―第三話 歪み― 昨日、久しぶりに高杉を抱いた。 一番最後に奴を抱いたのは、ずっとずっと昔。 昔――まだ、自分と高杉が刀を手に戦っていた前世のこと。 厄介なのか喜ばしいのかわからない。 かつて愛した人と再び巡り会い、同じ時を生きられることは嬉しい。 だが、両手放しで喜んで居られるわけでもない。 前世は互いに憎み、刃を突き付けあったのだから。 高杉を見つけたのはこの高校に配属されてから。 相手は前世の記憶などなかった。 土方や沖田、桂や新八、神楽も同じ学校に居た。 全員過去の記憶など無かった。 色んな奴にあったが、今まで過去の記憶を抱えたままこの世に産まれた人なんて、 一人もいなかった。いや、数人覚えているんじゃないかという奴はいたが、 本当に過去の記憶があるのかどうかは定かではない。 相変わらず高杉は生意気で、十歳年下の生徒となった今でも、 こちらに敬意どころか、興味すら示そうとしない。 3年Z組の担任になって高杉が自分の生徒になってから、 どうやって近付こうか考えあぐねていた。 そんな時、ちょうど自分が自慰して居る所を高杉が盗撮するという事件が起きた。 ピンチだと思ったが、ある意味チャンスだと思い直した。 罠にかかるか、かからないか妖しかったが、罠を張って見た。 昔は同い年だった事もあって隙も抜け目のない男だったが、 今は違う。所詮は高校生、子供だ。 確かに相変わらず賢い頭脳を持っているが、少し隙も有る。 まだ、この自分の本性に気付いていないようだった。 ぼーっとして間抜けな教師。そう思っているのだろう。 腹立たしいがそれが幸いして、上手く接近することができた。 タイマンで保健室に呼ばれてあっさりついてきた高杉。 簡単すぎるほどに、弱みを握らせてくれた。 今度こそ、手放さない。たとえそれがどんな形であったとしても、 二度とあんな思いはしたくない―… 銀八は、ぎゅっと拳を握り締めた。 「おはよう、金八ぃ」 朝から能天気なバカでかい声で迫ってきたのは、数学担当の坂本辰馬だ。 サングラスをかけた銀八に負けないもじゃもじゃ頭の男。 銀八は不機嫌な顔で辰馬を見た。 「おはよう、じゃねえよ!辰馬、俺は金八じゃなくて銀八だ! 間違えんじゃねーよ。ったく、この。態とだろぜってー」 「ははは、すまんすまん。にしても、朝から不機嫌じゃのう。何ぞあったか?」 「それは坂本先生が人の名前を間違えるからですー」 「あはは、またまたぁ。気にしちょらん癖にー」 「気にしてるわ。金八とか、別もんになっちまうだろーがよ」 「そりゃあ、すまん。でも、それだけじゃなかろう?」 呑気に笑っていたと思ったら、急に鋭い目で辰馬が覗きこんで来た。 「何でもねーよ」 「そうかぁ〜。嬉しそうな、そいでいて暗い顔しちゅうから、 女とでもなんぞあったんかと思ったぜよ。ワシの思い過ごしかのう? てってきり、好きな女を無理やり手籠にでもしたんかと。アハハハハ」 辰馬の言葉に内心ギクリとした。 時折こういう鋭い所を発揮するからこの男は油断ならない。 しかも犯罪まがいの事を笑って口にする辺り、やはり危険な男だと思う。 こんな奴に高杉とこの事を知られるのは絶対にNGだ。 「俺を犯罪者にしようとしないで下さい、坂本先生」 「はは、そんなつもりはないぜよ。それに、坂本先生なんて余所余所しいのう」 「今仕事中だからけじめだよ。俺は先生モードなの」 「ははぁ。そうか。じゃあ、ワシもちゃんとそう接した方がいいな」 辰馬の大きな手がポンと銀八の肩を叩いた。 「まあ、悩みがあったらワシに話しとうせ。 今、おんしと同じ土俵に居るんはワシだけじゃ。のう、銀時」 「な―…」 意味ありげな笑顔を浮かべる辰馬に、銀八は顔を顰めた。 今この男は金八でなく、自分を銀時と呼んだ。 やはり、彼にも前世の記憶とやらがあるのだろうか。 伺うように辰馬の顔を覗きこむと、彼はにっと砕けた笑顔を浮かべた。 「早く行かんとホームルームに遅れるぜよ、銀八」 「お、おう」 何事もなかったようにスタスタと歩いてく辰馬に倣い、 銀八も教室に向かって歩いていった。 朝のホームルームが始まる。 3Zの教室には珍しく高杉晋助の姿もあった。 普段は朝から来ている事は少ない高杉の姿を見ると、銀八は唇の端を吊り上げる。 どうやら、昨日のことは効果適面だったようだ。 いつまで持続するかは解らないが、当分ちゃんと高杉は学校に来るだろう。 「じゃー、ホームルームを始めっぞ〜」 気だるい声で生徒の名前を呼んでいく。 元気よく返事をする生徒達。だが、高杉は不貞腐れた顔でそっぽを向いていた。 名前を呼んでも返事はない。 代わりに、桂が「高杉もいまーす」と返事をする。 桂にも前世の記憶は無いが、高杉と幼なじみというのは相変わらずのようだ。 詳しく聞いたわけではないが、幼い頃から何かと世話を焼いていると 桂本人が言っていたのを思い出す。 面白くない。子供じみた感情が込み上げてくる。 「たかすぎー、お前自分で返事できないのかー?」 声をかけてみたが、高杉は微動だにせず窓の外を見詰めている。 暗緑色の瞳に明らかな拒絶が浮かんでいて、ますます心が小波立つ。 「高杉、昼休みに国語準備室に来なさい」 先生口調に冷たい声でそう告げると、高杉は漸くこちらを見た。 瞳には僅かにだが、怯えが滲んでいる。 「な、んでだよ?」 「教育指導だ。いいなー、ちゃんと来いよ。……な?」 「……」 脅すようににっと笑う。 びくりと肩を跳ねあがらせ、高杉は瞳を伏せた。 昼休み、高杉は本当にちゃんと国語準備室へ一人で来た。 高杉はああ見えて、意外と律儀で真面目な性格だ。 だが、まさか本当にのこのこ来るとは思わなかった。 「何の用だよ」 不機嫌な顔を隠そうともせずに吐き捨てるように言う高杉に苦笑を浮かべつつ、 銀八は手招きで高杉を呼び寄せる。 一歩ずつ、警戒しながら高杉が近付いてくる。 その間がじれったくて、銀八は立ち上がると高杉の手首を掴んだ。 「なっ、……っぁ」 引っ張ってソファに引き倒すと、簡単に組み敷けた。 驚愕で丸く瞳を見開く高杉が愛らしくてしょうがない。 「やめろっ、離れろ!」 大人になりきらない身体をジタバタと動かして高杉が抵抗するが、 体重を乗せて押し倒したらもはや何も怖くない。 喧嘩は強いのだろうが、こうやって押さえ付けてしまえば体格が小さくて、 さほど力が強くない高杉は脅威でも何でもなかった。 見下ろすと、高杉の瞳が怯えたように揺れる。 「そうビビるなって。大丈夫。先生はケダモノじゃねえんだから」 「ざけんじゃねえ。ビビッてなんざねえよ」 キッと強気な瞳に睨み付けられると全身がゾクゾクした。 それだけで、股間に血が充血する。 高杉は分かっていない。自分が可逆心を煽るドM属性だという事を。 細い首筋に噛み付くと、高杉の唇から小さな悲鳴が漏れる。 第二ボタンまで開けて胸元を大きく露出した指定外の赤いカッターシャツから 手を滑り込ませて、薄く筋肉がついた胸を揉みしだく。 「あっ、うぁっ……やめっ」 「身体は正直だねぇ。感じちゃってるよ」 「やめろっ、なんのつもりだ?」 「いやぁ、ちゃんと返事をしなかったお仕置きってヤツ?」 「ふざけんじゃねえっ、この、変態教師っ!」 「男が変態じゃなきゃ、子供は産まれねえよ」 喚く高杉を黙らせようと、股間を握り込む。 「ひぃぁぁっ」 大きく腰を跳ねさせて、高杉は喘ぎ声を漏らした。 カッターシャツを肌蹴させて、白い肌を吸い上げていく。 至る所に赤い痕を、所有の証を付けると満たされる気がした。 そうしながら、手を高杉のパンツの中に突っ込む。 すでに先っぽからガマン汁が垂れてぬるぬるになっていた。 「嫌がってるわりには漏らしてんじゃねぇか。 やっぱり身体は素直だな。心ももっと素直になれねーのか?」 「……てめぇなんざ、嫌いだ。死ね、クソ教師」 「へえ、それが素直な言葉ってか?お前、度胸あるね」 毒虫を見るような蔑んだ瞳に、心が掻き乱される。 銀八は自分のより随分とこぢんまりした高杉の性器を強く握った。 「ぎっ、あ゛っ!」 「痛い?その割には感じてるケド」 ギリギリと高杉の一物を握る手に力を込めると、 痛みから高杉の目尻に生理的な涙が浮かんだ。 顔を青褪めさせながらも、高杉は唇を噛んで必死に痛みを堪えている。 それが自分のドS心を擽っているとも知らずに―…。 さらに強く握ると、我慢できなくなった高杉の唇が開いて悲痛な声が漏れた。 「ぐぁぁっ、あう゛ぁ゛ぁぁっ」 「あ〜、ゴメンゴメン、痛かったぁ?」 態とらしく尋ねると、高杉はますます瞳をギラつかせて睨んで来た。 追い打ちをかけるように、耳元で「素直に言ったら離してあげる」と囁く。 だが、高杉は屈せずに一層固く唇を噛みしめた。 傷付いた唇からは赤い血が零れる。 「ったく、強情な奴だな」 銀八は高杉の顎を掴むと、血の滲む唇を舐めた。 鉄の味が口の中に広がる。 舌を口の中に滑り込ませて、蹂躙するように蠢かせると 高杉の唇から甘い吐息が零れた。 「んっ、……はっ」 恋人にするように優しく甘く舌を絡め取り、唾液を注ぐ。 抵抗されるか、舌を噛まれる覚悟をしていたが 意外にも高杉は大人しく自分の舌を受け入れてくれた。 褒美に強く握っていた性器を解放して、優しく扱く。 このまま大人しくして居たら、乱暴は止めよう。 そう思っていたが、高杉は思い出したように抵抗を始めた。 手足をバタつかせて、自分を押し退けようとしてくる。 さっきまで大人しく受け入れていたキスにも拒否を見せ、 案の定、舌を噛まれた。 「ってぇな。乱暴するんじゃねえっての」 滑った肉棒を勢いよく擦り上げ、掌で亀頭をグリグリと刺激した。 すると、高杉は瞳を見開き、背中を弓なりにしてビクビクと痙攣する。 「ひぅぅっ あっ、いやだっ あぁぁっ」 一際大きく痙攣すると、高杉は堪え切れずに射精した。 銀八は疲労でぐったりしている高杉をうつ伏せにすると、 後頭部を押さえ付けて、精液で濡らした指を二本尻の穴に捩じ込んだ。 昨日犯した所為か、初めての時よりは幾分か簡単に指が飲み込まれた。 内壁は快感を思い出したように、ヒクついていた。 「いっぺん犯っただけでもうアナルの良さを覚えたか?高杉」 「なっ!?ふざけんな、抜けっ、二度とヤられる気はねえよ」 「そんな事言って、穴は期待してんぜ?俺のちんぽが欲しいってよ」 指をくの字に曲げて、グリッと勢いよく内壁を引っ掻くと、 高杉は仰け反って色っぽい喘ぎ声を漏らした。 的確に前立腺をマッサージしてやると、萎えていた性器がまた勃起して、 ボタボタと汁を垂れ流す。 それでも、高杉自身は嫌だと拒絶の言葉を口にしていた。 「やめろ、やめろっ!」 「怒んなよ、高杉。気持ちいいだろ?」 「あっ!……っぐ、いやっ だ……っ ああぁっ」 嫌だというワードを吐く度、より一層強い快感を与える。 ぐちゃぐちゃにナカが濡れ、解れてくると銀八は指を引っこ抜いた。 柔らかな尻肉を掴み、左右に割開いて穴を剥き出しにする。 肩越しにこちらを振り返った高杉は鬼の形相を浮かべて睨んできた。 「変態やろーが、俺に触るなッ!」 「嫌だね。お前、弱み握られてんの覚えてないの? あんまガタガタ可愛くねえことばっかぬかしてっと、バラ撒くよ、これ」 ポケットから取り出した携帯をちらつかせる。 高杉の顔が一瞬の内に青褪めた。 悔しそうに唇を噛みしめて、瞳を伏せる。 犯されるのか、それとも男に抱かれている卑猥な動画をばら撒かれるのか。 そのどちらかを天秤にかけた結果、高杉は従う事を選んだようだ。 そうだろうと思っていた。 高杉のプライドは富士山よりも遥かに高い。 多くの人に自分の情けない姿を晒す位なら、 身体と心を痛めつけられる事を選ぶような馬鹿な奴だ。 どう考えたって無理やり犯されているようにしか見えない動画なら、 本来、人前に晒されたとしても困るのは自分であって高杉でない。 それなのに、プライドの高い高杉は自分が男に突かれて喘いでいる 姿を晒されたくないと抱かれて屈辱を味わう事を選んだ。 弱みを握って組み敷いて、我ながら最低だと思う。 だが、やめられなかった。 大人しくなった高杉のヒクつくアナルに自分の怒張した雄を押し当てる。 ビクリと高杉の肩が恐怖に震えたが、構わずメリメリと固い先っぽを埋め込んだ。 せめて声は出すまいと、高杉は必死に声が漏れそうになるのを堪えていた。 指を噛んで、快感や痛みをやり過ごそうとしている。 細い腰を掴むと、犬が交尾するように後ろから高杉を貫く。 「おらっ、ケツあげねーとやりづれーだろ」 罵声を浴びせて、銀八は高杉の尻を手で叩いた。 パアンと小気味いい音が部屋に響く。 叩いた瞬間、高杉のアナルはきゅううっと強く締まって具合がよくなる。 「やっぱドMだわ、お前。尻叩くときゅうきゅう締め付けてきやがる」 「ほ、ざけっ、このSM野郎っ ああぁっ!」 尻を叩きながら激しく後ろから突き上げる。 エロい水音が響き、肉がぶつかり合う音が部屋を満たした。 声を堪えていた高杉も、突き上げている内に段々理性が飛んできたらしく、 次第に色っぽい声で喘ぎ始めていた。 「あっ、こん……な いやだ、いやだ、っぅ……くっ、いやだっ」 「そんなに嫌か?高杉……」 高杉は「嫌だ」とは答えなかった。だが、その頬には涙が伝っている。 プライドを捨てて、年相応に泣く高杉に一瞬胸が痛んだ。 それでも、銀八は高杉と身体を重ねた。 泣き喚く暇さえも与えぬように、激しく腰を動かす。 「くっ、あっ、スゲーいい。 高杉ぃ、オマエん中、熱くて狭くてドロドロで最高にキモチいいな」 「ああぁっ いあぁあっ」 「おっと、まだイくなよ高杉。俺と一緒に逝けよ」 「うぐぁぁっ ひぅぅっ!」 根元を掴み、高杉がイきそうになるのを無理やり押さえさせる。 高杉は悲鳴に似た声を上げて、ガクガクと太腿を震わせた。 苦しそうに呻く高杉を無茶苦茶に突き上げると、射精感が込み上げてきた。 「くはっ、んっ俺もイきそうだ。ナカに出すぜ?」 「なっ、や、やめろ、やめろぉぉぉぉっっ!」 「くっ、あ」 「ヒッ、うあぁぁっ 熱ぃっ あああぁっ」 腸壁に精子を叩きつけると同時に高杉の前を解放すると、 高杉も勢いよく白濁液をぶちまけた。 自分のモノを引き抜くと、高杉の尻穴から精子が零れる。 ナカに出された高杉は、ソファに座りこんで暫く放心した顔をしていた。 正気に戻ると、殺気を滲ませた瞳でこちらを睨む。 「てめぇなんざ、この俺が殺してやるっ……」 涙が滲みそうになるのを堪えながら、高杉が呟く。 その姿が過去のあの日と重なって、胸が軋んだ。 「ああ、今度は俺がお前に殺されてやるよ、高杉……」 銀八は静かに呟くと、柔らかな前髪を掻き上げて額にキスし、部屋を出た。 --あとがき---------- 銀八先生は、銀時よりももっとずるくて卑怯な大人だと思います。 銀さんはまだ可愛げがある性格してますが、 銀八は容赦のない性格をしてそうなイメージ。 高校生な高杉は、大人高杉よりもちょっと弱い性格をしてそう。 |