+++++第五話 熱に溺れる+++++



倒れて奥州に連れてこられる前、初めて佐助と交わした接吻。
何度も軽く触れる様なそれとは比べ物にならない、
深く、全てを喰らわんとする政宗の接吻に頭がぐちゃぐちゃに混乱した。

“伽をしてもらおうか”

何でもすると言った自分に政宗が言った事。
伽の意味は何となくしか知らなかった。
夜、閨で小姓もしくは女子が主や夫に何か奉仕する破廉恥な事だとはぼんやり知ってる。
だが、具体的に何をするのかはよく解らない。
ただただ、恥かしいような事だという認識があるだけだ。
主である信玄にそれとなく伽の命を受けたが、
自分が何も知らず首を捻り、それでもお館様の為になるならばと
笑顔で「果してみせましょうぞ!」と言った時にお館様は
「何でも無い、忘れてくれと」苦笑を浮かべた。
その後はお館様の寝室で夜通し将棋を指して翌朝を迎えて済んでいった。
以来、伽を仄めかすような発言は受けていない。


「ふはぁっ、はぁっ、はっ、な、何をなさるっ!?」

混乱に満ちた瞳で、呑み込み切れなかった政宗の唾液を拭いながら幸村が声を荒げた。
フッと盛大に溜め息を吐くと、政宗はジロリと鋭い視線を幸村に投げる。

「あんた何でもするっつっただろ?
 だったらkissぐれぇでガタガタ抜かしてんじゃねぇよ」
「な、な!接吻するなど、なんと破廉恥なぁっ!」
「オラ、大声で騒ぐな!」
「むぐっ!?」

幸村の口を掌で塞ぐと、首筋にガブリと政宗は喰らい付いた。
人体の急所である喉笛に歯を立てられ、反射的に幸村は震えた。
政宗の瞳孔が縦に煌めき、瞳全体が青みを帯びて獣の様だった。
逆らえばこのまま喉笛を食いちぎられ、殺されてしまうかもしれないとすら思う。

少し大人しくなった幸村ににやりと口の端を吊り上げると、
政宗は白くて細い首筋を舌でなぞり上げる。

「んんっ、はふぅっ、ふっ……っ」

くすぐったさに幸村の唇から吐息が零れ、政宗の掌に当たる。
熱い吐息にムラムラし、股間に血が集中するのを感じた。
首筋から耳のまで舌を滑らせると、幸村の全身が緊張に強張る。
そのまま外耳を舐め上げ、吐息を掛けるとビクビクと細い身体が震えた。

「んん〜っ んふっ うぅぅっ!」
「なんだよアンタ、随分と感じやすいな?もしかして慣らされてるのか?」
「んぅ?」
「ま、なんでもいいぜ。もっと感じてみせな」

ザラリとした舌を細やかに動かし、耳の形を確かめるくらい丁寧に舐め上げると、
幸村はギュッと目を閉じて更に震えた。
あまりのくすぐったさと妙な疼きが幸村は怖くなり、
政宗を跳ねのけようと身体を捩らせた。
だが、政宗に圧し掛かられている所為で大きな動きは取れず、
撥ね退け様にも身体から力が抜けているのと、
身長がそれほど違わない筈の政宗の体躯が自分より一回り以上大きく、
力が強いのとで押し退ける事は叶わなかった。

口許を覆われ、右手首を押さえ付けられている。
しょうがなく残った左手で政宗の胸板を押し返し、足をバタつかせてみた。
激しく暴れ始めた幸村に舌打ちすると、政宗は口を抑えていた手を放し、
胸板を押し返す左手首を強く掴む。

「つぅっ!」

痛みに幸村は顔を歪めたが、力を緩めずにギリギリと押さえ付けた。
暴れる足を割開かせて自分の足を間に入れた。

「は、離して下されッ!政宗殿っ!」
「shut up!喚くなってんだろうが!小十郎が駈けつけて来るぜ!」
「な、ならばお離し下されぇぇっっ!!」
「叫ぶなってんだろうがっ!ったく、このジャジャ馬が!」

ガプリと耳に噛み付くと、激しく吸い上げたり耳穴に舌を突っ込んだり、
柔らかな耳朶を噛んで激しく責め上げた。

「ひゃぅぅっっ! あっ、あぁっ、くぅっ はぁぁっ!!」

口を抑えていた手が離れて言った所為で声を押し殺せず、
幸村は盛大に喘ぎ声を漏らす。
すると政宗はにやりと笑んで更に激しく耳を攻め立てた。

「あぅぁぁっ、 お、おやめ、くださっ ひぅぅっ、あぁっ んくぅっ!」

女の悲鳴の様な情けない声が恥かしく、
必死に歯を食いしばって耳を襲う甘い快感に漏れるそうになる声を堪えた。
耳だけでなく、下半身がジンジンと熱に浮かされ始めた事に気付き、
幸村は酷く動揺した。

(こ、このようなみっともない様、お館様にも佐助にも見せられぬ―…)

今自分が晒しているであろう痴態に眩暈がしそうだった。
何とかこの状況を脱しないとと、幸村は再度抵抗を試みる。
それに気付いた政宗は、フゥッと幸村の耳に吐息を吹きかけ囁いた。

「逃げる気か?オレに怪我させたりしたらアンタ、甲斐に帰れなくなるぜ?」

その言葉に、明らかに幸村は動揺して肩を震わせた。
見開いた瞳が政宗に向けられる。その瞳には僅かだが怯えが滲んでいた。

(付け込む様で恰好悪ぃが、そんな事も言ってられねぇか)

ふっと、溜め息を漏らすと政宗は獰猛な瞳を幸村に向けた。
そして、意地悪い冷たい声音でさらに続ける。

「五体満足で甲斐に帰りてぇだろ?
 だったらちったぁオレに御奉仕してみせな。暴れるんじゃねぇ。Are you OK?」

その言葉に、幸村は抵抗を止めた。
悔しそうな瞳でキッと政宗を見据えると、全身から力を抜いた。

「す、好きになされよ。貴殿に助けられねば死んでいた身。
 貴殿には、その権利がございましょう」
「OK.素直じゃねぇか」

優しく頬を撫でると、政宗は首筋に唇を寄せた。
皮膚を吸い上げられ、ピリッとした痛みと甘い感覚が首筋を走り抜ける。
政宗が唇を離すと、白い皮膚には紅の痕が出来た。
続けて、筋肉はついているが柔らかな胸にも唇を寄せて痕を残す。
邪魔な衣服を乱暴に開き、上半身を晒させると幸村はビクリとした。
晒された白い肌に次々に口付け、痕を残して行く。
二の腕、胸、首、鎖骨、腹筋。
余すところなくキスして、舐めて、紅を残すと満足げに政宗は微笑んだ。
あんなに日の下に晒しているにも関わらず白い肌。
それに残る彼のシンボルカラーの紅。
まるで所有したかの様な錯覚を起こさせて政宗は口元を歪めた。

身体のラインをなぞられ、身体中に接吻されてぐったりとする
幸村の胸の飾りに政宗は手を伸ばす。
キュッと摘まむと幸村は全身を跳ね上がらせた。

「ひぅぅっ!あっ、やぁっ!!」
「乳首がそんなに気持ちいいか?ククッ、もっと触ってやるよ」
「いぁっ!?あ、やめて、くだされっ!!」

嫌がり頭を振る幸村に構わず、政宗は一方を手で摘まんで捏ね繰り回し、
もう一方の突起を口に入れて歯を立てたりしたで転がしたりした。
政宗に乳首を責められる度に下半身から全身を貫く様な
強い刺激が走り抜け、幸村はあられもなく声を上げて悶えた。
十分ほどそこばかりを攻め立てると漸く政宗は乳首から手と口を離した。
すっかり勃ち上がり、固くなり桜色から赤っぽく色づいた乳首に
ククッと笑いを零す。
自分が完全に玩ばれたことに幸村は悔しくて唇を噛んだ。

「そんな顔すんなよ。可愛いツラが台無しだぜ?」
「くっ、可愛いなどと、その様な言い方はおやめ下されっ!」
「sorry!そりゃ悪かった」

クックッと喉の奥で笑いながら、政宗は幸村の袴に手を掛けた。
袴の紐を解くと一気に幸村の足から抜き取り下半身を褌一丁の姿にされる。
武田男祭や寒さに強い身体を作る為に褌一丁になったりするので
褌一丁には慣れてはいるが、敵将の前でその姿を晒すのは心許なく、
しかも恥かしかった。
だが、その褌すら政宗は奪い去ってしまう。

「なっ、こんな姿……」

下半身を晒させられた恥かしさに幸村は政宗から瞳を伏せて顔を紅潮させた。
初々しいその反応に反して下半身は鎌首を擡げ先走りにテラテラと濡れていた。

「Hum……いい恰好だな、真田」
「くっ、このような恥辱を受けようとは……」
「オイオイ、こんなこと位で恥かしがってたらこっから先進まないぜ?
 オレも既に準備OKだ、そろそろ本番行こうぜ!」

そう言うと政宗は自分の袴を脱ぎ棄てて褌を取ると下半身を晒した。
幸村のよりずっと大きなそれは怒張して、とても凶悪な化け物にさえ見えた。
この先何をされるかまったく見当がつかない幸村だったが、
政宗の摩羅を目にしてビクリと震えた。

「あの、某はどうすれば?」
「Ah?アンタ本当に何もしらねぇのか?
 虎のおっさんかあの忍に可愛がられてんじゃねぇのかよ?」
「言っている意味が、解り兼ねますが……」
「まあ、黙ってこのオレに身を任せてな」

そう言うと政宗は自分の上着も脱ぎ捨て、幸村からも見に纏う衣を全て剥ぎ取った。
自分の指を嘗めると、更に軟膏を絡めた。
身体を覆うものを失い、恥かしさで膝を合わせて
局部を隠そうとする幸村の太腿を開かせると、グッと幸村の尻に中指を埋め込もうとした。

「ひぅっ、 あっ、ぐっ!」
「コラ、力むんじゃねぇ!力抜いてないと痛いぜ?」
「あっ、いやだっ、そんな所に……っ!」
「指くれぇでこの調子じゃ最後までいけねぇぜ。良いから大人しくしてな」
「いやだっ、お、おはなしくだされぇっ!」

いきなり尻に指を挿れられて幸村は激しく動揺して暴れた。
チッと舌打ちをすると政宗は幸村をうつ伏せにしてその背中に座って無理矢理に
中指を全て埋め込んだ。
政宗はナカを丹念に探る様に指を蠢かす。
節くれ立った指が動く度、引き攣れる様な痛みが走り幸村は目尻から涙を零す。

「あぅっ、 い、いやだっ、いやっ……」

幸村が激しい拒否を示す所為で胎内も緊張に強張り、指をスムーズに動かない。
このままじゃ埒が明かないと政宗はその耳元に唇を寄せた。

「我慢しな。甲斐に無事に帰りたいんだろ?
 だったらオレに怪我を負わせたり暴れたりするな。痛い思いはさせたくねぇ」

低く囁かれると、幸村はハッとした顔で政宗を振り返った。
そのあと静かに頷くとうつ伏せになり、布団に爪を立てて痛みを堪えた。

「Good Boy!良い子だ。そうしてな」

幾分か力が抜け、指の動きがスムーズになり始めた。
グニグニとナカの肉を解す様に政宗は丹念に動かし、
少しほぐれ始めた頃会いを見計らって、人差指も軟膏を絡めて突き入れた。

「うぅぅっ、くっ、あぅ……」

痛みは多少あったが、それ以上に圧迫感と妙な感覚に襲われ、
思わずはしたない声が唇から漏れた。
奇妙な感覚に翻弄され、布団を握り締める指から力が抜ける。
政宗は更に指で愛撫を続け、漸く萎えていた幸村の摩羅も勃ち上がって来た。

「まだ、十分とは言えねぇがもう我慢の限界だ。
 悪ぃが挿入させてもらうぜ?力をもっと抜いておきな、辛いぞ」
「な、に?」

政宗は幸村の腰を掴むと摩羅を入り口に当てた。
熱く硬い物を当てられて幸村は恐怖に震えた。
中途半端に痛い思いをさせるよりはと、政宗は一気に幸村を貫いた。

「ぐっ、ふぅっ……ぐぅぅっ」

激しい痛みに思わず絶叫が零れそうになったのを布団を噛んで幸村は声を殺した。
焼けつく様な痛みと途方もない質量にボロボロと涙が零れる。
入り口が切れ、赤い血が白い腿を伝い落ちた。

「くっ、キツ……な、大丈夫か?真田」
「あぐぅ、くっ……」
「アンタ、本当に初めてみてぇだな。てっきりオレは―…。
 済まねぇ、ちゃんとすぐに良くしてやるからな」

幸村の頬にキスを落とし、政宗は柔らかな茶髪の髪を梳いた。
髪を結んでいる紐が解け、サラサラとした黒髪が背中や布団を流れる。
その髪束を掬いあげると髪にもキスを落とした。

「痛ぇか?もう少し我慢してくれよ」

労わる声と髪を撫でる手が余りにも優しく全身から力が抜けた。
スムーズに動けるようになると、
政宗は幸村の尻にぶつける様に激しく腰を揺す振った。
初めは圧迫感と僅かな痛みを感じていたが、徐々に気持ち良さが生じて
幸村は布団から口を離して嬌声を漏らした。

「あっ、あぁっ くっ んんっ!」
「アンタのナカ、すげぇ熱いな。それに良い締め付けだ
 オレの摩羅が食いちぎられそうなぐれぇだ。最高だぜ、幸村」
「あっ、いぁぁっ」

もっと深く繋がろうと激しく幸村の身体を揺す振った。
律動を繰り返すのに合わせて幸村の声から甘い声が漏れる。

(顔が見てぇな……)

男同士の場合バックの方が正面より深く結合できるし体制も楽だ。
だが、幸村の顔が無性に見たかった。
別に気持ち良さを追求する為だけの行為でない。
ぎゅっと幸村を抱締めると、身体を掴んで自分の方を向かせた。
ナカで固い摩羅が一周したのに感じ、幸村はビクンと身体を跳ねさせた。

「あうっ、はぁぁぁぁっ」

強い快感が脳天を貫き、幸村は精液を噴き上げてイッた。
政宗の腹にも幸村が放った精液が掛かったが、政宗は気にせず身体を重ねた。
割開かせた足の間に身体を入れ、政宗は幸村の身体に多い被さった。
汗ばんだ肌が触れ合う部分が熱く心地良い。
そっと幸村の頬に手を添えると穏やかに政宗は微笑んだ。

「真田幸村」
「あっ…う、政宗どの?」

熱に浮かされた幸村の大きな瞳には、今、自分だけが映っていた。
その事が心を酷く高揚させる。
唇に触れるだけのキスを落とすと、政宗は腰を動かした。
政宗の熱い楔が内壁を擦り上げるのに感じ、幸村はビクビクと足先を痙攣させた。

「ああっ あっ ぁあぁっ」
「くあっ、いいぜ、オレもイッちまいそうだ」

より一層激しく腰をぶつけると、幸村は首を振って頂点へと昇りつめらされた。
ナカが収縮し、政宗の熱い楔を締め上げる。

「幸村ぁっ」
「ああっ あぁぁぁぁぁっっっ!!!」

幸村と政宗は共に達し、政宗は幸村のナカに子種をぶちまけ、
幸村は互いの間で白濁液を撒き散らした。
ぐったりと気絶してしまった幸村から摩羅を引き抜くと、
政宗は長い髪をそっと撫でた。
巻き付けた包帯は僅かだが血が滲んでいる。傷が開いた様だ。
いっそのこと、このままずっと傷が治らず此処に留めておければいいのに。

「無理させて悪かったな、幸村」

頬にキスを落とすと、身体を綺麗にするために部屋を出た。
部屋を開けたなり、小十郎の般若の様な顔が飛び込んで来て
政宗はうっかり尻餅をついた。

「What!小十郎っ!?なにしてんだよっ?」
「それはこちらの台詞ですっ!政宗様っ!!」
「……な、なんだよ、怒鳴んな、真田が起きちまうだろうが」
「これが声を荒げずにいられますかっ!
 あれほど御自重めされよと口を酸っぱくして申しましたのに、貴方ときたら……」

鬼さえも逃げ出す形相で小十郎は政宗を睨んだ。

「Ah〜、そうカリカリすんな。傷はそれほど開いてねぇし」
「傷がどうこうの問題ではありません!
 仮にも甲斐の虎の愛弟子にこんな無体を強いるなど、戦争になりかねません!
 まあ、真田は無条件で此方が助けたものですからそうはならぬと思いますが、
 武将で有りながら、この様な侮辱を受けた真田が不憫です。嫌われても知りませぬぞ!」
「るっせーな、もう解ったからさっさと湯を取りに行かせろよ」
「それなら用意して来ましたよ。ほら、貴方様も着替えて」

二人分の着替えと湯と手ぬぐいを小十郎から政宗はぎこちなく受け取った。

「お、おう。用意がいいじゃねぇか」
「真田の甲高い啼き声が聞こえて来ましたからね。お陰で目が覚めました」
「あ〜そうかよ。悪かったな」

ブスリと不貞腐れながら政宗は自分の身体よりも先に幸村を清める。
その優しい手付きと後ろ姿に小十郎は溜め息を吐く。

「いずれは返さねばならぬ鳥です。情が湧くと辛いですよ」
「それもわかってるぜ。もう、いいだろ」
「本当に解っていればよいのですがね。では、失礼します」

散々にチクチク小言を漏らしてから小十郎は部屋を去った。
幸村の身体と自分の身体を綺麗にすると、政宗は幸村の横に寝転がった。

(今だけだ……もう少し、アンタを抱いていたい―…)

柔らかく暖かい温もりを抱締め、政宗も静かな夢の中へと堕ちていった。









--あとがき----------

ただただ破廉恥な話です(笑)
もっと鬼畜な政宗さまも書きたいけど、今回は甘めで。
幸村が処女だと知ったので、政宗は優しく出来ました。
これで佐助やお館様の手付きだったら間違いなく手荒になってます。