、弦を弾いた。 それに合わせて、万斉も弦を掻きならす。 一曲セッションしたあとで、万斉はギターを置いて晋助に近付いた。 壁に凭れて立つ晋助の前に跪くと、その手を取る。 綺麗な手に撫でるように触れてから手の甲に唇を落とした。 珍しく、晋助が年相応に驚いた表情を浮かべた。 初めて見る可愛らしい表情に、思わず口許が緩む。 「万斉……、なんのつもりだ……?」 少し恐る恐る問い掛けてくる晋助を、サングラスを外して万斉は見詰めた。 そして静かに告げる。 「晋助。ぬしに惚れた。拙者と付き合ってくれ」 ますます高杉は目を丸くした。 鋭く頭の切れる男だが、どうやら自分の気持ちには気付いていなかったらしい。 モテるし、女慣れしているように見えるが、 晋助は硬派でこの手のことには初心で疎いようだ。 普段の妖艶な笑みと今のあどけなさの残る顔。 そのギャップもまた、自分を魅了してやまない。 「付き合うって、寝惚けてるんじゃねーよ。俺は男だ」 「そのようなことは関係ござらぬ。愛に性別などござらん」 「いや、一週間ほどの付き合いしかねぇのに好きと言われても、な」 「愛することに時間は関係ない。拙者、ぬしに一目惚れでござる」 「……」 白い頬に朱が差していた。 伏せた瞳は揺れていて、動揺しているのが見て取れた。 感情を余りあらわさないクールな晋助が、珍しく感情を露わにしている。 そうさせているのが自分ということに、歪んだ優越感を持つ。 色良い返事は期待できそうにないが、まったく脈がないわけでもなさそうだ。 いや、仮に脈などなくても、諦めたりしない。 相手を想うのは自由だ。自分の気持ちは誰にも邪魔させない。 「返事はすぐにせずともよい。気長に待とう。 拙者とぬしの関係は好いた惚れたで壊れたりはせぬ。返事が可でも不可でも変わらぬ。 今まで通り、拙者はぬしと居る。まあ、例え良い返事でなくとも諦める気はないがな」 固まっている晋助の頬に触れ、ゆっくりと顔を近付けた。 細い肩がびくりと跳ねる。 その様にくすりと笑みを漏らすと、万斉は柔らかな頬にそっと口付けた。 「本当は唇を奪ってしまおうと思っていたが、今はこれで満足しておこう。ではな」 瞳を瞬たかせる晋助に微笑みかけると、サングラスを掛け直した。 ギターを背負うと、茫然としている晋助を置いて万斉は部屋を出ていった。 音楽準備室に一人残された晋助は、 脱力したようにずるずると壁に沿って座りこんだ。 ぎゅっと膝を抱え込んで、顔を埋める。 「酔狂だ酔狂だとは思っていたが、まさか此処まで酔狂とは―…」 ポツリと呟いた台詞が静かな部屋に響いた。 自分の顔が熱くなっているのに気付き、晋助は舌打ちを漏らす。 “気に入った”などと言って自分に着いてきた時から変わった奴だと思っていた。 近寄りがたい雰囲気を出しているのは自覚していたし、 孤高のつもりはないが、誰かとつるむ気はさらさらなかった。 昔から好んでずっと一人でいた。そんな自分を気に入ったと言って、 傍に居させてくれと言ってきただけでも驚いていた。 それなのに、今度は“好きだ”などと言い始めた。 万斉の唇が触れた手が、頬がじんじんと熱い。 心臓が早鐘を打っている。 「くそっ……なんで、こんな―…」 この動揺している姿を誰にも見られたくない。 となりの音楽室から聞こえ始めた音楽を聴きながら、目を閉じる。 このまま、顔の朱と心臓の音がひいていくまで此処にいよう。 そう思っていた矢先、誰かがガチャリとドアノブを揺らす。 びくりとして顔を上げた瞬間にドアが勢いよく開いた。 そこに立っていたのは、担任で国語担当の銀時だ。 「あれ、高杉じゃん。こんな所で何やってんだよ」 気だるそうな顔でズカズカ近付いてくる銀時から、晋助はフイと顔を反らす。 「別に」と小さく呟くと立ち上がって、銀時の横をすり抜けようとした。 だが、銀時に腕を掴まれて壁に押し戻される。 強く背中をぶつけて息が詰まった。 痛みと苛立ちで、銀時を睨みつけようと顔を上げた瞬間、 獣の様な獰猛さを滲ませた銀時の赤い瞳に見詰められて、晋助はびくりとした。 「オマエ、そんな可愛い表情もできんだな」 「……何言ってやがる」 「どうした?顔が赤いよ。告白でもされたか? 顔を赤くしてるって事は、相手は脈アリってところか?」 にやりと笑う銀時に、晋助は眉間に皺を寄せる。 銀時にぶちあたって彼を目の前から退けると、逃げ出すように準備室を走り去った。 帰り道を走りながら、銀時の言葉を思い出す。 “脈アリ”なんて筈が無い。 自分があの男を好きだなんてそんなこと……。 動揺しただけだ。急に“愛している”だなんて妙な事を言うから。 心臓がこんなにも煩いのは、全力で走っているからだ。 顔が熱いのも、全部その所為だ。そう自分に言い聞かせた。 その夜は、あんまりよく眠れなかった。 翌朝、晋助は酷くどんよりした目覚めで朝から気分がうんざりしていた。 だけど欠席するのも癪で、普段通り学校へ来た。 告白してきた万斉もいつも通りの顔で学校へ来て、いつも通り自分の隣を陣取る。 「おはよう、晋助」 「ああ」 何事もなかったように思えてきた。 正直、告白されたことへの返事をするのが面倒だったのでホッとする。 マイペースな万斉の気紛れの告白だ。そう思って気にしない事にした。 だが、そう思った矢先、事件が起こる。 昼休み、屋上で万斉と昼食をとっている時、一人の女子がやってきた。 髪の長い、美人といえる容姿の女だ。 「あの、河上くん……、ちょっといい?」 オドオドした表情で顔を赤らめて近寄って来た女に、万斉はちらりと目をくれる。 万斉はのそりと立ち上がった。 「何用でござるか?」 「えっと、その……好きです!私と付き合って下さい」 女は躊躇いながらもはっきりと告白をする。 下らねえ、俺が居ない所でやってくれ。 内心毒吐きながら、晋助は立ち上がって席を外そうとした。 だが、万斉に腕を掴まれて阻止される。 何のつもりだと尋ねる前に、いきなり後ろから抱すくめられる。 「すまぬが、拙者は晋助以外のモノになる気はござらぬ」 堂々と万斉の台詞に、告白された女子も自分も固まった。 女は一瞬青褪めたあと、今度は顔を真っ赤にして怒った表情になる。 「最低っ、このホモ野郎ッ!」 口汚くそう罵ると、女は屋上から走り去っていった。 頭上に万斉の溜息が降ってくる。 「はしたない女でござるな。まったく」 なんて呑気に呟いている。馬鹿なのだろうか、コイツは。 告白した相手に少し同情する。 あんな振られ方、相当ショックだったに違いない。 「おい、女を振るのに俺をダシに使うな」 「はて、拙者は晋助をダシに使ったつもりは毛頭ござらぬ。 ただ、思った事をそのまま口にしただけの事。晋助以外には興味ござらん」 「……」 「心配するな。逆恨みされても拙者が護る故」 「……護られるおぼえはねえよ」 自分を背後から抱締める万斉の腕から抜け出すと、 晋助はフェンス凭れて空を眺めた。 万斉もその隣に並び、じっと晋助の横顔を見詰めた。 痛いくらいに注がれる視線。晋助は逃れるように只管遠くの空を眺めた。 気長に待つと言うだけあって返事を催促されはしなかったが、 万斉が自分を見る視線が熱を孕んでいて、 相手が本気で自分に告白してきたことを知る。 さっき万斉が女に告げた言葉も本気なのだろう。 だとしたら、やはり返事をしないわけにはいかなくなる。 どうしたものだろうか。相談する相手もいない。 いっそ、さっさと振ってしまえば早い。楽になるのかもしれない。 いつまでもグダグダ考える必要はない。 深呼吸すると、高杉は万斉の方を向き直った。 「おい、万斉。俺は誰とも付き合う気はねえ」 正面から万斉を見詰め、静かに、冷たい声で晋助は告げた。 万斉の感情を探る様に、サングラスの奥をじっと見据える。 万斉は相変わらず無表情な顔で晋助を見詰めて言う。 「そうか」 がっかりした様子もなく淡々と頷いた。 それほど自分を好きだった訳じゃなかったのかもしれない。 晋助がそう胸を撫で下ろし掛けた時、万斉が口を開く。 「しかし晋助、拙者ぬしを諦めるつもりなどない」 「え……」 「ぬしの傍を離れるつもりもない。ぬしの心が拙者に傾くまで待ち続けよう」 振られたにも関わらず、堂々と万斉はそう言ってのけた。 じゃあ、俺が返事をした意味は何だ?そう問い掛けたかったが、 何を言っても無駄そうなので「好きにしろ」とだけ晋助は答えておいた。 どうでもいい。そう思いながら「諦めない」と言った万斉に 心の何処かでホッとしている自分に気付く。 万斉に触れられるのを嫌がっていない自分がいる。 もしかして、やっぱり自分は万斉に魅かれているのだろうか。 いや、ない。もし自分が万斉に惚れているなら、 さっき背後から抱締められた時に多少ドキリとした筈だ。 だが、自分の心臓は規則正しいリズムを打っている。 やっぱり、自分が万斉を好きになっている可能性は無い。 晋助は胸ポケットから煙草を取り出すと唇に咥えた。 ライターで火を点けて、煙を深く吸い込んだ。 紫煙を燻らせながら、高杉は煙が消えて行く空を眺めていた。 その日の帰り、万斉と一緒に電車に乗った。 部活に入ってなかったが、授業後すぐに帰宅せずに ブラブラしてから乗った電車はちょうど帰宅ラッシュの時間だった。 朝のラッシュ以上の込み具合だ。 狭い車内が、サラリーマンのオヤジや他校生でひしめき合っている。 晋助は小柄な方で、人混みが苦手だった。 元来、人嫌いの性質の所為もある。人いきれで眩暈がしそうだった。 電車が揺れる度に、人が雪崩れてきて自分の身体に他人の身体が触れる。 ぎゅうぎゅうと押し潰される上に、 足がちゃんと地面に着かない不安定な状態だった。 「晋助」 ウンザリしていたら、万斉に不意に名前を呼ばれた。 同時に腕を引っ張られて万斉の胸の中に引き込まれた。 ぶつかってくる人から守るように万斉に抱き締められる。 自分よりずっと広い肩幅と身長の万斉にそうされていると、 さっきまでおしくらまんじゅう状態だったのが嘘のように苦しく無くなる。 万斉は肘を張って、自分が潰れないように気を使ってくれていた。 万斉の厚い胸板に顔を押し付け、筋肉質な腕に抱締められる。 温かなぬくもり。男らしい身体。 胸に宛てた耳には、万斉の心臓の音がじかに聴こえていた。 規則正しいが、やや速いリズムを刻んでいる。 冷静な顔からは伺えないが、万斉は鼓動を高鳴らせていた。 晋助はつられるように、自分の鼓動が速くなるのを感じた。 もしかしたら、自分も万斉と同じ気持ちなのかもしれない―… 観念したように笑うと、高杉は万斉の身体に腕を廻した。 逞しい背中にしがみつくと、万斉が驚いたような顔で自分を見る。 「晋助?」 「俺を護るっつっただろう?しっかり護れよ」 思い切り上から目線で高慢ちきに言ってみたが、 万斉は気を悪くしたふうもなく、寧ろ嬉しそうににっと笑う。 「承知した。小柄な晋助が潰されぬよう、拙者が護ろう」 「チッ。ちいせーは余分だ」 舌打ちをしながらも、晋助はさらに万斉と身体を寄せあう。 周りの奴らがぎょっとした目で自分達を見ていた。 どんな関係に思われているのだろうか。 一瞬だけそんな事が気になったが、すぐどうでもよくなる。 視界が万斉で埋まっている所為か、これだけ人に溢れていると言うのに、 まるで自分と万斉しかいないと、そんな風に錯覚した。 電車を降りると、真っ暗な夜路に万斉と自分二人だけになった。 晋助は万斉の一歩手前を無言で歩いていたが、ピタリと足を止める。 万斉の方を振り返ると、いきなり万斉の首に手を廻した。 「しんす……っ」 自分の名前を呼ぼうとした万斉の唇に、自分の唇を重ねる。 誘うように薄く唇を開くと、万斉の舌が自分の口腔に滑り込んで来た。 「んっ…ふぅ」 晋助の唇から色っぽい吐息が零れる。 唾液を絡ませながら、お互いの舌を吸いあう。 万斉がもっと深く口付けを交わそうとしたところで、 晋助はゆっくり万斉から唇を離した。 そして、艶っぽい表情で不敵に笑って万斉に告げる。 「さっき、電車で俺を護った褒美としちゃ、充分すぎたろう?」 ふふと笑う晋助に、万斉は些か茫然とした表情を浮かべた。 晋助の真意が万斉には解らなかった。 晋助本人すらも、どうして自分がこんな行動に出たか解っていないのだから、 それはしょうがないことだろう。 ただ一つ確実に言えるのは、 万斉に振りまわされっぱなしは性に合わないという事だけ。 「万斉、今はお前を恋人として認めねぇ。 とりあえずは、俺の飼い犬から始めろ。 そしたらいつか、俺はお前の物になるかもしれねぇな」 伺うように晋助の緑の瞳が万斉を見詰める。 万斉はふっと口許を綻ばせるとサングラスを取って、まっすぐ晋助を見詰めた。 暫く無言で見詰めあった後、万斉は膝を折って晋助の前にひざまづいた。 そして晋助の手を取り、初めてそうした時と同じように甲にキスをする。 「無論、その甘い申し出を断る理由など拙者には無い」 そう言って晋助を見上げた万斉は、男らしい顔をしていた。 晋助は少し頬を赤らめて、ふいと万斉から視線を反らす。 「もの好きだな。勝手にしろ―…」 結局最後はまた振り回されたと苦々しく思いながらも、 晋助はわずかに口許を綻ばせていた。 --あとがき---------- 帆鳥様、リクエストありがとうございましたvv 大人な晋助様は恋愛にも余裕そうですが、 高校生な晋助はちょっと初心な所がありそうだなと思いながら 書いたので、甘酸っぱい青春テイストな話しになりました。 個人的に、晋助は今は意図的に誑かしてますが、 昔はそういう計算とかせず、自然に人を誑かしていそうです。 純で奥手でありつつも、でも時々女王様チックな面が現れるのも晋助の特徴かと(笑) 万斉は高校生だと、大人よりもさらに諦めが悪くて、マイペースそうです。 ご期待に添えたか妖しいですが、楽しんで頂ければ幸いです。 本当にリクエスト、ありがとうございましたっvv |