++++++白い呪い++++++
    第四話  ―独占―



「シンスケ」

ベッドで眠り続ける男を見詰め、神威はその名を呟く。
その音は酷く優しく響いた。


手を伸ばして白くなった前髪を額から払い落とす。
左目に巻かれた包帯を神威の手がゆっくりと撫でた。

「ずっと気になってたんだよね。その隠された左目に何があるのか。
 シンスケ、聞いても教えてくれないから。
 ねえ、勝手に包帯を取って見ちゃってもいいかな?シンスケ」

問いかけてみるが、返事はない。それを寂しいとは思わなかった。
こうやって自分と二人きりで彼が居てくれる。
手を握れば死体のような冷たさがかえってこようが、
消えてしまいそうな微弱な脈が伝わってこようがかまわない。
何も考えず、感じず、何も見てなくて、聞いてもいない。
そんな状態の彼と居ると、彼が自分の物になったと錯覚する。

靴を脱いでベッドに上がると、神威は高杉の隣に寝転がった。
抱き着くと鼻腔を甘い香りがくすぐる。
頬を摺り寄せると柔らかい感触が返ってきた。
そうしていると、血の渇きが癒える気がするから不思議だ。
闘いでしか、殺し合うことでしか癒えないと思っていたのに―…

このまま眠ってしまおうと思っていたが、ジャマが入った。
コンコンとノック音がして、直後に部屋の扉が空く。

「団長、入るぜ〜。って、何やってんの?アンタ……」

入ってくるなり阿伏兎が間抜け面を晒す。
神威は煩わしげに阿伏兎に顔だけ向けた。

「ちょっと団長〜。そんなの抱き枕にしてたら冷えて腹ぁ壊すぞ」
「俺の胃袋は鉄壁だよ。腹なんて壊すわけないさ」
「まあ、そうかもしんねぇけど。
 いったい何やってんだよ、団長。アンタらしくない」

蓬髪をぐしゃぐしゃ掻きながら、阿伏兎が肩を竦める。
ベッドに近付くと、気だるげな眼で眠る高杉を見下ろした。
その瞳はわずかだが、忌々しさを滲ませていた。

「団長。低体温にして薬使ってこの男を仮死状態に保ってどうする?
 白詛の進行をくい止めて、生きながらえさせてどうする気だ?
 アンタ、どうかしてるぜ?こんなガラクタ、もう用はねぇだろ。
 玩具にするにしても、顔は別嬪さんでも男だぜ?」
「……阿伏兎。シンスケは俺のモノだよ。
 指一本でも触れた奴はその場で殺す。部下に徹底してね」
「オイオイ、なんだいそりゃ〜。随分とご執心じゃないの」

阿伏兎が呆れた顔でからかったが、神威は真面目な顔をしたままだ。
言い返すこともなく、威圧的な瞳でただじっと阿伏兎を見ていた。
その視線に殺気を感じ取って、阿伏兎は口を噤む。

「阿伏兎、白詛についての情報を集めろ。治療法を探せ」
「おいおい、保健衛生機関にでもなるつもりか?
 ごっこ遊びする年齢じゃねーよな。オレ達。
 闘う事しか知らない夜兎だぜ?そんな仕事はできやしねぇよ」
「どんな仕事でも夜兎らしくやったらいいじゃない?」
「と、いいますと?」

阿伏兎の中に嫌な予感が込み上げていた。
引きつりそうになる顔を必死に堪え、阿伏兎が訪ねると神威が
悪鬼のような表情で答える。

「白詛なんて、どうせ、天人の仕業だろ?
 宇宙をさすらいながら、片っ端から戦争しかけたらいいんじゃない?
 白詛を知ってるかって聞きながらサ。そのうち、行きつくでしょう?」
「はは〜、やっぱそーきたか。ごもっとも、それしか方法はなさそう、だ」

高杉を宇宙にでも捨ててしまえ、という選択肢を飲み込み、
阿伏兎は神威の意見に頷いた。
逆らえば、この場で殺されかねなかった。
それを怖いとは思わないし、一度は神威に殺される予定だった身だ。
いつ殺されても構わない。
だが、高杉の為だというのは、ほんの少々だが気に喰わなかった。

「今後の予定は決まったんだから、さっさと出てけよ阿伏兎」
「……ハイハイ。ラブラブの邪魔してスンマセンね」
「本当だよ。空気読んでよね。阿伏兎」

一番空気を読めなさそうな男が何を言う。
そう突っ込みたいのをぐっと飲み込んで、阿伏兎は部屋を後にした。




また二人きりになると、神威は高杉の隣に寄り添って寝転がった。

暫くじっとしていたが、僅かに香る甘い匂いを嗅いでいるうちに
ムラムラしてきた。

高杉に着せたガウンのような病衣の前を開き、
白い胸板に手を這わせる。
桜色の乳首に舌を這わせると、僅かに身体がピクリと反応した。

「殆ど眠ってるのに感じるんだ。やっぱりシンスケってエロいね」

中傷めいた言葉を口にしても、怒る言葉は返ってこない。
小さな突起を舌先で突いたり転がしたりすると、
先っぽが固くなり勃った。
色も桜色から鮮やかな薄紅に色付いている。
固くなった乳首をコリコリと甘噛みすると、
眠っている筈の高杉は僅かに眉根を寄せて吐息を漏らす。

神威はズボンを降ろすと、眠る高杉の足を左右に開いて
自分の身体を滑り込ませた。
病衣の下は全裸で、下着など身につけていない。
指に自分の唾液を絡ませると、入り口にズプリと指を埋め込む。
乱暴にナカを引っ掻き廻し、入り口を指で押し広げると
固くなった肉棒を無理やり捩じ込んだ。

乱暴に扱って血が出ていたが構わなかった。
血が潤滑剤の役割を担って、スムーズに腰が動かせる。

「ふふっ、イイね。……シンスケのナカ最高だよ」

腰を掴むと、意識の無い高杉の身体を激しく揺さぶった。
高杉の秘肉と自分の肉棒が摩擦する度に激しい快感が脳天を突き上げる。
パンパンと腰と高杉の尻の肉がぶつかり合う音が部屋に響いた。
神威は獣のように呻き声を上げる。

眠っている高杉は声こそ上げないが、
ナカは求めるように自分の根元に絡みつき、
入り口が咥え込んだ肉塊を逃さないようにキュウとキツク締まる。
白い内腿は快楽の所為かビクビクと痙攣し、
心なしか青白かった頬は上気しているように見えた。

「キモチいいの?シンスケ。オレもすげぇイイよ」

戦っている時と似た、欲望丸出しの顔で神威は高杉の身体を貪った。
より深く繋がろうと、ぐっと腰を進めて
容赦なくナカのしこりを突き上げる。
高杉の雄が勃起して、腹と腹の間で擦れていた。
神威がナカに射精すると、高杉もびくんと大きく身体を震わせ
コプリと精液を吹き上げる。

その瞬間、仮死状態に近い状態のはずの高杉がぽつりと呟く。

殆ど吐息でしかなかったが、確かに「ぎんとき」と呟いた。

「ぎんとき……坂田、銀時か」

神威の瞳にぎらりと獣の光が宿る。

高杉の唇を自分の唇で塞ぐと、
窒息死させるくらい激しいキスを交わした。














--あとがき----------

神威のターンです。
阿伏兎は神威が高杉にご執心なのを気に喰わないと思います。
でも、神威が怒るので高杉に手を出せない。
阿伏兎は子供を彼女に取られるお母さん気分だといいですね。
神威は本当に高杉好きですよね。
神威は愛し方なんて知らないので、
一方的に自分の気持ちを押し付けて相手のことは考えずに
やりたいことをする。そんな強引な感じだと思ってます。