「プレゼント」






奇襲作戦の決行を控え、攘夷志士の面々は待機していた。
季節は十月。吹き付ける風はひんやり冷たい。
寒さに体を震わせながら、白夜叉こと坂田銀時は
敵影が無いかを一人で見張っていた。

「銀時ぃ!守備はどうじゃ?」

潜伏している意味がないだろと言う大声で長身の男が近付いてくる。
男は坂本辰馬。共に行動する攘夷志士で一番声がでかい。

「るっせーよ、辰馬。もし敵がいたら一発で居るのがバレんぞ。
 何のために森の中で待ち伏せてるかわかんねーだろーがっ!」

大声にドキリとした銀時は、苛立ち紛れに吠える。
その様子を少し離れていたところで見ていた
桂が少し負った顔で近付いてきた。

「うるさいぞ、貴様ら。作戦を台無しにする気か」
「ヅラ、文句なら辰馬に言えよ。
 俺は悪くな……ふっ、へ、へっくしょーいっ!!!」

寒さに負けたのか、銀時は喋っている途中に大きなくしゃみをした。
飛ばされた唾を拭いながら、桂は何故かドヤ顔で言う。

「何が俺は悪くない。だ。お前もうるさいではないか銀時」
「しゃーねーだろ。くしゃみなんだから」
「くしゃみをするなど、たるんどるぞ銀時」
「ヅラと違って俺は繊細なんだよ。風邪ひかねー馬鹿と一緒にすんな。うー寒ぃ」
「寒いがか?大丈夫かえ?銀時」
「大丈夫じゃねーよ。あーもっと厚着すりゃよかった」
「ふっふっふ!では、みんなで温まるとするか!坂本、準備はできた」
「ほうか。じゃあ行くとするぜよ」

桂の意味不明な「温まろう」発言に辰馬は訳知り顔で頷く。
銀時は胡散臭そうなものを見る顔で二人を交互に見比べた。

「おいおい、行くって何処にだよ。ここの張り込みは誰がすんだ?
持ち場離れたら、高杉にぶっ殺されっぞ。あいつ、怒ると容赦ねーんだぞ」
「大丈夫じゃ、銀時」
「ああ。ここの張り込みは高杉の部下の鬼兵隊に頼んだ」

そういうと、桂と辰馬は銀時を二人で挟んで、
「何処へつれてく気だ」と叫ぶ銀時を無視して、
ずるずると引っ張って歩いていった。



引き摺られて銀時がやってきたのはさっきよりも深い森。
桂と辰馬は茂みの奥を指差し、茂みの中に入るよう銀時を促す。

「なんだよ。茂みに入って暖まるとかか?
 葉っぱの布団とかいわねぇだろうな?ふざけてんのか?」
「いいからいいから〜。早ぅ茂みを抜けぇ」
「解ったから押すなよ、辰馬」

葉を掻き分けて銀時は茂みを抜けた。
見た目ほど深い茂みでは無かったようで、直ぐに視界が開けた。
茂みの先で銀時を待っていた者に、
銀時の眠たげな瞳が見開いて、まん丸になる。

「えっ、なに?なにコレっ!!」

茂みの先の広い野原で、高杉が大きなホールケーキが
乗った皿を手ににっと笑っていた。
ケーキに乗ったチョコプレートには“銀時誕生日おめでとう”と
ご丁寧に字が書かれている。
しかもケーキには子供のように蝋燭が並んでいた。

「銀時。十八歳の誕生日おめでとう。
 てめぇの歳の数だけ蝋燭を灯したぜ。感謝しろよ」
「ハッピィバースデー、銀時ぃ」
「おめでとう、銀時」

高杉達に口々にお祝いの言葉を貰い、
銀時は少し頬を赤く染めて照れながら「あんがとな」と
モゴモゴした口調で歯切れ悪く答えた。

「おら、さっさと吹き消せよ銀時。蝋が垂れるだろ」
「んなガキみてぇなことさせる気かよ、高杉」
「たりめーだ。何のためにわざわざ蝋燭飾ったと
 思ってんだよ。こういうイベントは粋に楽しめよな」

ずいっと火の灯ったケーキを差し出す高杉に急かされ、
銀時はちょっと恥ずかしがりながらも蝋燭の火を吹き消した。

「流石の肺活量だなぁ、銀時。一発で全部消えたじゃねぇか
 くくくっ、お前ぇ今年はきっといいことあんぜ」
「すごいじゃないか、銀時」
「あははは、よかったのう!」
「寄ってたかってガキ扱いすんなって。でも、サンキュ」
「ほいじゃあ、ケーキ切るがや。
 チョコプレートは主役の銀時のモンぜよ」

包丁でケーキを切り分けて、辰馬が紙皿に取り分けてくれた。
松陽先生がまだ捕まっていなかった頃を思い出して、
銀時は笑みを浮かべる。

「うまそーじゃん。いただきまーす」

早速大きな口で銀時はケーキを食べた。
辰馬が用意した酒を飲みながら、肴にケーキを食べて、
みんなで馬鹿話で盛り上がる。
そんな楽しい一時を四人で過ごせる事が酷く幸福だった。




散々騒いだ後、辰馬と桂は先に眠ってしまった。

まだ眼が冴えていた銀時は、同じく眠くなさそうな高杉の隣に座る。
誕生日くらい気安く触れてもいいだろうと、
銀時はさり気なく華奢な高杉の肩を抱き寄せた。

「高杉、祝ってくれてありがとな。……その、嬉しかったぜ」
「珍しく殊勝じゃねぇか、銀時。
 気にすんな。年に一度の主役の行事だ。どんと構えてろ」
「マジで。じゃあワガママ言うぞ。プレゼントが欲しい」

銀時がそう言って図々しく両手を差し出す。

「プレゼント?んなもん用意はねぇよ」

そっけなく言った高杉に、銀時は
「ないなら、今から用意しろよ」と唇を尖らせる。

「いや、無理だろ。一応作戦中だぜ。
 ケーキ買ってきてやっただけでもありがたいと思えよ。
 プレゼントまで用意する暇なんねぇ。今から用意するなんて無理だ」
「無理じゃねぇよ。プレゼント、あるじゃん」
「は?」
「今目の前にあるじゃねーかよ」

そう言って自分を指差す銀時に、高杉は呆れた顔をする。

「なんだよそれ。寒っ。俺がプレゼントとか言う気か?」
「その通りだよ。つーわけで、サービスよろしく」

額に巻いている白い鉢巻をシュルリと取ると、
銀時が高杉の首にリボンのように巻き付ける。
ついでに高杉の鉢巻も取る、身体の前で腕を縛り上げた。

「オイ、銀時。なんのつもりだよ」
「いいじゃねぇか。お前がプレゼントになってくれよ」
「お断りだ。解きやがれ、銀時」
「いいじゃん。俺の誕生日だから、俺の言う事聞けよ」

懇願するようにじっと見上げると、高杉がぐっと言葉を詰まらせる。
数秒考え込んだ後、高杉はしょうがなさそうに頷いた。

「いいぜ。好きにしろ―…」

その言葉に、銀時はにやりと笑みを浮かべる。
殊勝な顔は何処へやら、その顔は飢えた獣さながらだった。

「んじゃ、さっそく。いっただっきま〜す」

そう言いながら、銀時は高杉に飛び掛かった。
腕を縛られて抵抗できない高杉の服を乱暴に開けると、
銀時は首筋や鎖骨の辺りにキスを落とす。

「んっ、……あっ、銀時っ、ヅラや、辰馬が……」
「大丈夫だって、寝てるから」
「でも……」
「こん所ずっとヤれてねぇじゃん。溜まってんだよ!」

性急に自分の性器を取り出すと、
銀時は高杉の口の前に先走りで濡れたそれを差し出す。
精液を擦り付けるように、高杉の形の良い唇に先端を押し当てる。
顔を顰める高杉に、銀時はにやにやと笑う。

「なあ、舐めてくれよ」
「はぁ?」
「だーから、フェラしろってんだろ」

そう言うと、返事を待たずに銀時は高杉の口に自分の雄を突っ込んだ。
高杉が「むぐっ」と可愛らしいくぐもった声を上げる。
そんなに大きくない口に、既に少し膨張したモノを咥えさせられ、
息が詰まりそうなのか涙に滲んだ目で高杉が銀時を睨み上げる。

「うわっ、そのツラたまんねぇ〜な」
「んっ……ぅっ」
「ホラ、早く。今日は言う事聞いてくれるっていっただろ?」
「……」

文句を言いたげな顔をしていたが、高杉は黙って銀時に奉仕を始めた。
先端をチロリと舌で舐めて、啜ったり、
口全体を動かして竿を扱き上げたりと、遊女顔負けの手管を披露する。

「うっ……ぁ、うめっ。オマエ、何処で覚えたんだよ」
「ふぁまっふぇろ」
「うおっ、喋んな。ちゃんとやれっ!」

銀時が文句を言うと、フンと高杉が鼻を鳴らして口淫を再会する。
銀時は荒い息を漏らして、顔を上気させた。
のってきた高杉の愛撫に意識を持って行かれそうになったが、
イク寸前で高杉の後頭部を掴んで顔を離させる。

少し漏れた精液が白い糸となって高杉の唇と自分の性器の先端を
一瞬だけ繋ぎ、つっと高杉の顎に垂れた。
不満そうな顔で高杉が見詰めてくる。

「やれっつったのてめぇだろうが。何止めてんだよ」
「うっせ、誰もイクまでやれなんて言ってねーだろ、どエロ杉!」
「てめぇの為にサービスしたんだよ」
「うっ、それは嬉しいけどよ、俺はテメーにぶち込みてぇんだよ。
 イカされちまったら困んだよ」
「注文が多い奴だな」
「良いだろ、別に。拘りがあんだよ」

銀時は先走りを指に絡めると、高杉をうつ伏せにして
尻の穴に指を突き立てた。
突然の圧迫感に高杉がひくりと喉を引き攣らせる。
フェラで興奮したのか、熱くなったナカはジュクジュクと
湿っていて、淫靡に蠢いてた。
掻きまわすように指を動かすと、高杉は背中をしならせて喘ぐ。

「うはっ、スゲェやべぇじゃん。早く挿れてーな」
「あっ、はぅ、ぎ…んときぃ。とっとといれっ、ろよ」
「わーってるって。でも、その前に……」

銀時は指を引き抜き、拘束していた高杉の腕を解いた。
うつ伏せで寝かせた高杉を表向けると、笑いながら言った。

「なあ、高杉。足M字開脚に開いてケツの穴自分で指で広げながら、
嫌らしいケツマンコに、銀時の熱い肉棒をブチ込んで下さい。
 って可愛い顔で俺にお願いしてくれよ」

いつもクールな高杉も、流石に顔を崩す。

「てめっ、何だよ、そのクソみたいなお願い。ざけんな!」
「いいじゃねーかよ。それくらい美味しい展開があっても」
「言い訳あるか。んな真似、できるかよ」
「俺のこと愛してくれてんだろ?な、言ってくれよ!」
「嫌だ」
「いつ死ぬか解らねぇんだぜ、俺達。
 頼むよ、こんなつまんねぇ願い事くらい聞いてくれよ」

銀時が土下座するように頭を下げると、高杉は溜息を吐いた。
そのあと、顔を真っ赤にしながら、
足をおずおずと大きく開き、恥かしそうに自分の手で肛門を拡げる。

「銀時、俺の、ケツマンコに、お前の肉棒を挿れてくれっ」

上目遣いでたどたどしい声で高杉は恥かしい台詞を口にした。
その破壊力は予想以上で、銀時は自分の理性が切れる音を聞いた。

「っぁ!?ぎっ、んと、まっ、あぁぁぁっっ!」

飛び掛かって来た銀時に一気に置くまで刺し貫かれて、
高杉は堪え切れずに嬌声を上げる。
全身を付きぬけるような強い快感に、高杉はイッてしまった。
だが、銀時は容赦なく高杉の細腰を掴んで、激しく自分の腰をぶつける。
ぐったりする間もなく、次の快感に襲われて高杉は仰け反った。

「あっ、あっ、ぎん…ときぃ」
「うぁっ、たかすぎっ」

指と指を絡めあいながら、互いを深く求め合うように
二人は草むらの上で縺れ合った。




セックスを終えて、銀時は高杉を腕枕しながら空を見上げる。
高杉もまた、夜空を見上げていた。

「っつ、外で無茶しやがって。てめぇの所為で背中と腰が痛ぇ」
「うっ……悪かったって」
「まあ、誕生日だから多めに見てやらぁ」

星を見詰めていた緑色の瞳が、銀時の方を向く。
それからゆっくりと不満を口にしていた唇が微笑んで言った。

「誕生日おめでとう」と。






--あとがき----------

酷い。このヤマもオチもない話し……
攘夷の四人が書きたかったんです。
しかし攘夷感もない、銀さんの白夜叉っぽさもない。
唯一、高杉だけが今と違って、ちょっと純で
初々しくて昔っぽさを出してくれてるだけです。
うん、銀さん誕生日おめでとっ(苦笑)