第十話 ―夜の兎戯―


学校を出た高杉は、神威の後について面倒臭げな面持ちで歩いていた。

灰色の雲が渦巻く外へ出ると、近くの廃ビルへとやってきた。
暗く錆びれた建物の中に入ると、埃っぽさに喉がイガイガした。
高杉は不機嫌な表情を浮かべる。
目の前に居る紅色の髪の男がニコニコしているのが癪に障った。

「さあ、ここなら邪魔されないね。存分にヤろうか」
「……さっさとかかってこいよ」

神威が腰を落として構えをとる。高杉も応じて姿勢を低くした。
トンと地面を蹴ると、神威が飛びかかって来た。
重く速い拳が空を切る。スピードも破壊力もある拳を
高杉は紙一重で躱していく。
自分は蹴りも拳も出さずに、ただひたすら神威の攻撃を避け続けた。
避ける一方で、攻撃する気配を見せない高杉に、神威が苛立ちを見せる。

「ねえ、やる気あんの?避けてばかりじゃつまらないんだけど」
「うるせえ。だったら止めろよ。俺は帰る」
「嫌だね。本気のアンタと殺り合いたいんだ」
「生憎、気分が乗らねえ」
「じゃあ何でついてきたの?クラスの連中を守る為かい?」
「さぁな。そんなガラじゃねえよ」

気がない態度を取り続ける高杉に、神威は焦れた顔をした。
阿伏兎と云業に目で合図を送ると、高杉に飛び掛からせる。
さっきまで見ているだけだった二人の乱入に反応が遅れて、
高杉は簡単に両腕を二人に拘束された。

チッと舌打ちをすると、高杉は二人から逃れようと暴れる。
だが、阿伏兎と云業の体格は高杉の二回り以上は大きく、
純粋な力勝負ではとても敵いはしなかった。

もういい。高杉は心の中で呟いた。
このままあっさり殴られるのはかなり癪だが、
病院送りにでもされて、強制的に学校に行けなくなる方が今はありがたい。
銀八の顔を見るのが辛い。
だが、銀八は自分が学校を休むのは許さない。
休めばまた変態染みた嫌がらせをしてくるに違いない。
だったら、入院して学校にこられない事情を作るのが一番だ。

諦めたような自暴自棄な瞳で高杉は神威を見る。
神威はつまらなさそうな顔をしていた。
ざまあみろ。簡単に思い道理になどなってやるものかと高杉はほくそ笑む。

「シンスケさ、せっかく俺が遊びに来たのに上の空だよね」
「俺はてめぇに興味なんざねえからな」
「えぇ、酷いなー」
「ふん」
「ま、いいや。俺が遊びたいだけだからさ。でも、
 ケンカはそれじゃつまらないよね。だからさ、別の事にするよ」

にやりと神威が笑う。高杉は怪訝な瞳でそれを見詰めた。
何をする気だろうと思っていたら、神威にいきなり首を絞められた。

「がっ、はぁっ」
「うん、苦しそうなシンスケの顔いいね。興奮する」
「くっ……」

苦しむ高杉に神威が飛びかかる。そのまま地面に押し倒され、
高杉は強かに背中を打ちつけた。
両腕は云業に纏めて押さえ付けられて、腹に神威が乗っかっていた。

「な、にする気だ……」
「シンスケ見てたらすごい股間にキちゃってさ」

神威の顔にギラギラした男っぽさが滲んだ。
神威はズボンのチャックを開けてイチモツを取り出すと、
高杉の唇に擦り付けてきた。
顔に似合わず大きい性器に高杉はギョッとした表情を浮かべる。
必死に顔を逸らして逃げようとするが、乱暴に前髪を掴まれて、
神威の性器を口の中に捩じ込まれた。

「うっ……ぐぅっ」

咽返るようなムサい匂いと青臭さに吐き気が込み上げた。
溜まらず神威の雄に歯を立てて噛み付く。

「イテテッ、噛まないでよ、シンスケ。さすがに痛いよ」

痛いと言う割にはヘラヘラしながら、神威は高杉の頬を張った。
口の中が切れて、血の味が滲む。
それでもなお、歯を立て続けていると阿伏兎に首を絞められた。

「おら、団長……いや、番長のイチモツに喰らい付くなよアバズレ」
「ぐ……うぅっ がっ」
「阿伏兎、その辺にしといて。いいよ、別に。
 フェラってくんないなら勝手にさせてもらうからさ。阿伏兎は顎押さえてよ」
「ハイハイ」

高杉の喉を締めていた手を離すと、阿伏兎は細い顎を掴んだ。
これ以上噛ませないように、無理やり開かせる。
神威は高杉の喉に深く自分の男根を咥え込ませて、腰を動かした。

「おえっ……ぐ、ふぅ っは」

気道を塞がれて、高杉は苦しさに目尻に涙を浮かべた。
窒息しそうなくらい苦しいのに神威はそんな自分を気にも留めず、
自分勝手に腰を振って気持ち良さそうな表情を浮かべていた。

「うん、最高。いいね、これ。喉が上手い具合に締め付けてくる」
「ふっ んんぅっ うぅっ」
「あ、そろそろイきそう」
「んっ!?ううぅぅっ!!」

神威はぶるりと震えると、高杉の喉の奥に精液を叩きつけた。
喉から苦くて青臭い液体が胃に流れ込んで来て、高杉は咽返る。

「ぐはっ ゲホッゲホッ おえぇぇっっ」

神威が陰茎を引き抜くと、高杉は仰向けに押さえ付けられたまま
神威が放った精液と胃液を吐き出した。
苦しそうに堰を繰り返す高杉を神威は相変わらず笑いながら見下ろしている。

「酷いなあ、何も吐き出さなくても。ちゃんと飲んでよ」
「だ、れが、こんな汚ねぇもん飲むかよ……」
「うん、いいね。その挑発的な瞳サイコー」

ふふっと笑うと神威はゲロを吐き出したばかりの高杉の唇を奪う。
よくゲロったばかりの男の唇を吸う気になるなと、
呆れながら高杉は神威の乱暴な舌に口腔を暴かれていた。
神威は高杉の吐瀉物も唾液も全てを絡め取って飲み込んでいた。
長い神威の舌が口蓋を撫でたり、舌を絡め取ったりして犯してくる。
強く舌を吸い上げられると、嫌でも下半身が疼いてしまう。
ピクリと反応する高杉に、阿伏兎が卑下するような瞳を向けてきた。

「オイオイ、番長の乱暴な舌遣いで感じるとか変態かよ」
「ふぅ、はぁっ か、んじてなんかねぇ」
「嘘こくんじゃねーよ。股んところ膨れてきてんぜ」

阿伏兎が下半身の方に近付き、高杉の股間を握った。
乱暴に性器を握られて高杉が溜まらず呻く。

「がっ、いっつ……、は、なせ」
「あーあー、顔はハンサムなのに粗末なモンぶらさげてら」
「はっ、余計なお世話だ。そういうてめぇこそ大そうなモン持ってねぇんじゃねぇか」
「おーおー、この状況で生意気だこと。ざんね〜ん。
 オレのはそりゃもう大砲で、女なんてみんなイチコロでアヘるぜ。オラ、見な」

ニヤニヤ笑いながら、阿伏兎は高杉の顔の前に自分の性器を突き付けた。
ムッと漂う男っぽい臭いに高杉は吐き出しそうになる。

「オイオイ、汚らしいモンみる目で見んなよ、傷付くだろーがよ」
「しょうがないよ、阿伏兎のは汚いもん」
「番長まで。このすっとこどっこいが。男らしさがわかっちゃないねぇ」

肩を竦めると、阿伏兎は乱暴に高杉のシャツを裂いて
亀頭で高杉の腹筋をなぞった。
大きく硬い阿伏兎の雄に腹を撫でられて嫌悪感が全身に走る。
だが、それだけじゃない。くすぐったさに似た甘い感覚が背筋を這いあがった。
気持ち悪くて逃げ出そうとしたが、腕を押さえ付ける云業の力は強くて
撥ね退ける事は叶わない。

「さて、俺はじゃあこっちをもらおうかな」

神威は高杉の下半身の方に移動すると、ズボンを下着ごと引き摺り降ろした。
下半身を外気に晒されて、高杉はぶるりと震える。

「うん、シンスケのは確かに綺麗な色して小さいくて可愛いね」

さらりと男を否定する様なことを言われたが、
怒る余裕などもう高杉にはなかった。
このままじゃ輪姦される。状況を飲み込んだ高杉は顔を青褪めさせた。
男を輪姦して一体何が楽しいのだろうか。
自分だったら御免だが、夜兎高の連中はやる気満々だった。
神威が無理やり尻の穴に指をつきいれてくる。
圧迫感と痛みに高杉は苦しげな表情を浮かべた。

「ぐっ……ッ い、ぁ゛」

痛がる高杉に構わず、神威は乱暴にナカを指で引っ掻き廻してきた。

「や、めろっ!てめぇ、こんな事して、なんになるっ?」
「俺の欲が満たされる。不思議だね。俺、ホモじゃないし、
 性欲も暴力で満たされちゃうからあんまし溜まらない方なんだけどさ、
 シンスケを見てるとヤりたくてウズウズするんだ。シンスケ、綺麗だからさ」
「ざ、けんなっ やめ……アッ」
「あ、ココがシンスケの泣き所?どう?気持ちイイ?」
「ヒァッ あぁっ、いあっ、やっ」

ジュプジュプとエロい音を立てながら神威がナカを掻き乱す。
阿伏兎には上半身を舌で舐め回されて気が変になりそうだった。
吐き気と快感とがぐちゃぐちゃに混ざって身体中を駈けめぐる。
爪先を反らせながら、高杉は白い太腿をビクビクと痙攣させた。

「シンスケすごいエロい。よし、そろそろブッこんでもいいよね」
「おいおいズリィな番長。オレもヤりたいんだけど?」
「えー、二本刺ししてもいいけど阿伏兎とは嫌だな。俺が先ね」
「チェッ、ずりーな番長。ま、大人しく後手に回りましょうかねぇ」
「そうだよ。お前のばっちい精液に塗れた穴とはやりたくないからね」
「ヒデーな。ったく、汚物扱いかよ」
「汚物だからしょうがないよ。口でも使ってヤッてなよ。じゃ、お先に」

神威は高杉の膝の裏を持ち上げて無様に肛門を晒させると、
膨張した先端を押し宛てた。
滑った硬いものを入り口に押し当てられて、高杉は暴れる。

「やめろっ!いやだ、離せこのヘンタイ野郎っ!」
「断る。だって、俺我慢できそうにないもん」
「オラ、処女みたいに暴れてんじゃねえよ。大人しくしてろって」
「っ!?ぐぁっ!」

阿伏兎に顔と腹を殴られて高杉は呻き声を上げた。
強すぎる衝撃に頭がクラクラして、高杉は暴れさせていた足を力なく降ろす。
神威は再び高杉の足を掲げると、先っぽを高杉のナカにめり込ませた。

もうだめだ、犯される。観念したように高杉は瞳を閉じる。
情けないけど、目尻に涙が溜まっていくのがわかった。

溜まった雫が頬を流れ落ちる前に、じゃり、と足音が響いた。

「学校抜け出して不純同性行為ですか?コノヤロー」

聞き慣れた気だるげな声に高杉はハッと顔を上げる。
いつもの白衣姿の銀八がそこに立っていた。
高杉に雄の先端を埋め込んでいた神威はそれを引き抜き、銀八の方を向く。

「なに?誰?アンタ」
「坂田銀八。高杉の担任だよ」
「へえ、先公か。何の用?」
「何の用?じゃねーよ。さっさとソイツ離せよ」
「嫌だね。お楽しみの最中なんだ。出てってよ」
「断る。ソイツ連れて帰らねえと、俺が校長に怒られんの」
「ふーん、怒られるのより、俺達に殺される方が嫌でしょ?」
「いや、怒られる方が嫌だね。うるせーんだよ、校長」
「あそ、阿伏兎、行け」
「あいよ」

ボキボキ指の音を響かせながら阿伏兎が銀八に近付く。
阿伏兎の瞳にはぎらつく様な凶暴性が滲んでいた。
だが、銀八は相変わらずのやる気無い表情のままだった。

「お前の顔、高校生じゃないね。おっさんみてぇ」
「うっせーよ。こっちは八回留年してんだよ。そりゃ年も取るっつーの」
「オイオイ、真面目に勉学に励めよ」
「ほっとけ」

阿伏兎が拳を振りかぶった。重いパンチが繰り出される。
銀八は拳を受け止めたが、余りの重さに後ろに押し戻される。
続いて繰り出された蹴りが腹を掠めた。

「ぐあっ!」
「銀八っ!」

吹っ飛ばされて、銀八が派手な音を立てて廃材に突っ込む。
高杉は思わず銀八の名前を叫んで不安げに彼を見詰めた。

「いててて、ったく、乱暴すんじゃねえよ」

銀八は白衣に就いた土埃を払いながら立ち上がる。

「へえ、阿伏兎の蹴りで落ちないとか結構やるね」
「ほんと、生意気な教師なこって。でも、次で終わりだぜ」

地面を蹴ると、阿伏兎が飛びかかっていく。
銀八は阿伏兎のとび蹴りを寸の所で避けると、阿伏兎の腹に拳を叩き込んだ。
今度は阿伏兎が吹っ飛んで放置してあった木材に突っ込んだ。
木材を散らかせて尻餅をつく阿伏兎に、銀八が追い打ちを掛けようとする。
云業が阿伏兎に加勢しようと、高杉を離して銀八に飛び掛かった。
銀八と云業は数度拳を交えた末に、云業が敗北する。

「へえ、云業を倒すなんて強いね。やるじゃん」

高杉をベルトで縛り上げると、神威はズボンを穿き直して銀八の前に立った。

「オメーが主犯か、このやろー。学校に乱入すんな」
「学校に乱入しなかったら邪魔しなかった?
 高杉は不良生徒みたいだからね。じゃあ、今度は学校の外で会うよ」
「そう言う問題じゃねぇよ」

ヘラヘラと笑う神威をギロリと銀八が睨む。
二人は拳を構えた。殺気立った雰囲気に建物内が包まれる。

どうして、銀八は自分などを助けに来たのだろう。
服を脱がされた下半身を晒したまま縛り付けられ、情けなく床に転がされながら
高杉はぼんやりと銀八と神威を見詰めていた。
目の前では激しい戦闘が繰り広げられている。
打撃音、飛び散る血。どうして、銀八は神威と戦っているのだろう。

「いっ、ててて、ったく、ガキの癖に強ぇじゃねぇか」
「アンタこそ、先公のクセにやるね。ウン、楽しいよ」
「楽しくねーよ!」

拳を交えながらヘラヘラする神威に銀八が苛立った顔をする。
一進一退の勝負。
銀八は砂利を掴むと神威の目に向かって投げつけた。
予想外の銀八の行動にまともに直撃を受けた神威が怯む。
その隙に銀八は神威を殴り飛ばし、マウントポジションをとった。

「なーにドジやってんだよ、番長。おら、番長を離せよ」

起き上った阿伏兎が高杉の首筋に刃物を宛てがった。
脅しじゃないと示すように、阿伏兎は高杉の首の皮を切る。
白い首に紅い筋が浮かび上がり、つ、と血が流れた。

「やめろ、高杉から離れろ。お前のリーダーは解放してやる」
「……」
「どうした?返してやるってんだよ。高杉を離せ」
「いや、やっぱやめとくわ。コイツは厄介なんでね。
 ここでちょっくら始末しといてもいいかなって思ってさ。
 なーに、ぶっ殺したりしねぇよ。綺麗なツラを二目と見れない顔にでもするだけだ」

阿伏兎はそう言うと、高杉を冷たい瞳で見下ろした。
殺人鬼さながらの瞳に、阿伏兎の本気を知る。
銀八と神威が阿伏兎をじろりと見る。

「阿伏兎……」

神威が何か言いたげに鋭い瞳を阿伏兎に向けるが、
阿伏兎は素知らぬ顔をしていた。
阿伏兎は持っていたナイフを高杉に目掛けて降ろした。

「高杉っ!」

高杉は銀八の声を聞きながら諦めたように瞳を閉じる。
痛みを待っていたが、痛みはやってこなかった。
代わりに温かく柔らかい衝動に包みこまれる。
高杉は恐る恐る、瞳を開ける。

「え、ぎん、ぱち―…?」

肩口にナイフを突き刺された銀八が顔を顰めて自分を見下ろしていた。
生温い液体がポタリポタリと頬に落ちてくる。
庇うように自分を抱き込む銀八を見上げて、高杉は瞳を丸くした。

「生徒を庇うとは、いいセンセーしてるねぇ」

茶化すように笑う阿伏兎を、神威が睨みつけた。
さっきまでぎらつかせていた瞳は元の優男風の糸目に戻り、
興醒めしたように神威は銀八と高杉に背を向ける。

「帰るよ、阿伏兎」
「あらら、もういいの?」
「お前のつまらない邪魔が入ったからね。もういいや。
 シンスケとはまた別の日に遊ぶ事にするよ。じゃあね、シンスケ」

ひらひらと手を振ると神威は三つ編みを揺らしながら
何事もなかったようにスタスタと帰っていった。
阿伏兎も伸びている云業を担いでその場を後にする。
その後ろ姿を見送ると、銀八はふうと長い溜息を漏らした。

肩に刺さった小さなナイフを引き抜いて捨てると、
縛られた高杉を解く。

「大丈夫か?高杉」
「……な、んで、だよ。どうして此処にいるんだ?」
「あぁ、新八が職員室走り込んで来てな。
 お前が自分達庇って夜兎高の連中についてったって聞いてな」
「別に、庇ってない。それにお前がわざわざ探しに来る事なんてない」

顔を俯けて高杉は苦しそうな声で呟いた。

「俺がどうなろうと、どうだっていいじゃねぇか。
 なのに、俺なんぞ庇って、こんな怪我して。馬鹿みてぇ……」
「どうでもよくねぇっ!」

突然銀八が怒鳴り声を上げた。
びくりとして高杉が顔を上げると、泣き出しそうな怒っている様な
複雑な表情をした銀八と視線が合う。
銀八の腕が伸びてきて、ぎゅっと抱き寄せられた。
仄かな煙草の匂いと銀八の体臭が鼻孔を擽る。落ち着く匂いだった。

「すまねえ、高杉。俺がもっと早く辿り着いてたら、こんな目に遭わせずにすんだ」

殴られて頬を腫らし、服をズタズタに剥かれて下半身を晒させられた
高杉の姿に、銀八は苦しげな顔をする。

「どうしてそんな顔をするんだ?俺が病院送りにでもなって、
 学校に来れなくなったらアンタだって煩わされずに済む。
 態々、変態みてぇな真似して俺を抑止しなくてもよくなる。
そっちの方がいいだろう?俺なんざいない方が世の中綺麗になる」

事も無げにそう吐き捨てた高杉に、銀八は辛そうな表情になった。

「この大馬鹿ヤローが!オマエがいないほうがいいなんて、
 俺は一度たりとも思ったことねーんだよ!俺はな、オマエのことが……!」

言い掛けて、銀八はハッと言葉を飲み込んだ。
高杉は怪訝そうに銀八の顔を覗き込んだ。
言葉の続きを待ったが、銀八は口を噤んで何も言おうとしない。
高杉は淋しげに溜息を零した。
するりと銀八の腕から離れて、脱がされた下着を身につけ始める。

「もう、いい。助けてくれてありがとう。銀八先生」

高杉は初めて銀八に頭を下げた。
それから踵を返すと、そのまま廃ビルを去ろうとする。
だが、銀八に腕を引かれた。
これ以上顔を突き合わしていると襲われた惨めさに押し潰されそうで嫌だった。
高杉は銀八の腕を振り解こうとしたが、固く食い込んだ指から逃れられない。

「はな、せよ!」
「離さねえよ。もう、ぜってー離さねえ」

銀八はそう言うと白衣を脱いで高杉を包みこみ、もう一度自分の胸に抱き寄せた。
高杉の肩に顔を埋めて、銀八が囁く。
「誰にもやらねー。オマエは俺のモンだ。高杉」と。

「どういう意味だよ。面白い玩具を手放したくないって心境か」
「確かに俺は腐ってってけど、そんな理由じゃねーよ」
「じゃあ、なんだよ?」
「……オマエが、大事だ」

予想外の言葉に、高杉は目を丸くした。
信じられないという顔で銀八を見上げると、銀八はバツの悪そうな顔をする。

「なんだよ、大事だって言ったんだ。んなに信じられねーかよ」
「だって、銀八、俺に手を焼いてるって。迷惑だって」
「あ、月詠との会話聞いたのか?オマエね、大人は簡単に
 自分の気持ちを吐露したりしねえの、建前しか言わねえんだよ」

呆然とする高杉の頬を包みこむと、銀八は深く口付けた。

「んっ……はぁっ」
「高杉。今度こそ、オマエは俺が守る。もう、離さねえよ」
「銀八……」

抱締められた腕の温もりに、高杉の頬を涙が伝い落ちた。











--あとがき----------

神威は身長は高杉と同じく大きくないですけど、
持っているモノは夜兎なので大した大砲を持っていると思います。
高杉ってあんまり股間目立たないから粗チンな気がします(笑)
着物の所為かもしれないんですけど、攘夷時代のズボン姿でも、
銀さんや坂本さんはあー、デカそうだなって思うんですけど高杉はやっぱり股間が目立たない。
神威はチャイナで普段隠れてますが、チラリズムした時とか、
チャイナ服への影の入り方から、けっこう巨チンっぽいんですよね。
流石は夜兎!まあ、私の気の所為かもしれませんがね。
実際のところは解りませんが、私的には神威は巨、高杉は粗なイメージです。
下品な話ですみません(汗)でも、高杉はテクだと思いますよ!←妙なフォロー